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「水循環基本法」 詳細解説

読み:
みずじゅんかんきほんほう
英名:
Basic Act on Water Cycle

水循環は、太陽エネルギーを受けて蒸発した水が、上空で雲になって雨や雪として地表に降り注ぎ、川や地下水として山や森林、平原などを経て海へと至る一連の流れのことだ。地球上には約14億キロ立方mの水があり、蒸発量と降雨量のバランスがとれていれば、水は絶えることなく循環する。しかし、水は人類の生活や生産活動に欠かせない資源であるだけに、採取や使用に伴う水環境の悪化が深刻化している。その上、淡水の量は全体の0.01%に過ぎず、水資源をめぐって国家や地域間で紛争がしばしば起きる。地球温暖化異常気象も、水の健全な循環を損ねる要因となっている。

日本は年間降水量が多いものの、国土交通省の2013年版「日本の水資源」によると、1人あたりの水資源量は約3400立方m/人・年と、世界平均の半分にも満たない。一方、1人あたりの水使用量は世界平均の約1.3倍にもなる。貴重な水資源を大切にし、水循環の健全性が保たれるよう管理していくためには、水をただ消費するのでなく、その有効利用を図るとともに、雨水の貯留・浸透などによる再利用を進めていくことが重要だ。このため、2014年3月に、水を「国民共有の貴重な財産」と位置づけた「水循環基本法」が、「雨水利用推進法」とともに成立した。同年7月1日に施行される。

水に関する法律としては、国土交通省所管の水防法や河川法、経済産業省所管の工業用水法、環境省所管の水質汚濁防止法などがあるが、水の循環そのものを対象とした法律はなかった。基本法は、水循環を、水が蒸発・降下・流下・浸透により海域などへ至る過程で、地表水や地下水として河川流域を中心に循環することと定義している。また、人の活動及び環境保全に果たす水の機能が適切に保たれた「健全な水循環」を確保するために、国、地方自治体、事業者及び国民の責務を定めている。

政府は基本計画を定め、国及び地方自治体は、流域における水の貯留・涵養機能の維持・向上を図るため、雨水浸透や水源涵養の能力をもつ森林、河川、農地、都市施設などを整備し、流域の総合的かつ一体的な管理に力を入れる。また、内閣に水循環政策本部を置き、水循環政策担当大臣が水循環に関する施策の推進を指揮する。同大臣は国土交通大臣がその任に当たる。さらに、国民の水循環に関する理解と関心を深めるため、8月1日を「水の日」と定めている。国及び地方自治体は、水の日の趣旨にふさわしい事業の実施に努めなくてはならない。

このように基本法は、水循環に関する施策を総合的かつ一体的に進めていくことを目的としている。しかし、法案化の話がもち上がった当初は、海外資本が国内各地で進めている水源地や森林を買収する動きに歯止めをかける規定を盛り込むべきという意見もあった。結局、その部分は法案化の経緯で抜け落ちたが、条例で制限しようとする自治体もある。それだけに、外資による水源地の買収を規制すべきであるという意見は根強い。

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