「5月6日、セリニアン村のはずれにあるファーブル先生の研究室の机のトでオオクジャクサンのメスが1匹羽化した。その夜のことだ。息子のポールの叫び声がした。早く来て!大きなガが、鳥みたいにおおきいのがいっばいだよ。ファーブルが行ってみると、部屋中オオクジャクサンで飛び回っている。開けてあった窓から入り込んだのだ。メスを入れてあった金網の篭にとまったり、まわりを飛びまわったりしていた。家の中に入り込んだオオクジャクサンは全部で40匹にもなった。」
ファーブルはそれまで、このガを自分の家で見たことはなかったので、オスのガがその日の朝に羽化したメスのところにやって来たのだと考えた。でもどうやってメスの居場所がわかったのだろうか。その日からファーブルの実験が始まった。オオクジャクサンのオスには羽毛のような立派な触角がある。ファーブルは直感で、この触角がメスのにおいをかぐのに役立っているのではないかと考え。触角を切ったオスを放した。
次の日はオスの来るのを待ちかまえた。その夜は25匹のオスがやって来たが、触角を切ったものは1匹だけだった。また全部の触角を切って放した。元気に飛んで行ったのは16匹だったが、その夜は触角を切ったオスは1匹も帰ってこなかった。これでファーブルの考えは正しかったように思われるが、慎重なファーブルは今度は触覚はそのままで、胸の毛をむしって放してみた。
14匹放して、戻ったのは2匹だけだった。実験を統けた8日間で150匹ものオスがやって来たのに、触角のある無しにかかわらず、2度以上来たオスはわずかだった。それににおいだとしたら強いにおいは弱いにおいを消すのではと思い、メスの近くに強いにおいのするナフタリンをまいておいたりしたが、それでもやっぱりオスはやって来た。
◎フランス取材中のため小諸日記の更新が滞るかと思います、そこでファーブルの生まれ故郷や虫たちを前もって準備した原稿で更新することにします。写真はほとんどが20年近く前の取材時のものです。現地からのその日のレポートも時々はいるのではと思いますのでご期待ください。
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