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「核燃料サイクル」 詳細解説

読み:
かくねんりょうさいくる
英名:
Nuclear Cycle

わが国で1年間に発電される電力量は9900億kWh(キロワットアワー)に達し、その約3割が原子力発電によって供給されている(2006年度)。原子炉の燃料であるウランは、鉱山で採掘されてから原子炉で使用されるまでに、さまざまな手が加えられる。また、原子炉で使用された燃え残りのウランなどを再処理すると、核燃料として再び利用することができる。核燃料の使用に伴って行われるこうした循環を核燃料サイクルと呼ぶ。

国の原子力委員会は5年ごとに原子力長期計画を策定しており、現行の「原子力政策大綱」は2005年10月に策定されたものだ。そこでは、使用済燃料を再処理して、回収されたウランやプルトニウムを有効利用することを基本方針としている。国が核燃料サイクルを推し進めているのは、エネルギー安全保障の観点に立ってのことだ。現在、ウランの需給バランスは核兵器の解体によって供給されているため安定しているが、中国などの新興国での利用が拡大すれば、今後10年ほどで不足するとも言われている。有限なウランを有効活用すればエネルギーの安定確保に役立つ。

また、放射性廃棄物が削減するのも利点としてあげられている。直接処分するとウランやプルトニウムなどを含む高レベル放射性廃棄物になるが、再処理してガラス固化体にすれば放射能による有害度が小さくなるためだ。しかも、核燃料を再利用すると廃棄物の体積が直接処分に比べて約3分の1に減る。青森県六ヶ所村の再処理工場では、実際の使用済燃料による試験(アクティブ試験)が行われているが、故障などが相次いだため操業されていない。

同大綱はまた、プルサーマルの推進をかかげている。プルサーマルは、使用済燃料から取り出したウランとプルトニウムを混ぜたMOX燃料を、軽水炉という原子炉で利用することだ。プルサーマルを行うと1割から2割のウランを節約できるため、2007年3月に閣議決定されたエネルギー基本計画にもその推進が盛り込まれた。電気事業者は、2010年度までに10数基のプルサーマルを実施することを目指している。

さらに、原子力発電は発電の過程で二酸化炭素(CO2)を排出しないため、政府は重要な地球温暖化対策として位置づけている。2008年7月に閣議決定した「低炭素社会づくり行動計画」では、地球温暖化の進行に歯止めをかけるために原子力を推進すると明記。核燃料サイクルを確立するとともに高速増殖炉サイクルの早期実用化を目指すとしている。高速増殖炉は、ウランをプルトニウムに効率よく変換して利用する原子炉で、ウランの利用効率が100倍以上に向上するといわれている。

一方、市民団体や再処理工場の地元住民、研究者の一部には、核燃料サイクルを進めるべきでないという意見が根強くある。また、原子力発電は肯定していても、核燃料サイクルの推進には慎重な姿勢を示す向きもあり、大きく分けて、1) 推進論、2) 慎重論、3) 反対論、の3つの意見があるのが現状だ。

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