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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第21回 WWFのクライメート・セイバーズ・プログラムに参加

  • 2005年10月13日

このコンテンツは、「グローバルネット」から転載して情報をお送りしています。

WWFのクライメート・セイバーズ・プログラムに参加 佐川急便管理本部 環境推進室室長 別所 恭一さん

無断転載禁じます

  わが社の事業の一番の武器は、車とドライバーです。トラックを主な輸送手段とする企業として、1997年に京都で開催されたCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)を契機に、当時の社長であった現会長の栗和田榮一が「地元の企業として何かお手伝いすることはないか」と厳命を下し、環境問題に本格的に取り組むようになりました。当時は、まだ環境専門のセクションはなく、今の環境推進室は2000年に組織され、今年でまだ5年目です。97年当時は、社長が委員長、委員は全員役員という、即断即決の組織「エコプロジェクト推進委員会」を立ち上げました。

 トラックを使用する事業という性質上、当然、空気の問題が最重要課題になってきます。そこで、地球温暖化の原因となるCO2(二酸化炭素)の削減、自動車公害を引き起こすNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)の削減を目標にしました。すなわち低公害車の導入です。低公害車の導入は、行政や自治体からの要請に応じる形ですでに行っていましたが、「エコプロジェクト推進委員会」の立ち上げを契機に本格的な大量導入の促進を始めることとなりました。またアイドリングストップ等のエコドライブの推進も同時に開始しました。

天然ガス車の導入に全社を挙げて取り組む

 CNG(天然ガス)トラックを大量導入するに当たって一番大きなハードルとなったのは、当時のCNGトラックはディーゼル車の改造車両であったために、車両価格が従来のディーゼル車に比べて非常に高いということと、もう一つはインフラ整備の問題でした。通常のスタンドが全国に約5万ヵ所あるのに比べ、天然ガスのスタンドは現在でも約280ヵ所しかありません。当時は、まだ百数十ヵ所程度ではなかったかと思います。

 そこでそのハードルを一つずつクリアしていくことなりました。現在は、当社のCNGトラックは全国で2,100台強走っています。これは業界全体の約21%に当たります。また、CNGトラックの大量導入を図っていくための条件であるスタンドの整備についても、自社で最低限度取り組んでいこうということで進めています。

 COP3と並んで私どもが天然ガス車を導入するきっかけとなったもう一つの大きな出来事が、2000年に東京都が大気汚染の改善を問題提起した「新市場創造戦略会議」(CNG車およびLPG車等新市場の創造に向けた取り組みを進めるための会議)です。

 ユーザー側の一委員として出席し、「車両価格とスタンドの問題がクリアされれば、都内の車両(当時、都内に主に2〜3tの3,000台の集配車があった)をすべてCNGトラックに切り替えることが可能である」と発表しました。ところが、翌日の新聞には、この「条件整備」の部分の記載がされず、「佐川急便、都内の3,000台すべて天然ガス車に切り替える」と掲載されてしまいました。当社の意図するところとは異なった形で記事が掲載されたのですが、しかしながら社長の「最低限度、スタンドも自前でつくるようなことで導入することはできないのか」という強い意志があり、現在に至っています。結果、2005年までに全国で2,450台、都内においては1,741台という導入計画を発表しました。

日本で初めてWWFとCO2削減の協定

 2002年にWWFの「クライメート・セイバーズ・プログラム」(図1)に参加しました。このプログラムに参加したきっかけは、環境ISOの取得をしている中でWWFジャパンの鮎川さんから紹介してもらったことと、さらにもう一つは、「日本で初めて」という言葉にも心が動いたのではないかと思っています。すぐトップに相談して、「あまり無理のないところで参加してみてはどうか」ということで、取り組むことになりました。

図
図1 クライメート・セーバーズ・プログラムとは

 このプログラムに参加する過程で、1年間かけていろいろな作業を行いました(図2)。一つは、ベースラインの設定です。基準年となった2002年度において、燃料と電気の使用量をベースラインにしていこうということで、作業を行いました。もう一つは、10年後の2012年度に2002年度比6%のCO2を削減していこうということで、その10年間の当社の伸び率を、どのように設定していくかということでした。

図
図2 佐川急便とクライメート・セーバーズ・プログラム

 そしてなによりも一番の難問が燃料調査でした。当時(2002年)は、国土交通省などが実運行でのディーゼルや軽油、天然ガスなどの燃費の正確な数字を出していませんでした。そこで当社で独自に同じコース・同じドライバー・同じ季節など、すべてを同じ条件にして、約40台の車両を使用して、ディーゼル車とCNG車の燃費調査を実施しました。その結果、残念ながらCNG車はディーゼル車を改造したものであるために車両重量が約300kg重く、従来型のディーゼル車と比較して燃費効率が5%悪いという数値が出ました。

 その結果掲げた新たな目標が、「2012年度までにCO2排出量を6%削減する」というものです。2012年には、5万t削減する目標となっています。CNGトラックに置き換えますと、7,000台導入することによって目標が達成されるということになります。2003年度は2002年度比で1.9%のCO2を削減することができました。クライメート・セイバーズ・プログラムの目標値6%を単純に年に換算すると0.6%の削減となりますが、2003年度は少くともこれを上回る削減ができたということになります。

アイドリングストップで6億円の燃料代節約

 企業の環境保全活動の中で一番大事なことは環境教育であると考えています。例えばエコドライブの推進などです。まちで、「アイドリングストップ」と書いたシールを貼ったトラックを見かけると思いますが、このアイドリングストップの効果一つをとっても、当社の集配車両は約2万台あり、徹底させることによって年間で約2万4,000tのCO2の削減ができます。そして同時にこのアイドリングストップの徹底は燃料の削減にもつながります。現在、約6億円の燃料経費削減の効果が出ています。逆に言うと今、これを徹底しないでたがが緩んでしまうとコストが増えるということが言えるのではないかと思います。

 また、「佐川急便環境行動」を判定し、社員の意識向上を図っています。

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