心配なことがあった。この週末に小諸で最も誇るべき自然があるため池の草刈りが行われたのではないかと・・・。2003年以来、いつもこの季節に心配したり安堵したりすることだ。
行ってみると全ての草が刈られていた。例年よりずっとひどい。いつもは斜面の刈り残しと左下の休耕地が刈られないため,ヒメシロチョウはかろうじて生息を続けてきた。今回のような草刈りは希少種のチョウにとってかなりの打撃だ。無残である。ここまでひどく刈られたのは2003年以来だと思う。その時チョウが激減し、ミヤマシジミが壊滅的状態になった。
刈るべき草は当然あるが、刈ってはならない草もある。皆伐することによって,環境が悪化し、ただの雑草だらけの野原になってしまうこともある。カセンソウが生えるような野草にとって良好な場所は今の季節に草を刈るのはまずい。実際、隣の市の保護された池では,今の季節は草刈りをしない池もあ利、草地が美しい。
草が伸びれば刈ればよい,夏は草が茂るから刈る。こうして日本の草地は荒れてしまったのだ。草刈りで保てる草地環境もあるし、草地の管理は難しい。しかし貴重な植物(キキョウやサワヒヨドリなどの野草も多い場所だ)が良好に生える草地環境の場合、今、野草草を刈ってどうなるのだと言いたい。農作業に邪魔になるのだろうか?このため池での,今の季節の草刈りは何のためだか理解できない。あきらめと、どうしようもない怒りが込みあげてくる。子どもの頃にむやみに殺虫剤を散布する行為に悲しさと恐ろしさを感じたのだが、その時と似たような気分だ。自分では止められない無力感かもしれない。
草刈りの行きすぎは、過去を振り返れば、草刈り機の導入が大きかったと思う。それ以降、人は今までよりも多く草を刈るようになった。草を刈ると綺麗にしたような気になるという,日本人の悪い癖だ。そうして、人里近くにあった日本古来の植物の多い草地は荒れて、雑草や外来植物という一度変われば戻すことのできない植性に変わってしまったのだと思う。草地の保全の重要性が叫ばれている。様々な研究があるが、草地の種類によっての草刈りの方法などの実践的なアドバイスやマニュアル作りを保全生態学者や植物学者ににもっとやって欲しいと思う。
ヒメシロチョウが卵を産んでいたツルフジバカマも全て刈られた。丈夫な植物だから生えてくるだろう。しかしそこで失われたものは大きい。絶滅が心配されるヒメシロチョウだが、まだメスが残っているから、今回いなくことはないと思うが、ナミヒョウモンはどうだろうか。あまりのショックに、ただただ疲れ果て、なにごとも手が着かない。大切な人を失ったような無力感である。
一週間前のこの草地を飛び交うチョウのビデオを動画一覧にアップしました。
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