春になると、気温や湿度の変化で体がちょっと不安定になりがち。特にこの時期は、朝起きたときや、ふとしたタイミングで、足がふわっと浮くような感じがしたり、体の力が抜けるようなめまいを感じやすくなります。
忙しい朝に調子が悪いから食事を手抜きしてしまう、ということもあるかもしれません。しかし、そんな時こそ食事で体を整える大切なチャンスです。
実は、朝食に少しの工夫を加えることで、めまいや疲れを和らげ、元気に1日をスタートさせることができます。そこで今回は、国際中医薬膳師のさとうあいさんに、朝ごはん向きのめまい対策薬膳レシピを伺いました。特別な食材がなくとも、手軽に作れる薬膳メニューになっているので、忙しい朝に元気をチャージできますよ。
春の体調不良を食事でサポートし、一日をもっと快適に過ごすための第一歩として、ぜひ試してみてください。
ひじきや干し椎茸、大豆は、体の内側から元気を支えてくれる力があります。鶏ひき肉や小松菜を加えることで、ふらつきや疲れを感じるときのサポートに。さらに、梅干しの酸味には、体にこもった余分な熱をやわらげたり、気分をスッキリさせてくれる働きがあるので、朝のぼんやりした気分をシャキッとさせてくれる嬉しい効果も。
コトコト煮込むことで味がじんわり染み込み、鰹節と醤油麹の風味が香る優しい味わいに仕上がります。ごろっとした大豆やシャキッとした小松菜の食感も楽しく、朝から心もお腹も満たされる薬膳レシピです。前日に作り置きしておけば、すぐに食べられるので、ぜひ忙しい朝の常備菜として、取り入れてみてください。
・ひじき:10g
・大豆水煮缶:80g
・鶏ひき肉:50g
・干し椎茸:3枚
・小松菜:3株
・鰹節:5g
・梅干し:1〜2個
・ごま油:小さじ1
・醤油麹:小さじ1(または、醤油:小さじ1+みりん:小さじ1/2)
(1)小松菜は、株を切り落とし、4センチ長さに切ります。
(2)ひじき、干し椎茸は水で戻します。
(3)鍋にごま油、水切りをした(2)のひじきを入れます。千切りにした(2)の干し椎茸を入れて混ぜながら加熱します。
(4)油が全体に絡まったら、鶏ひき肉を入れて炒めます。
(5)鶏肉の赤みがなくなってきたら、大豆水煮缶、鰹節を入れます。椎茸のもどし汁、水を適量入れて、焦げ付かないように、弱火で煮込みます。
(6)ひじきがやわらかくなってきたら、(1)の小松菜、みじん切りにした梅干しを入れます。
(6)小松菜がしんなりしてきたら、醤油麹、または醤油+みりんで味を調えて完成です。
長芋には、体に元気を与えてくれるだけでなく、胃腸の働きを整えてくれる力があるため、朝ごはんにはぴったりの食材です。気持ちの落ち込みを緩和させてくれる卵と、ストレス対策にも効果的なパセリが加わることで、春のモヤモヤ気分を晴らしてくれる一皿に。
朝の慌ただしいときでも、フライパン一つで作れるのも嬉しいポイント。食材の食感も楽しく、満足感もしっかりあるレシピです。焼き立てはもちろん、冷めてもおいしいのでお弁当や、作り置きにもおすすめのメニューです。
長芋は、疲れからくるふらつきに効果的なので、毎日少しずつ取り入れることで体調管理につながりますよ。
・卵:3個
・長芋:150g
・人参:100g
・パセリ:10g
・塩:少々
・オイル:少々
(1)長芋、人参は皮をむき、千切りピーラーなどを使って千切りにします。パセリはみじん切りにします。
(2)卵焼き用のフライパンにオイルをしき、(1)の食材を入れて弱火で炒めます。
(3)野菜がしんなりしてきたら、ボウルに取り出します。卵を割り入れ、塩を入れてよく混ぜます。
(4)再びフライパンに具材を戻し入れ、弱火でじっくりと焼きます。
(5)表面が固まり始めたら裏返し、もう片面も同じように焼きます。
(6)卵が焼けたら火を止め、粗熱を取ります。取り出して、包丁でお好みのサイズに切り、器に盛り付けて完成です。
黒木耳は、女性に嬉しい栄養がたっぷり含まれた薬膳食材のひとつです。体の中に必要な潤いや栄養を補い、不快なめまい症状を和らげてくれます。弱火でじっくり煮込むと、とろりとした食感に仕上げることもできます。今回は乾燥木耳を使用しましたが、生木耳を使っても美味しく召し上がれますよ。
キャベツは、胃腸を整え、心と体を落ち着かせてくれる効果があります。火を通すと自然な甘みが出て、心までほっとする味わいに。
朝ご飯には温かい汁物を食べることが、胃腸を元気にする秘訣です。冷たいフルーツや、生野菜の代わりに、一杯の温かいお味噌汁を習慣にして体を優しく整えていきましょう。たくさんの野菜を用意することが難しければ、黒木耳や乾燥ワカメ、アオサなどの乾物を具材に利用してもいいですね。
・乾燥黒木耳:10g
・キャベツ:80g
・じゃがいも:2個
・えのき:0.5袋
・味噌:適量
・だし汁:800cc
(1)黒木耳は水に入れて戻します。やわらかくなったら、食べやすい大きさに切ります。
(2)キャベツはざく切り、えのきは株を切り落として食べやすい大きさに切ります。
(3)じゃがいもは皮をむき、半月切りにします。
(4)鍋にだし汁を入れ、(1)の黒木耳、(2)のキャベツ、えのきを入れて加熱します。
(5)キャベツがやわらかくなったら、(3)のじゃがいもを入れます。
(6)じゃがいもがやわらかくなったら、味噌で味付けをして完成です。
春は、知らず知らずのうちに心も体も揺らぎやすい季節。めまいを感じたら、今回ご紹介した朝ごはんに活用できる薬膳の知識をきっかけに、生活を少し見直してみませんか。
朝はなるべく温かいものをお腹に入れて、体の内側からふんわり目覚めさせてあげるのがポイント。体調が整ってくると、不思議と気持ちにも余裕が生まれ、日々の疲れや不調が和らいでいきます。
忙しい毎日でも、朝の時間にほんの少し目を向けるだけで、体と心の調子が整いやすくなります。とくに春から初夏は、めまいやふらつきといった不調が出やすい時期。そんなときこそ、朝ごはんでバランスを整えることで、気持ちのよい一日がスタートできますよ。
薬膳の知恵を、日々の食事や生活に無理なく取り入れることは、自分や家族を大切にするやさしい習慣。春の揺らぎと上手につき合いながら、心地よく健やかな毎日を育んでいきましょう。
さとうあい
宮城県仙台市在住の料理家。フードコーディネーターや学校講師などを通して飲食業界に携わること20年以上。現在は国際中医薬膳師の資格を取得し、子どもの不調を整える薬膳料理講座や、企業へのメニュー提案などをする傍ら、レシピライターとしても活動中。
文・撮影=さとうあい