サイト内
ウェブ

「クマ出没」 詳細解説

読み:
くましゅつぼつ
英名:
Frequent Appearance of Bear

日本にいる代表的なクマ類であるツキノワグマは繁殖率が低く、とくに西日本の生息域では個体数も少ないため、環境省レッドデータブックでは、「絶滅のおそれのある地域個体群」として選定されている。これらの地域では、鳥獣保護法に基づき、県単位での狩猟禁止措置が1994年から実施されており、他の地域でも特定鳥獣保護管理計画の策定などが行われている。しかし、近年、ヒグマやツキノワグマなどのクマ類が人里に多く出没し、各地で被害が発生している。

これに伴いクマ類の捕獲数も増加しており、その適切な保護管理の観点からも慎重な対応が求められている。2004年秋には北陸地方を中心にツキノワグマの大量出没が発生し、有害鳥獣としての捕獲数は2004年12月31日現在で2222頭に上った。これは、1990年代の年平均941頭の2.3倍であった。また、富山県、石川県、福井県の北陸3県では、1990年代には3県の合計年平均有害鳥獣捕獲数が80頭であったのに対し、2004年4〜12月までの捕獲数が3県合計で546件という数を記録した。さらに、2007年のクマ類の捕獲数は9月末現在で1078頭となっており、被害を受けた人の数は37人に及ぶ。

一方、クマ類による人身被害が全国で発生している。クマ類による人への被害には、山菜採りや登山、キャンプ、釣りなどのために、人が生息地に入ることで発生する事例が多いとされている。また、クマの生息地周辺の、林と農地が混在しているような場所で突然出会う場合があるほか、農作業中の被害も多い。2009年9月には、岐阜県の「乗鞍スカイライン」にあるバスターミナルで、観光客らがクマに襲われて負傷する事件が起きた。

クマ類の大量出没の理由を探り、対策を検討するために環境省が2004年度に行った調査によると、1) 北陸地方の大量出没にはブナの不作の影響があったと考えられたこと、2) 里地里山がクマの好適な生息地になりつつある可能性があること、3) 集落周辺に放置されたカキなどの果実や生ゴミなどが誘因になった可能性があること――などが明らかになった。また、保護管理計画作成やモニタリングを含む総合的な保護管理の取り組み、電気柵の設置やゴミの適正処理による出没抑制対策、出没時の対策などにより、保護管理対策を取る事が重要であるとしている。

その後、2006年にもクマ類の大量出没が発生し、環境省は緊急的な対応として、福島県、長野県、富山県の各県と協力して出没要因を調査。クマ類の出没から人身被害などを減らすことは、クマ類の適切な保護管理につながるとして、「クマ出没対応マニュアル(暫定版)」を2006年に公表。2007年に確定版をまとめた。このマニュアルは、クマ類に対する注意事項を、生息地周辺などに住む人と、地方自治体の鳥獣行政担当者のそれぞれに向けてまとめている。一般の人向けには、クマ類の生態と特徴、遭遇を防ぐための注意、遭遇した場合の対応、農地や人里周辺へのクマの出没を防ぐための方策などが解説されている。また、クマ対策に役立つ都道府県のホームページアドレスや写真なども紹介されている。

一方、クマ類の生態や保護管理、普及啓発などについて話し合う国際会議として「クマ類の研究と管理に関する国際会議(国際クマ会議)」が、数年に約2回の頻度で開催されている。第17回は2006年10月に長野県軽井沢町で行われた。また、国内のクマ類保護を進めるネットワークとして、日本クマネットワーク(JBN)があり、NGO/NPOや研究者、マスコミ関係者など、さまざまな主体が参加している。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。