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Vol.16 飯田都之麿さん
「森」のように変化する建築を…

  • 2009年3月1日

MAKE ENERGY エネルギーを生むこと

エディブルランドスケープ
エディブルランドスケープ。食べられる植物でつくられている
 フューチャービレッジの屋根は、ちょうど葉っぱが朝露をため、光を光合成するようです。屋根には、最新の太陽電池と、パッシブソーラーシステムが搭載され、太陽の光を電気エネルギーと熱エネルギーに替えてくれます。屋根の雨を全て中央に集め雨水タンクに保管し灌水用に利用しています。最近の技術では、温度差や音響、振動様々なものが電気に変換できるようになってきているので、建築は受電するのではなく発電する施設という意識が生まれればと思います。
 床下には250本の水の入ったペットボトルが並べてあります。今回設計に協力いただいたパッシブソーラーの日本の発案者でもある武山倫さんと話していたところ、屋根の太陽の熱を床下まで導きコンクリートに蓄熱させようとしていたのですが、打ちたてのコンクリートは湿っていて2年くらいは逆に熱を発散させてしまい使い物にならない。それならばペットボトルに水を入れて蓄熱体にしようと、武山さんがアイデアをだし実現しました。水はコンクリートより2倍熱をためることが出来ます。水の入った2リットルのペットボトル20本で、10cm厚のコンクリート1平方メートル分の熱をためることが出来ます。ペットボトルは軽く、水を入れて蓄熱し、終わったら再利用に出せるのでこのアイデアは大変気に入っています。ある方が、更にそれを地震の時に防災用の水に生まれ変わらせようと言っておられましたが、面白いアイデアだと思います。


CRADLE TO CRADLE ゆりかごからゆりかごまで

コンテナを150個使い、会場構成  最近、気に入って読んでいる本があります。『CRADLE TO CRADLE /ゆりかごからゆりかごまで』(ドイツの化学者マイケル・ブラウンガートとアメリカの建築家・プロダクトデザイナー、ウィリアム・マクダナー共著)という本です。通常であればイギリスの福祉政策でも有名な『CRADLE TO GRAVE /ゆりかごから墓場まで』なのですが、プロダクトをつくる上で、部品が役目を終えた後でも、有害物質を出さず、どのように生まれかわるかまで、つまり次のゆりかごを考えて設計しなければならないということです。

 右の写真は、2004年東京デザイナーズウィークでコンテナを150個使い、飯田事務所にて全体の会場構成をしました。4層積み上げたコンテナがブースとなり数多くの企業がデザインイベントを行いました。5日間のイベントの終了後、コンテナ建築は廃棄されることなく、再び何事もなかったごとく、通常のコンテナ輸送に使われました。


SIMPLE WITH MULTIPLE FUNCTION シンプルかつ多機能

外壁
外壁は高断熱ポリカーボネイトハニカムと壁面植栽パネルが交互に配置される
壁、円柱ダクト
右面の壁は全面ホワイトボード。銀色の円柱ダクトは太陽の熱エネルギーを床下に送り壁際から温風として吹き出す
 散歩をしながら木の切り株をみるとき気づくことがあります。木の切り株は非常にシンプルに見えます。建築のように、構造、断熱、設備という区別はなく、木を支える構造、木を幹を守る断熱、栄養・養分を運ぶ設備が一体になっており、年輪には情報も刻まれています。シンプルかつ多機能なものです。いつも何気なく見ているのですが、つくる立場で考えると感嘆します。
 フューチャービレッジも、アイデアが満載です。全てに共通しているのは最小限の素材が多機能であるということ。空調の吹き出しも兼ねた、布でできた洗えるデンマーク製の空調ダクト(結露せず、洗えて清潔、柔らかい空気を送るのでほこりもたてず快適)や、外壁のガラスの5倍の断熱性能をもっているポリカーボネイトハニカムパネルは、それ自体強度、水の収まりもよいので、サッシいらず。屋根と母屋と小梁と断熱と天井が一体になったパネルなど。シンプルかつ多機能で、そのことにより取り付けも楽になります。
 建築に限らないかもしれませんが、どんどん区別が増えています。人間の活動は多様であり、区別しきれないし、区別してそぎ落とされた中間領域にこそ、おもしろさがあるのではないかと思います。フューチャービレッジの内部空間は多様性を高める試みがされています。「キッチン会議室」とは、キッチンと会議室が一体になった空間です。オフィス空間ではインフォーマルコミュニケーションが重視されカフェなどの「食」とワークスペースの「職」を接近させようという動きが増えてきていますが、いっそのこと一体の空間ではどうかという試みです。リラックスした雑談のような会話の中にこそ生産のアイデアが眠っていると思います。中央にあるクラブハウスはエリアを分けないで、カウンターや、可動家具で空間を作っていくフリーゾーニングのアイデアです。壁全体がホワイトボードになっていて、好きな場所で打ち合わせをし、文字を書くことが出来ます。可動本棚も空間を自由に仕切るパーティション兼全面ホワイトボードになっており、動かしては、好きな打ち合わせスペースをつくれます。

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