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水素社会ってなんだろう?〜水素エネルギーが生み出す未来とは〜 ― 第22回エコ×エネ・カフェ(前編)

  • 2016年9月14日
  • 緑のgoo編集部

第22回エコ×エネ・カフェ(前編)

各界の第一人者をゲストに招き、「エコロジー」と「エネルギー」について気楽にフラットに学び合うエコ×エネ・カフェが、2016年6月27日(月)に開催されました。22回目の開催となる今回のテーマは「水素エネルギー」です。なぜ今「水素」が注目されているのか?国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の水素エネルギーの専門家、横本克巳さんにわかりやすく解説いただきました。

○ゲスト
横本 克巳氏

横本 克巳(よこもと かつみ)氏
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
新エネルギー部 燃料電池・水素グループ 主査

平成元年:岩谷産業株式会社入社
平成18年:NEDO出向 燃料電池・水素技術関連の研究開発マネージメント
平成20年:九州大学環境安全衛生推進室高圧ガス等安全管理部門長として大学内の高圧ガス等の設備の安全管理、安全教育を行いながら、兼NEDOプログラムマネージャーとして、燃料電池・水素技術関連の研究開発を支援
平成26年:NEDO出向、現職

エコロジーとエネルギーの両立する社会を目指して


まずは主催のJ-POWER(電源開発株式会社)の藤木専任部長より開催のご挨拶。

「J-POWER(電源開発株式会社)は、戦後復興と経済成長のため急速に増えた電力需要に応えるために、国策企業として1952年に設立、2004年に民営化しました。全国に発電所を持ち、日本で消費される電力の約6%を発電する国内最大の卸電気事業者です。1998年に策定した企業理念「エネルギーと環境の共生」の実現を目指して、2007年から「エコ×エネ体験プロジェクト」を社会貢献事業として展開して、今年で10年目を迎えました。私たちの暮らしに欠かすことのできないエコとエネ、双方のバランスがとれた社会のつくり方を、皆さんと一緒に考えていけたらと思います」

身近な存在、水素


ファシリテーターのBe Nature Schoolの森さん

森:水素エネルギーへの関心は高いけれど、あまりよくわかっていないという声が多くありました。水素とは一体どんなものなのか、ご説明いただけますか?


横本: 太陽エネルギーも水素であると知っていますか?実は、水素は宇宙にもっとも豊富に存在する元素と言われています。水素は単体としてはほとんど存在せず、主に水、化石燃料、有機化合物等という形で存在しています。目に見えないので気づかれにくいのですが、実は人間の体の中にも水素を含む物質はたくさん入っているのです。

森:人間の体にも!そんなに身近な存在だったのですね。

横本:使い方も多様で、光ファイバーの製造、口紅を作るときの油の硬化用など、産業界では幅広い用途で活用されています。そして今、新たにエネルギーとして活用することに、注目が集まっているのです。

水素は危険?

横本:ところで、皆さんは水素にどんなイメージを抱いていますか?小学校の理科の時間に火をつける実験をしたり、飛行船の炎上事故の写真を見て「水素が原因で大事故が起こる」という誤解が生まれ、「水素は危ない、爆発する」というイメージを抱いてしまっている人も多いのではないかと思います。実際は水素ばかりが特別危険性が高いというわけではなく、正しい理解が進めば、いずれはガソリンが「セルフ」で販売されているのと同じように、水素も水素ステーションで「セルフ」で扱われるくらい、安全で身近なエネルギーとして受け入れられる日もくると思っています。

森:確かにガソリンやガスも、社会に広がり始めた頃は今よりも「危険」と思われてきたでしょうからね。

水素の特徴


横本:水素は、常温では無色、無味、無臭の気体です。非常に軽いことが特徴で、燃焼すると酸素と反応して水になる性質を持っています。水を電気分解して水素を製造することにより、水素の形で電気を大量に長時間安定的に貯蔵することができるため、「貯蔵」し「運ぶ」ことに向いたエネルギーとして、電気・熱、または輸送用エネルギーとしての利用が期待されています。

森:燃えても水が出るだけだから、エコということですね。

水素エネルギーの実態とは?

森:でも、実際水素エネルギーって、どれくらい使われているのですか?

横本:実は、エコなエネルギーシステムとして注目されている「エネファーム」の燃料電池の燃料にも水素が使われています。炭化水素系燃料(都市ガス、LPガスなど)から取り出した水素を使って発電しているのです。都市ガスに熱をかけて、水素を取り出すという仕組みです。エネファームは、CO2削減効果や、エネルギー節減効果があることで知られて、導入の拡大に伴い、徐々に価格も下がってきています。

森:エネファームはエコという話は聞いたことがありましたが、水素が使われているとは知らなかったです。

横本:トヨタのMIRAIそしてホンダのCLARITYといった燃料電池自動車も注目されています。大量生産技術が未発達のため、現在、予約から購入まで3年待ちという状況です。定価は700万円を超えていますが、国の補助金が入るため、一台あたり500万円ほどで購入できる状況です。

森:まだまだ高いですが、それでもそんなに予約が入っているなんてすごいですね。

横本:水素が燃料として最初に実用化されたのは、1965年代に開発されたアメリカの宇宙船です。それから50年程の時間をかけて、自動車に搭載されるまでに、技術開発が進みました。ちなみに、燃料電池自動車は約5分で水素補給が完了し、700~800kmの走行が可能です。

森:ということは、ガソリンを補給するのと同じくらいの時間ですね。そう聞くと、意外に手軽に使えそうな感じがしますね。

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