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第42回エコ×エネ・カフェ『「世界中の水問題解決に挑む!」~日本発スタートアップ・小さな水インフラが生み出す価値とは?~』

  • 2023年4月18日
  • 緑のgoo編集部

水問題を解決する小規模分散型水循環システム

越智:
そこで、我々WOTAが提唱するのが、小規模分散型水循環システムです。
従来の水道は、家と水道管を全部つなげてまとめて処理してきました。この集中型のシステムに対して、小規模分散型水循環システムでは、使ったその場で水を浄水処理して再利用します。水をその場で循環させれば、極論ですが、水道管を必要としない世界が作れます。

水道にかかる年間10兆円のうち半分以上が水道管の費用と言われており、さらに水道管がなければ配管の費用も工事もいらないので費用も時間も大幅にカットできます。

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越智:
今までの水処理施設は個別設計で行われてきました。水源も配給先も違うので個別設計し、ベテランの方が経験則に基づいて運用していくしかありませんでした。
これに対しWOTAの技術は、人を介さずに自律制御できないかという発想から生まれました。状態をセンサで把握し、運用管理の判断を機械学習でアルゴリズムを組み、データの蓄積してフィードバック制御の改善を続けていく仕組みで、商品は個別設計を避けて、汎用性を持たせるようにしています。

また製品にはすべてSIMカードが入っているので、製品の状態は常に把握できています。水処理業界には非常に長い歴史がありますが、WOTAはこのようなIoT技術で優位性を構築してきました。

越智:
WOTAの技術は、生活排水すべてに対して再生率98%、サイズとても小さく、安全性も飲用水質基準を保つ、この3つを掛け合わせると、世界的に見ても唯一のポジションを築いているという自負があります。

水道のない場所で水利用を実現する

越智:
現在WOTAには2つの商品があります。ひとつは「WOTA BOX」で、断水したエリアでシャワーを提供する製品です。実は被災地で大きな問題となるのは、飲み水よりも入浴なんです。飲用水は1日3リットルあれば足りますが、シャワーは1回で50リットル使います。なので、水100リットルあっても2人しかシャワーを浴びられません。

しかし「WOTA BOX」はシャワーの排水を98%再生できるので、100人以上に対応できます。今まで様々な被災地に導入し、2万人以上の方に入浴を提供できました。2023年2月に起きたトルコ・シリア大地震の被災地でもJICA(国際緊急救助隊)にも使ってもらっています。

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越智:
もうひとつが、水道いらずでどこでも手が洗える「WOSH」です。都市部の商業施設などで見かけたことがある方もいらっしゃると思いますが、2年間で累計200万回の手洗いを提供しました。そのデータは全て把握し、常にアップデートをかけています。使っていただければ使っていただけるほど改善でき、ランニングコストを下げられます。

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越智:
それらの技術を住宅規模において、全排水再生循環利用に対応した小規模分散型水循環システムは、2022年に実証実験に成功しました。トイレやシャワーなどで使った水をその場で回収、処理してまた使う。つまり上下水道を住宅1世帯単位のパッケージでやるということです。「WOTA BOX」と「WOSH」は膜処理を活用してきましたが 、住宅接続型のものでは、生物処理なども加えることにより、すべての生活排水に対応しています。

森:
どれくらいの大きさになるのですか?

越智:
だいたい家庭用給湯器3台分くらいの大きさです。
住宅1世帯単位で小型でやろうとしているところは他にはないので、そのコンセプトは世界的に見てもユニークだと思っています。

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越智:
WOTAの小規模分散型水循環システムの現在の単価は、アメリカの上下水道の単価より安いという算出ができています。日本は平均的に非常に単価が安い国ですが、日本の島や中山間地域など場所によっては、非常に給水原価が高いので、まずはそういうところに導入することで経済合理性を示し、最終的には世界のまったく水道が通っていない地域に入っていくことが目標です。

森:
「今すぐアフリカに持っていけ!」と言う人もいるんじゃないんですか?

越智:
現段階でアフリカに持っていくことは、結果としてコストがかかってしまうため、かえってアフリカの方々の水アクセスを悪化させてしまうかもしれません。このシステムは普及すればするほどコストが下がりますので、他の地域で展開を続けて、コストが安くなったタイミングでアフリカへの導入を考えており、最終的には、イニシャルコストゼロで導入できることを目指して開発を進めています。

水は毎日処理をし続けるものですのでランニングコストがかかりますが、フィルターの寿命を長くするなど改善をしていけると、コストを下げられます。例えば、手洗い機「WOSH」は2年間でソフトウェアを10回アップデートしており、ハードは変わらないままで、ランニングコストが当初と比べて約1/3になっています。

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越智:
現在2つの自治体との実証が始まっていて、今後も増えていきます。 ある中山間地域の水道が通っていない地域では、40世帯に水道を通すのに40億円/20年かかるので水道施設計画が困難になっていました。しかも人口減少が始まっていて、今水道を通しても近い将来使う人がいなくなってしまう可能性もあります。

そこで、人口に対して柔軟で安価になり得る代替手段として小規模分散型水システムの活用に向けて一緒に取り組んでいます。

越智:
湧き水などを濾過して使う小規模水道を利用している地域は、水源の悪化と管理が問題となっています。高齢化が進み管理が難しくなってきていて、放置されているようなところもあります。東京からフェリーで2時間30分のところにある利島村では、WOTAの小規模分散型水循環システムを使った生活が2023年から始まる予定です。

世界的に注目されるWOTAの技術

越智:
水の問題は海外の方が深刻なので、海外からも注目いただいています。
ウィリアム王子(現ウィリアム皇太子)が「環境版のノーベル賞」ということで王立財団と共に創設した環境賞「アースショット賞」において、WOTAが日本から唯一選ばれ「ウィリアム王子特別賞」を受賞しました。代表がウィリアム皇太子とお話しさせていただいて水に関して困っている地域をご紹介いただいたのが、カリブ海の島国アンティグア・バーブーダです。

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越智:
アンティグア・バーブーダは、世界で最も水ストレスが高い国と言われています。人口は増えていますが、気候変動で雨が降らず下水も普及していません。当国政府と水問題解決にむけて共に実証をすることを合意しており、 2023年から新しくできる国営住宅にWOTAの製品を設置させてもらう予定です。

森:
トルコ・シリア大地震の現場でも活躍しているというお話がありましたね。

越智:
JICAの国際緊急援助隊に「WOTA BOX」を購入いただき、共同で訓練をしてきましたがろ、間もない中で、トルコ・シリア大地震が起きました。救援現場に持って行っていただき、トルコのメディアにも取り上げられました。自然災害は突然起こります。起こってからでは遅いので、国際緊急援助隊のように前もって購入し準備していただいたのはとても良かったと思います。

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森:
98%の効率で水を循環できるということですが、減った水の補填や、そもそも最初の水はどうしているのかが気になります。雨水でしょうか?

越智:
時と場合によりますが、トルコ・シリア大地震の時は、水道水が濁っており、水道水を持ってきて使いました。川の水や給水車の水を使うこともあります。

森:
海水も使えるんですか?

越智:
技術的にはできますが、海水を淡水化するには莫大な電力が必要で、とてもお金がかかります。利島村では現在海水を淡水化を一部活用していますが、1tあたりの給水原価2800円に対して、払われている水道料金は200円。ですから多くの人が継続的に使うことは難しいのです。

森:
水処理のスピードはどれくらいなんですか?

越智:
最大4L/分です。貯水タンクもありますので、シャワーを普通に使って止まることはありません。

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世界的に注目されるWOTAの技術

森:
WOTAが水問題に着目したきっかけは何だったんですか?

越智:
代表らの避難所での経験です。震災の被災地では水道管が破裂し断水していて、トイレ環境は悪化しシャワーも浴びられません。でも川には水があります。そこに水があるのになぜ有効活用できないのか、水インフラの脆弱性に直面し、何とかならないかと痛感したことからプロダクトの開発が始まりました。

実際、今の世界の90%以上の人は淡水原から1km以内に住んでいるんです。近くに水はあるのに、水問題は深刻ですよね。こういった経験も踏まえて最初につくった商品が「WOTA BOX」です。2022年の台風により静岡市清水区で大規模な断水が起きた時も「WOTA BOX」でシャワーを提供することができました。

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森:
高山さんは今までのお話を聞いてどうでしたか?J-POWERもWOTAに出資しているんですよね。

高山:
J-POWERは電力会社ですが、空港や学校、病院などに地下水の浄水システムの提供もしています。そこでWOTAのアルゴリズムを活用している関係で出資しています。
電力も水力も、現在のようにまとめてつくって大規模に送る大規模集中型だけに頼るのではなく、小規模な地産地消型も取り入れて行った方がいいという流れは同じだと思いました。

越智:
そこは使い分けることが重要ですね。今のインフラをつくった当時は人口が増えることが前提になっていましたが、人口減少が始まるとインフラに対する投資は難しくなります。この時に考えなければいけないのが小規模分散型やオフグリッドで、人口密度の低い地域は小規模型のインフラを導入するメリットが大きくなります。

水道管が通っているところといないところでは土地の価値が大きく違いますが、開発したい土地があっても水道管を通すだけで何億円もかかってしまいます。その点、水道に頼らないことで新しい土地の価値創出もできます。

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森:
先ほどの、1世帯単位での小規模分散型水循環システムを使った住宅は電気もオフグリッドなんですか?WOTAのシステムを動かすには電力が必要ですが、家庭用の電力で大丈夫なんですか?

越智:
はい。電線が通っていないのでソーラーパネルが付いています。WOTAのシステムは100〜200V程度の家庭用電力で動くので問題ありません。(予備でLPガス配備)

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