サイト内
ウェブ

「コミュニティデザインで考える『エコとエネのバランスした社会』」第35回 エコ×エネ・カフェ

  • 2020年12月17日
  • 緑のgoo編集部

35ecoene

各界の第一人者をゲストに招き、「エコロジー」と「エネルギー」について気楽にフラットに学び合うエコ×エネ・カフェが、2020年11月24日(火)にオンラインで開催されました。

35回目の開催となる今回は、東北芸術工科大学 コミュニティデザイン学科准教授、リードクライム株式会社 代表取締役の西 直人(にし なおと)さんをゲストに迎え、エコ×エネ・カフェの目指す「エコとエネのバランスした社会」について「コミュニティデザイン」の切り口から様々な意見を出し合い、考えていきました。

35ecoene
西 直人(にし なおと)氏
東北芸術工科大学 コミュニティデザイン学科 准教授
リードクライム株式会社 代表取締役

【目次】
 ①:エコロジーとエネルギーの両立する社会を目指して
 ②:もしエコ×エネ改革担当大臣が新設されたら、
   企業と大学に何を義務付けますか?
 ③:対話の時間
 ④:全体セッション

エコロジーとエネルギーの両立する社会を目指して

開催にあたり、まずは主催のJ-POWER(電源開発株式会社)の藤木専任部長よりご挨拶をいただきました。

35ecoene
J-POWER(電源開発株式会社)広報部 専任部長
藤木 勇光(ふじき ゆうこう)

藤木さん(以下、藤木):
J-POWER(電源開発株式会社)は、戦後復興と経済成長で急速に増えた電力需要に応えるために、国策企業として1952年に設立、2004年に民営化しました。全国に約100の発電所を持ち、日本で消費される電力の約6%を発電しています。1998年に策定した企業理念「エネルギーと環境の共生」の実現を目指して、2007年から「エコ×エネ体験プロジェクト」を社会貢献活動として展開しています。

「エコ×エネ・カフェ」は私たちの暮らしに欠かすことのできないエコとエネ、双方のバランスがとれた社会について社会人と学生がフラットに話し合う「身近なつながりの場」ですが、前回に続きオンラインでの開催となりました。日本各地からご参加頂いているみなさんと一緒に、「エコとエネのバランスした社会」について今一度深く掘り下げて考えていくことを楽しみにしています。

「コミュニティデザイン」とは何か

Be Nature School 森さんの進行のもと、東北芸術工科大学 コミュニティデザイン学科 准教授、リードクライム株式会社 代表取締役の西 直人さんによるワークショップがスタートしました。

森さん(以下、森):
今回のエコ×エネ・カフェは、まず「コミュニティデザイン」についてのお話を聞いた後、グループに分かれてトークテーマについて話し合い、コミュニティデザインを体験してもらいます。それでは西さん、お願いします。

35ecoene
全体ファシリテーターの Be Nature School 森さん

西さん(以下、西):
本日のテーマは「コミュニティデザイン」ですが、この言葉に明確な定義はありません。定義は時代によって変わります。特に近年はコロナ禍や異常気象などで私たちの意識も変わってきているので、コミュニティデザインにとっても大きな転換点だと思っています。

『コミュニティデザイン』という著書で有名な山崎亮さんの定義は「人の関係をリデザインすること」。今までと変わらない事でもあらためて関係性を見直して、解決に導こうということですね。

「デザイン」とは、多くの方に伝えるための方法という意味だけではなく、人が集まる場をつくる、人の関係性をもう一度つなぎ直すという意味もあります。デザインができることはあくまでも支援。コミュニティデザインでは、そこで暮らしている人たちが主人公ということが重視されています。

35ecoene

僕の教えている大学のサイトには「地域の明日を変える勇気をデザインする」という大胆な定義が載っていますし、商品開発論の授業をする時などはかなり踏み込んだ言い方もします。地域を支えるためには収入源やマンパワーが必要になってくるので、関係性をつないでおしまいではなく、持続可能性のための仕掛けや収入源を考えるということもコミュニティデザインの領域に入ります。

学生たちには、このようなコミュニティデザインの定義をいくつか紹介した上で、それぞれが考えて自分の言葉で定義づけられるようにと伝えています。例えば、僕のゼミの学生が就職活動のために作成した映像では「コミュニティデザインで地域の人たちが主人公になって楽しく地域を変える活動を支援する。その結果、日本が持続可能で豊かな社会になる」と表現しています。

コミュニティデザインの源流説で有力なものは、1960年代にアメリカに広がった都市計画弱者のための人権運動です。言語の違いや識字率の問題もある中でのまちづくりを考えるということなので、ワークショップの源流とも近いです。

僕たちが特に力を入れているのは、地域の方が話し合う時に当事者意識を持って参加できるような参加のデザインです。参加できなかった人が合流できるような仕掛けや、参加しなかった人を誘う楽しいプロモーションにはこれまで以上に力を入れています。持続可能な仕組みも大事です。その場が盛り上がっただけでは意味がないので、続けられる仕組みや楽しさをデザインすることも重要視しています

35ecoene

本題に入る前にここで少しだけ、私の経歴を紹介します。

生まれは鹿児島です。元々観光の仕事をしていたので、観光とコミュニティデザインを掛け合わせてまちづくりや地域の課題解決のお手伝いをするのが専門です。大学時代から野外教育などにかかわってきましたが、この世界に入る大きなきっかけとなったのが2005年の愛知万博での自然体験パピリオンのお仕事です。100人いるスタッフの8割は地元の方。徹底的に人材育成して、初心者だったみなさんを2年がかりでプロにして大活躍してもらいました。ちょうど時代の流れも、様々な分野で住民参加や市民参加がキーワードになっていた頃でした。

35ecoene

5年前から山形県鶴岡市と東京の二拠点暮らしをしていますが、鶴岡市はユネスコの食文化創造都市に日本で唯一指定されている独特の食文化を有するまちで、食を通じてまちを元気にしていこうという活動にもかかわっています。

東北は加速度を増して過疎化が進んでいて、維持運営が大変な限界集落もたくさんあり、自治会とか小さい集落の計画づくりなどもお手伝いしています。たとえば「廃校を刑務所にして国から税金をいっぱいもらっちゃおう!」など、1300年の歴史を持つ東日本最大の修験場の門前町のご年配の方々とは思えないような柔軟な意見も飛び出したりするので、とても面白いです。

35ecoene

この後、4人ずつのグループに分かれて対話していただきますが、コミュニティデザインで大事なことは「対等」ということです。年齢、性別、専門性、経験の違う人が同じ土俵に乗り、丁寧に対話して相互理解することをとても大事にしています。

そしてもうひとつが「わかった気にならないこと」。情報にあふれている今の時代、「聞いたことある」程度の理解で進めてしまうと、後々イメージのズレが大きくなってトラブルが起こることもしょっちゅうあります。

エコ×エネ体験プロジェクトのサイトを見ると「エネルギーと環境の共生」や「エコとエネのバランスした社会」をめざすと書いてあります。それには共感すると思うのですが、「エコとエネのバランスした社会」って実際はどんな社会?「エネルギーと環境の共生」を目指すとは具体的に何?と考えると、それぞれ思い描く姿や考えは違うと思います。なので、言葉を共有するだけではなくその解釈が一緒かどうか丁寧に話し合って共有していくことが大事です

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

記事の無断転用は禁止です。必ず該当記事のURLをクリックできる状態でリンク掲載ください。