南太平洋に浮かぶ、333の島々からなるフィジー。日本からは直行便で約9時間と、意外に近い南太平洋です。しかもフィジー・エアウェイズは燃油サーチャージがかからないので、狙い目のディストネーションでもあります。
そんなフィジーは、かつて旅行誌のアンケートで“行って良かった旅先”のナンバー1を連取したことも。良かったポイントとして多くのツーリストがあげたのが、フィジアンの人の好さです。
たとえば、通りすがりでも目があえば、「ブ〜ラ〜!(こんにちは)」と挨拶。こわもてのでっかい男性(ラグビーの強豪を想像してみてください)だって、「ブ〜ラ〜!」と太陽みたいな笑顔で迎えてくれます。そして、いつもどこか楽しそう。
フィジーはロサンゼルスからも直行便があるせいか、米国セレブに人気の旅先。あるオスカー女優がファミリーで訪れたとき、子供がフィジアンのベビーシッターになつき、「米国へ来ない?」とスカウトした話や、ビル・ゲイツがゴルフ中に、フィジアンから「いつも仕事ばかりしているから。こうやるんだよ!」と指導を受けたなんて話も、伝え聞きます。愉快で、面倒見がよくて、屈託のない国民性のようです。
もちろん、海に山に豊かな自然、パッカーからジェットセッターまであらゆる旅行者に対応する宿泊先、ともに充実しています。
でも、それだけではありません。そこから一歩踏み込んで、観光を楽しむだけでない、地球と地域社会にやさしい持続可能なアクティビティも幅広く体験できます。
フィジー政府観光局がこのたび発表したのが、そんな“旅行者が未来を守る、持続可能な観光プログラム”の「ロロマ・アワー」。
「ロロマ」とは、フィジーの言葉で「愛」「思いやり」「やさしさ」を意味する、フィジアンが大切にしている価値観です。その精神をもとに、旅行者がフィジー滞在中に、自然環境や文化、地域社会に貢献する“1時間”を過ごすことを提案するプログラムです。参加することで、もっとフィジーと深くつながれるわけです。
思い返してみれば、私もフィジーでそうしたロロマ・アワーな体験、重ねてきました。
ママヌザ諸島のマロロ島にある「シックス・センシズ・フィジー」でサンゴの保護活動に参加したことが。
サンゴの欠片をロープに結びつけ、それを長いラインに連結し、水中へと沈めます。ちょうど牡蠣の養殖のような方法です。その後、ある程度育ったサンゴの欠片を、サンゴ礁に移植します。
お手伝いの内容は、ロープにサンゴの欠片を結びつける、水中のロープに吊るしたサンゴに藻が付かないよう掃除する、サイズを測って記録、サンゴ礁への移植など。
数年後に自分のサンゴがどのくらい育ったか、戻ってくる楽しみになりますね。また、シックス・センシズ・フィジーでは世界でもほぼフィジー諸島にしか生息しておらず、その数も12,000〜14,000匹だけというタテガミフィジーイグアナを探すナイトウォークにも参加しました。
タベウニ島の小さな村を訪問したときは、元気いっぱいの子供たちにこちらが圧倒されたほど。「フィジーのウォータースライダーだよ!」と子供たちに誘われて、一緒に川で遊びましたっけ。
バヌアレブ島のジャン゠ミッシェル・クストー・リゾート・フィジーでは常駐の海洋生物学者と一緒にスノーケリングを楽しみ、海にまつわるレクチャーに興味津々。
どれも私にとって、大切なロロマ・アワーです。
今回の「ロロマ・アワー」は、リゾートを通して次の4つのテーマを軸とした40以上の持続可能なプログラムを用意しているそうです。
・野生動物の保護:ガイドとの自然散策、海洋調査、絶滅危惧種の保護など
・地域社会への還元:村での交流プログラム、バスケット編み、フィジアン料理クラスなど
・サンゴ礁の保護:サンゴ礁の修復、植付け、フィッシュハウス作りなど
・海岸線の保護:マングローブの植樹、ビーチ清掃など
詳しくはフィジー政府観光局へ。
思えば、リゾートでのチェックイン時に行われる歓迎の「カヴァの儀式」や、チェックアウト時にスタッフ総出で歌ってくれる“イサレイの歌”も、ロロマの精神から生まれるもてなし。愛あふれるフィジーは、これから9月までが乾季のオンシーズンです。
フィジー
●アクセス 成田からフィジーのナンディへ直行便で約9時間。週2便(往路:水・土、復路:火・金)。
古関千恵子(こせき ちえこ)
リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●Instagram @chieko_koseki
文・撮影=古関千恵子