さて、テーブルごとに簡単な自己紹介をした後は、いよいよゲストの登場です!今回のゲストは、キープ協会の川嶋直さん。川嶋さんは環境教育に長年取り組まれていて、「エコ×エネ体験プロジェクト」をJ-POWERと協働で運営しています。
「今日は私の得意なKP法を使って説明します」。
KP法とは「紙芝居プレゼンテーション法」という川嶋さん独自の手法のこと。紙をペタペタホワイトボードに貼りながら話を展開するので、両手をあけるためにマイクを首からぶら下げているそうです。川嶋さんの今日のテーマは「エネルギー環境教育に取り組んでみえてきたこと」。環境教育において体験することが大切だと考えている川嶋さんの最初の問いかけは「(環境問題を)知ることは行動することにつながるのでしょうか」でした。
「環境教育には『自然を知る』『問題を知る』『解決方法を知る』という3つの入り口があります。けれども、知れば本当にやるのでしょうか。伝えたことは忘れられる。つまり、人は聞いたことは忘れるのです。みなさんは今、一生懸命『聞いている』わけですけどね」。
ユーモアを交えながら、川嶋さんの話は続きます。「逆に考えると、体験し、発見したことは忘れないし、出来るともいえます。環境問題を解決するには『規制』『技術』『教育』の三つの方法がありますが、大切なのは物知りを育てることではなく、行動する人を育てることだと思うのです」
ここで、川嶋さんはある事例を紹介しました。
8年くらい前のこと。静岡の、とある大学の教授が女子大生に三つの川の写真を見せて、どの川に親しみを持ちますかと聞いたそうです。
一つは草ボウボウ岩ゴロゴロの生きものがいっぱいいる上流の川。一つはコンクリートで護岸された用水路のような都市域の川。もう一つはサイクリングコースなどもある公園のような下流の川。
「最も支持されなかった答えはどれだったと思いますか?」
「その大学では、一番親しみを感じないのは上流域の川という答えが出たそうです。理由は『虫がいそうで怖いから』。でも、そういうところで遊んだことはありますか?と教授が尋ねると、誰も遊んだことのある生徒はいなかったとのこと。つまり、本当の自然を知らないのに、イメージする自然から嫌っているのです。けれども僕たちはそれを責めることができるのでしょうか。体験する機会を与えなかった大人の責任ではないですか?と僕は思います。自分の責任逃れのように『子どもたちに環境学習を』という大人がいますよね。子どもたちが変われば大人が変わりますから・・・と、大人のツケを子どもに払わせるのでしょうか。それは無責任なことではないですか」
「気持ちが変わり、行動が変わることが大切」と川嶋さんは訴えます。「『知らない』から『知っている』へ、そしてそこから『行動する』に移るのが理想ですが実際には『知っているけれどやらない』という人が多いですよね。その深くて暗い溝を埋めることが課題だと思います。そして環境の問題も「自分たち」の問題として意識して行動に移せるのかが問われています」
「それからもう一つ。環境のことを『大変だ』『深刻だ』とばかり言っていればそれでいいのだろうか?と思うのです。エコフォビア(環境恐怖症)という言葉があるのですが、私は「エコソフィア(環境への愛着)」という視点で考えていってほしいと思いますね。地球なんてどうせ滅びる、ということではなくて、地球の素晴らしさもきちんと伝えることが大切だと思っています」
「メモを取らなくてもいいですよ。後日みなさんへ送付いたしますので」とおっしゃる川嶋さんの言葉に反して、とても熱心に言葉を書き留めながら川嶋さんの講義に聞き入っている参加者の姿が印象的でした。