このほど偕成社から出版された「虫から環境を考える」というシリーズはぼくが企画した本だ。実はこうして自分で作りたい本が作れる機会はそれほど多くない。そして編集者と相談しながら本を作っていけたのも久しぶりだ。文章量に制約があり、言い尽くせなかった部分も多いが、写真と構成でカバーできたのではないかと思う。
子供の本の仕事はたくさんしている。けれど今回のように、自分が作りたい本、必要だと思う本をいつも作れるわけではない。頼まれれば、自分が絶対にいやだという本以外は、プロとして最善の努力をするといったことも多い。
そんな中で、今までに無い本を作りたいと思ったのがこのシリーズ。有名な昆虫だけれど、子供の本がほとんどないものも多い。子供が図書館でその虫のことを調べたくても本がないというのはまずい。そこでまずそんな虫をラインアップしていった。すると選び出した虫たちは、人間の作り出す環境と密接な関係を持つものが多かった。
虫を長年観察していると、虫の中にはある特定の環境にしか住めないものが多いことに気がつく。環境が変わって、大切に思っていた虫が突然いなくなって悲しい思いをすることも多い。環境と切っても切り離せない虫たちの暮らしがある。虫ばかり見ていると、環境と虫との関わりをいやでも考えざるをえなくなる。
きれいな自然環境と言うけれど、虫たちは綺麗であるだけでは生活することができない。例えばこのシリーズの「ハッチョウトンボ」の場合、一年中浅い綺麗な水があり、その深さが一定していることが極めて重要だということに写真家は気づいてくる。
このトンボの場合は、今では自然環境がよいといわれている場所よりも、むしろ偶然作り出された湿地に住んでいることが多い。人間が土や石を取るために山を削ったあとにできた湿地がとても都合の良い生息環境になったりする。セミの巻では街路樹に付いた卵がもとで都会に増えたのではないかと写真家は考えたりする。
上の写真はこのシリーズの2冊目の「雑木林を飛ぶオオムラサキ」。シリーズのラインアップはこちらから。
主に図書館向けの本なので大型書店以外では入手は難しいと思います。アマゾンなど通販では買うことが出来ます。地元の図書館などにこのシリーズを推薦していただけるとうれしいです。
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