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Vol.16 飯田都之麿さん
「森」のように変化する建築を…

  • 2009年3月1日

ALTERNATION 変化する建築

「草かんむりの街づくり」
「草かんむりの街づくり」(2006年〜2007年)全体が6m×6mのグリッドの仮想軸をもち、植栽と建築が同じ寸法でパズルのように組み合わさり、ゆっくりと配置の変化が出来る
PEN「つみきブロックの家」
PEN「つみきブロックの家」(2004年)
 変化を建築に取り入れられないか。建築に解体という言葉が存在する限り、建築は「消耗品」であり、「消費物」です。私は、建築を「森」のように変化し生き続ける存在にしたいと思っています。世代交代のようにゆっくりと。  非常に面白い街作りの計画を経験しました。「草かんむりの街作り」というネーミングで、20haの工業用地だった場所を、開発型の街作りではなく、20〜25年という平地林の生長プロセスを考慮し、森と共生型のサスティナブル都市に変えていくというものです。藤崎健吉さんが街全体のプロデュースをされていて、飯田事務所が建築のコンセプトを立案。ランドスケープは宮城俊作さんとオンサイトの長谷川浩己さんがなされました。

 街作りの提案の元になった建築のベースは、雑誌PENの企画でつくった一日でつくれる森の家「つみきブロックの家」(2004年)です。地元産の間伐材を細長いブロック状に加工して積むことで、石造りのような組積造の木造建築ができあがり、素人でも簡単に家をつくれる用にしたものです。この工法は元々、高千穂にいらっしゃる中尾繁男さんという方が開発していたものですが、それを同じ形に加工したアクリルのブロックをランダムに組み合わせることで光を透過する壁や天井にしました。10人ほどのスタッフが一日で組み立てることが可能でした。街作りの中では、柱のない再利用可能な間伐材の木のブロックとアクリルで構成された建築群をつくり、必要に応じて分解、増築が出来る計画にしました。そうすることで、マスタープラン型ではない、状況に柔軟に対応するプランができあがります。解体ではなく、分解したパーツを再利用できるので、ずっと街の間取りは変化しながらも、部材の耐用年数が来るまで使い続けることが出来ます。

PEN「つみきブロックの家」 PEN「つみきブロックの家」
PEN「つみきブロックの家」

左上・右上:
300mm単位で規格化されたブロックを積み上げ、壁にランダムにあけた開口部から光が漏れてランダムな光を内部空間に落とす。開口部は木のブロックと同じ大きさに加工されたアクリルブロックが埋め込まれている。
左下:
木のまゆ。つみきブロックの発展型。ドーム状に木のブロックを積み上げ、空間を木で「ふわっ」とつつみ込む


DIRECT EXPERIENCE  直接感じる

つみきブロックの建築の内部
つみきブロックの建築の内部。外部からの光がランダムに差し込み、逆に内部からは、その開口部を通し森が透けて見える
 より直接感じること。デザイン的にも環境的にも一番大事なことであると思います。いろいろなことが複雑になってきているので、直接感じることは非常に難しいことになってきています。数字で見せられ頭ではわかっても、身体は反応しない。身体で感じるレベルまで仕組みをシンプルに見せてあげることが重要になってくるのだと思います。フューチャービレッジではランドスケープはエディブルガーデン、つまり食べられる植物でつくられており、デッキスペースやキッチン会議室で食せます。直接、植物に手を伸ばせることが、よりダイレクトな体験を与えます。
 また、先ほどの「つみきブロックの家」は里山の間伐材がブロックになり、積み上がって家になり、必要がなくなれば分解して再利用されるのを待つ。非常にシンプルです。自分の空間を作るのにどれだけの材料が必要かも体感できるし、空間をつくるプロセスも味わえる。自然とのつながりも感じられる。そうしたつながりを感じられるデザインこそが環境を身体レベルで体感し考えることになるのだと思います。

 我々の事務所では、建築のつくられ方の提案もしていく予定です。「WELACT PROJECT」と呼んでいるのですが、大きな資本の投下によって、突然つくられる建築物ではなく、建築をつくりたい人、もしくは、使いたい人が、WELCOMEと思える小さな資本の集まりによって、徐々につくられる建築群。環境にもよく、健康にも良く、必要と思えるだけの建築を、つくりたい人の意思によって徐々につくっていく。技術的には大変ですが、価値はあると思っています。こうした活動を通して建築をつくることが、「何かを生む」という意識につながればいいなと感じています。


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