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海野和男のデジタル昆虫記

ため池の自然

ため池の自然
2012年09月29日

 7月に行われた草刈りから2ヶ月たった。
 2ヶ月たって行ってみると、サワヒヨドリがかなり増えていた。そこにキタテハやヒョウモン類(クモガタヒョウモンやメスグロヒョウモン、ウラギンヒョウモン、ウラギンスジヒョウモンなどで、ここを発生地としているナミヒョウモンはこの季節にはもういない)が集まっていた。
 今まではそれほど多くなかったサワヒヨドリだが、あの時期の草刈りがサワヒヨドリには有利に働いたわけだ。カセンソウも季節外れの花をいくらか咲かせていた。宿根植物だから、切られて、その結果、季節外れの花が咲いたわけだ。
 景観的には草を切られたことで、今の時期は例年よりも見かけは綺麗かもしれない。秋に草を刈るべきだと思っていたが、サワヒヨドリにとっては、今、草を刈られるのはまずいかもしれない。つまりどの時期に草を刈るかによって、不具合がある植物もあるし、有利に働く植物もあるわけだ。
 心配していた絶滅危惧種のヒメシロチョウは姿がなかった。例年だと第3化が今頃まで卵を産んでいるのだが。
 食草のツルフジバカマは強い植物で、切られてもすぐに芽を出す。すでにかなりのツルフジバカマが見られた。あの時期の草刈りは、この池のまわりを発生地としているヒメシロチョウには打撃を与えたようだ。ナミヒョウモンを除くヒョウモン類は、今が産卵の時期だから、まったく影響を受けていない。
  人手が入った自然では、年に1度は草刈りをしなければ、草地の環境を長く保つのは難しい場合が多い。ヒメシロチョウのように、その場所が限定された発生地である場合に、画一的な草刈りが問題となる。ヒメシロチョウとナミヒョウモンは来年がどうなるかを見守りたい。
 一度に無差別に全部草刈りをするのが良くないわけだ。半分ぐらいずつ刈ると良いかもしれない。けれど、このため池のようにヒメシロチョウの食草のツルフジバカマがある場所が全体の1/4ぐらいだから、刈るときにそれを全部刈ってしまうとまずいわけだ。保全を行っている方に聞いたところ。ヒメシロチョウは蛹が植物につくので、刈った草を片付けられてしまうと打撃が大きいそうだ。
ここの場合は基本刈りっぱなしだと思う。ハギは草刈り前から多く、毎年増える傾向にある。今回は全て刈られたにもかかわらず、一番成長がよいのがハギで、すでに1m以上に伸びていた。ハギで覆われてしまうと見た目には綺麗だが、少しあるのは良いのだが、ハギだけになってしまえば、多くの草原生の植物やチョウにはまずいことになる。飛んでいるのはハギを食べるルリシジミ、ツバメシジミ、トラフシジミ、コミスジなどだけになってしまう。まあ、一般にはチョウがたくさん飛んでいれば綺麗なのだが、ここは希少種のチョウや植物が多い場所なのだ。絶滅危惧種の食草や珍しい植物のある場所での草刈りは、やはりそういうものを残しつつ刈るという作業が必要なのだろう。
 7月にこのため池で撮影したウラギンヒョウモンの動画を動画一覧に追加しました。

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