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海野和男のデジタル昆虫記

40年前の冬(東京)

40年前の冬(東京)
2006年12月26日

 写真は40年前の東京都新宿区百人町の冬の景色。すんでいた4階建の公務員住宅の屋上からの撮影だ。雪が降ったので嬉しくなって屋上にのぼって撮影した。
 写真手前のアパートが公務員住宅のR-C、ぼくが住んでいたのはR-Dだ。こうしたアパートが10棟ほどあり、多くが4階建て24戸で一つのアパートを作っていた。戦後、練兵場の跡地に建てられたものだ。1966年と言えばぼくが大学に入学した年だ。1958年の写真から8年しか経っていないけれど、それは随分長い時間で。ぼくは小学生から大人にさしかかろうと言ったところまで成長した。
 この間、東京オリンピックがあり日本は高度経済成長期にさしかかろうとしていた。けれどまだまだ、戦後が終わっていない時代でもある。この写真に写っている右側の大きな平屋は長屋である。戦後住むところがない人たちが集まっていたところだ、確か新栄会と呼んでいたように思う。公務員住宅のアパートの住人と、長屋の住人との接点というのは学校でしかなかったと思う。
 小学校の4年の頃だっただろうか、休みがちの同級生の女の子がいて、その子はこの長屋に住んでいた。先生から学校の連絡や授業のノートを届けるように言われて、一度訪ねたことがあった。長屋の中は薄暗く、明かりもついていない。ドアをノックすると、扉が開いて彼女が出てきたと思う。部屋は3畳ほどの小さなものだった。その時の様子も名前も長屋の中もよく覚えている。けれど、その後、その子がどうなったかまるで記憶がないのである。
 長屋の向こうには実は、さらにまずしい人たちが土管に住んでいた。けれど、それは小学校の低学年だった頃の話で、さすがにオリンピックの後の66年には消滅していた。
 ぼくが住んでいた公務員住宅も実はとても狭く、3畳、4畳半、6畳、小さな台所といったところで、それでも今、図面を引いてみると40平米ぐらいはあったから、随分ましだ。今この場所には長屋もアパートもなく、バブルの頃にできた分譲の公共住宅やホールが建っている。
撮影はペンタックスSP 50mmF1.4

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