A: トキはコウノトリの仲間で、かつてはアジアやロシア、日本に多く分布していたが、乱獲などのため激減し、特別天然記念物や国際保護鳥に指定されたにもかかわらず、日本では1981年に野生絶滅した。国や新潟県は、トキの保護・増殖のために保護センターを建設し、中国の協力も得て増殖事業を続け、自然繁殖にも成功した。しかし、トキを野生に帰す「野生復帰」のためには、トキが繁殖するための自然環境が必要だ。たとえば、トキが巣をかけるための大木やえさ場となる湿地や河川が求められる。しかし、トキのえさとなる小魚などが農薬などの影響で減ったことや、生息地となる森林は失われつつあることが、トキの野生復帰を阻んでいる。環境省はトキの野生復帰を進めるため、2003年に「佐渡地域環境再生ビジョン」(トキ野生復帰・環境再生ビジョン)を策定。「トキが生息できる自然環境づくり」を掲げ、2015年頃までに約60羽のトキを野生化する目標を設定した。その実現のため、2007年にはトキの野生順化施設を完成。2008年度に試験放鳥を行う予定だ。
A: トキは、コウノトリ目・トキ科に属し、翼を広げると約130cmにもなる大きな鳥だ。トキの寿命についてはよくわかっていないが、1968年の捕獲以来飼育されていた日本産メスの「キン」は、2003年10月に世を去った時に36歳だったと言われている。生物は、人間によって飼育されている方が、野生よりも長生きする傾向があるため断定はできないが、20〜30年生きて不思議はない。ちなみに、トキの個体群は日本と中国にのみ生息し、国際的にも絶滅のおそれがあるが、キンの死によりいなくなってしまった日本産のトキと、中国産のトキは同じ種類で、生物学的に大きな違いはない。日本と中国は1985年以来トキの保護について協力関係にあり、2003年10月には、2010年までの両国間のトキ保護協力に関する基本的な枠組みを定めた「日中共同トキ保護計画」に署名した。