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Vol.22 長谷川哲士さん
屋上庭園で米づくり ! ?  可能にする秘策とは・・・

  • 2012年6月1日

屋上緑化には秘策が・・・

六本木ヒルズ「けやき坂コンプレックス屋上庭園」
六本木ヒルズ「けやき坂コンプレックス屋上庭園」
六本木ヒルズ「けやき坂コンプレックス屋上庭園」
グリーンマスダンパー/六本木ヒルズwebsiteより
グリーンマスダンパー/六本木ヒルズwebsiteより

 2005年から六本木ヒルズの植栽監理の仕事に携わっている長谷川さん。森ビル株式会社の旗艦施設で、植栽地面積だけでも26,000平方メートルあり、敷地の25%が緑に覆われている六本木ヒルズ。その一帯には、長府藩毛利甲斐守上屋敷の跡地である毛利庭園を中心に、地上部はもとより人工地盤の利用で屋上にまで緑地は広がり、緑の一大拠点となっています。

 毛利庭園は池を中心に周囲に園路を通して「池泉回遊式庭園」となっています。春はサクラやツツジ類、初夏〜夏はハナショウブやスイレンなどの水草、秋はカエデ類の紅葉と四季折々、来訪者の目を楽しませています。また、池の中には宇宙遊泳をしたメダカの子孫が水中遊泳?をする姿も見かけることができます。

 屋上の緑化空間はレジデンス棟と映画館などが入る「けやき坂コンプレックス」に屋上庭園があります。レジデンス棟の屋上庭園は、英国のガーデンデザイナー、ダン・ピアソン(オルソープの故ダイアナ妃記念庭園を設計し、日本では六本木ヒルズの屋上庭園の他、十勝千年の森を手掛ける)の作庭ですが、非公開となっていますので「けやき坂コンプレックス」の屋上庭園をご紹介しましょう。

 屋上庭園には建築構造上重量制限が課される場合が多く、通常は植栽基盤も薄層、軽量になりがちで、水管理もままならないことから耐乾性の地被類で覆われることが一般的ですが、「けやき坂コンプレックス」の屋上庭園は、面積1300平方メートル、地上約45mに位置するこの空中庭園では、地上部と変わらない客土を使用し、桜やモミジなどの高木に加え、水田では稲を育て、畑も設けて野菜を育て、また池ではカエル、メダカなど多様な生き物の生息環境(ビオトープ)を提供しています。
 このような構造を可能にしたのは、グリーンマスダンバーと呼ばれる制振装置。積層ゴムによって建物本体と土壌や植栽で重くなった屋上庭園部分を切り離し、地震時には屋上部分を大きく揺らすことで、その層の間の制振装置が地震エネルギーを吸収し、建物本体の揺れを小さくするもの。屋上を緑化することで制震装置の役割も果たしているのです。

 

屋上庭園にある田んぼで田植え
屋上庭園にある田んぼで田植え
収穫時期になった稲に網掛けを
収穫時期になった稲に網掛けを
 水田では毎年、各県に要請を募り、対象となった県の代表的なうるち米ともち米を栽培しています。苗は子供たちの手で植え付け、秋には稲刈りのイベントも行っています。稲刈り後は、春に花を見るためにハナナ(菜の花)を栽培しています。畑では夏野菜が作られますが、これも稲と同様、同じ自治体からその地域の特徴的な野菜苗を提供してもらっています。以前は冬も野菜を栽培し、収穫せずにとうを立たせ、花を楽しむ試みも行っていました。

 この屋上庭園では管理上問題になることがいくつか生じています。一つは、人工地盤なので、年々土壌が圧密化し、排水不良が起きやすくなって、根腐れが生じ、樹木が衰弱・枯死することが多くなっています。また、都心で稲という特殊な作物を栽培している稀な試みは、野鳥にとっては格好の餌場の出現で集中的に狙われます。このため収穫時期が近づくと網掛けをして防御を行っていますが、それでも隙を狙われます。
 そして、稲苗や野菜の苗を外部、それも広く国内各地から持ち込まれるために、ここには生息していない特殊な病害虫が時々紛れ込むことがあり、大繁殖をしかねないことです。このような状況に一つ一つ的確に対応し、問題を拡大させないことが求められています。

 

 

けやき坂通り花壇での管理作業風景
けやき坂通り花壇での管理作業風景
 六本木ヒルズの中央を東西に結ぶ延長400mの「けやき坂通り」の花壇でも、様々な問題に直面しています。例えば、花壇の設置位置によって、花苗の生育にばらつきが生じやすいことです。日当たりの良い場所では土壌が乾きやすく、逆に日陰では花が上手く咲いてくれません。また、坂道であるために雨天時には表土が流失しやすい欠点を抱えています。草花の生育不良や人やペットの踏み込みによる衰弱・裸地化が表土流失に拍車をかけていますが、土壌改良の実施や生育のばらつきをなくすための、場所の条件に合わせた植え付け密度の調整、花壇の周囲にコニファーを配することで表土の流失や踏み込みを防止などの対応策を行っています。
 森ビルの植物管理のこれから方向性としては、例えば病害虫駆除に対して、できるだけ農薬を用いない方法を模索しています。具体的には、忌避作用を誘発する樹脂の利用や天敵の活用などですが一部は成果を上げ始めています。試行錯誤を続けながら、人と生き物が共存できる空間の形成を目指しますが、益々管理の能力が問われます。

 

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