Vol.10 地球や資源がなければ
どんなビジネスも成立しない。
木村麻紀さん
Profile
時事通信社記者を経てフリージャーナリストに。
環境と健康を重視したライフスタイルを指すLOHASについて、ジャーナリストとしては初めて日本の媒体で本格的に取り上げ、地球環境の持続可能性を重視したビジネスやライフスタイルを分野横断的に取材し続けている。
2004年度フルブライトジャーナリストプログラムにて、米コロンビア大学経営大学院客員研究員を務める。
ドイツ・ミュンヘン、米ニューヨークでのジャーナリスト活動を経て、2006年秋に帰国。
ヒトと社会と地球を大事にするビジネス雑誌「オルタナ」副編集長
ヒトと社会と地球を大事にするビジネス情報誌「オルタナ」が創刊した。副編集長の木村麻紀さんにオルタナ発刊の狙いなどお話を伺いました。
「企業とは何のために、誰のために存在しているのか」ー。会社は株主のものか。あるいは経営者や従業員のものか。この古くて新しい問題に多くの人たちが取り組んでいますが、いまだ明快な答えは見出せていません。
しかし、米カリフォルニア州に本社を置く、あるアウトドア・アパレルメーカーの創業者は、一つの重要な提言をしています。彼の言葉には他の経営者とは明らかに一線を画す、独特の価値観があります。それは、次の一文に集約されます。
ビレッジホームズ住民のエリザベスさんは、自治会から手当を受けながら、庭師として毎日2〜3時間敷地内の樹木を手入れしている。
新鮮な野菜や果物が並ぶ、ニューヨーク・ユニオンスクエアのグリーンマーケット。
「企業は株主のものではない。経営者や社員のものでもない。地球のものである。地球や資源がなければどんなビジネスも成立しない。」
その会社は売上高の1%を毎年、地球のために寄付をしています。その会社は、世界で初めて、オーガニック綿の製品を発売しました。また、ペットボトルから再生したフリースを世界で初めて発売したのもこの会社です。この会社は上場しません。上場すると市場から急速な成長を求められ、正しい経営ができなくなるからです。
私たちは、こんな会社がもっと増えて主流になれば、私たちの社会や経済がさらに良い段階に進めるのではないかとの思いを強くしました。この会社と同様に、素晴らしいミッション(使命)を持った企業は米国に他にいくつもありますが、実は米国でも決して主流ではなく、むしろウォールストリート的な資本主義経済とは距離を保っています。
私たちは、国を問わずこうした企業やビジネスをもっと皆さんに知ってもらおうと、「オルタナ」という雑誌を創刊しました。「オルタナ」とは alternative の略語で、「もう一つの」「伝統的ではない」という意味です。毎回の巻頭特集は「地球や社会に貢献している」「成長だけのビジネスモデルとは一線を画す」「きちんとしたブランドを築いている」ビジネスに関する情報のほか、環境や健康に配慮したライフスタイルに関する話題も取り上げます。