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「このコンテンツは、FoE Japan発行の『green earth』と提携して情報をお送りしています。

Vol.14 日本の新たな違法伐採対策法が成立!違法伐採木材は日本市場からなくなるのか?

  • 2017年2月10日
  • green earth

オランダ大使等、海外ゲストを招いて開催した国際セミナー(2015年11月10日)
オランダ大使等、海外ゲストを招いて開催した国際セミナー(2015年11月10日)
 世界の貴重な天然林は、主に人為的な要因により依然として急速な減少・劣化を続けています。
 残された貴重な森林の保全と、適切な利用との両立を目指した「持続可能な森林管理・経営」が提唱されて久しいですが、その実現を阻害する大きな一因となっているのが「違法伐採問題」です。欧州連合(EU)、米国、豪州などでは、この問題への対応として、すでに「違法伐採木材の市場への流入を禁止する」法律を策定し、実施しています。
 こうした流れを受けて、日本でもついに違法伐採対策のための法律が制定されました。この法律によって、日本市場から「違法伐採木材」はなくなるのでしょうか?

議員立法で新法制定

 2016 年5 月13 日、日本の新たな違法伐採対策法が国会の参議院本会議で可決、成立しました。法律名は「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」です。これまで日本ではグリーン購入法の下、2006 年4 月より政府調達に限って、木材・木材製品の合法性を確認することを義務付け、合法性が確認できるものの調達を推進することで、それが確認できないもの(違法伐採木材)流通を減らしていくという方策をとってきました。しかし、海外の主要木材消費国が「違法伐採木材の輸入禁止」を掲げて違法伐採リスクの高い木材の流通を厳しく規制するなか、日本の方策では違法伐採木材を減らすのには不十分であることが明らかとなり、今回の新法制定に至ったのです。
 FoE Japan は以前から、「違法伐採木材の輸入禁止」規制のない日本市場が世界の違法伐採リスクの高い木材の温床になってしまう危険性について警鐘を鳴らしてきました。2014 年以降、国会議員へ個別に説明をしたり、議員対象のセミナーを開催するなど、集中的なロビー活動を展開してきました。2015 年3 月、超党派議員で構成される「山の日」議連の勉強会で「違法伐採問題」が取り上げられたのを機に、各党での議論へと発展し、2015 年夏に公表された各党個別の中間とりまとめでは「現在の取組みは不十分である」との認識が明記されました。これ以降、各党内で非公開の議論・検討が行われている間も、FoE Japan等は継続して法案に不可欠な構成要素について提言・ロビー活動を継続してきました。
 その成果が実り、2016 年の通常国会で、議員立法として提出され、ついに成立したのがこの法律です。

新法の気になる2つのポイント

ようやく成立した新法。果たしてどんな法律なのでしょう?

1.「規制」じゃなくて「促進」で大丈夫?
 新法の目的は『合法伐採木材等の流通及び利用を促進し、木材関連事業者による合法伐採木材等の利用の確保のための措置等を講ずることで、自然環境の保全に配慮した木材産業の持続的かつ健全な発展を図り、もって地域及び地球の環境の保全に資すること(第1 条)』とあります。その対象は政府機関、民間企業を問わず幅広く「事業者」とされ、『事業者は、木材等を利用するに当たっては、合法伐採木材等を利用するよう努めなければならない(第5 条)』としています。
 つまり欧米豪のような「違法伐採木材の輸入を禁止する」のではなくて「合法伐採木材等の流通および利用を促進する」法律であり、その利用・促進はあくまで「努力義務」となっています。

2.対象の事業者は「任意登録制」?
法律の対象となる事業者については、定義された「木材関連事業者」(※1)の中でも、『その取り扱う木材等について合法伐採木材等の利用を確保するための措置を講ずるものは「登録実施機関」が行う登録を受けることができ(第8 条)、当該登録に係る合法伐採木材等の利用を確保するための措置を講ずる事業の範囲において、「登録木材関連事業者」という名称を用いることができる(第13 条1項)』と規定されています。
違法伐採木材の流通を減らすために肝心な「合法伐採木材等の利用を確保するための措置(いわゆる“ デューディリジェンス(DD:念入りな確認)” )」の実施は「木材関連事業者」の中でも「登録木材関連事業者」が実施することになっていて、その登録はあくまで「任意」に留まっているのです(図参照)。

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図:新法の概念図(林野庁資料を参考に作成)

 また、登録をうけようとする事業者が、政府の定めた基準を満たすDD を実施する企業か否かを審査する基準は、今後の主務省令で決められるために未知数です。一方で、登録しない「木材関連事業者」に対しては何も影響がなく、違法伐採木材を購入していてもこれまで通り事業を続けることができます。これでは「登録木材関連事業者」として責任あるビジネスを行おうとしている企業にだけ労力や費用の負担がかかる、ということになりかねません。

 このように基本的な法的枠組みだけを見てみても、これでは、国内市場への違法伐採木材の流入を防ぐ効果を大きく期待することは困難と言わざるを得ません。

(※1)木材関連事業とは『木材等の製造、加工、輸入、輸出又は販売(消費者に対する販売を除く。)をする事業、木材を使用して建築物その他の工作物の建築又は建設をする事業その他木材等を利用する事業(第 2 条 3 項)』

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