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「川」 詳細解説

読み:
かわ
英名:
River

川は、歴史的に人間と深い結びつきをもっている。文明の発祥をみても、インダス、黄河、ティグリス・ユーフラテスなど川の流域で誕生している。日本の川はこれらの大河に比べると規模は小さいが、背骨のように山が南北へと伸びる国土には大小さまざまな川があらゆるところを流れ、その流域の人々の生活を築き、支えてきた。人間ばかりではなく、藻類、水生植物、甲虫類、魚、鳥、ほ乳類などさまざまな生物を育み、生態系を保全する役割を果たしている。日本は気候や地質面での地域差が大きく、それが川に個性を与える原因にもなった。山から流れ出す一つひとつの川に個性があり、そこで生活する水生生物も千差万別だ。その違いが川の生物多様性を生み出している。

また、同じ川でも、上流、中流、下流などの場所により、生息する生物に違いがある。流れが速く、夏でも水温の低い上流では、低温に適したイワナやヤマメが生息し、急な流れに耐えられる小さな付着藻が繁殖し、これを餌にするカワゲラなどが育つ。中流域の瀬には石が多くなり、その表面に付着する藻類を食べるカゲロウ、トビゲラなどの幼虫が育ち、アユやウグイ、ボウズハゼなどが生息する。下流になると、流れがゆるやかになり、底に泥が多くなってオオカナダモなどの水草が繁殖、雑食性のコイやフナなど湖沼に似た生物相が見られるようになる。これらの水生生物を餌とする野鳥も多く飛来する。

国内の河川整備のあり方は、明治時代以降、治水が河川管理の主な目的とされてきた。しかし、高度経済成長期以降の河川改修やダム建設、砂利採取などの開発行為により、川の豊かな生態系は、大きな影響を受けた。とくに、川底と両岸をコンクリートで固めたいわゆる「三面張り」の護岸工事は、川に本来生息していた水生生物のすみかを奪う結果となり、このような工事のあり方に批判が集中した。一方、1964年に制定された河川法によって、治水に加えて利水が目的として加えられ、水系を一体として管理する視点が導入された。

その後、環境に対する関心の高まりや地域の実状に応じた河川整備、渇水対策の必要性などを受けて、1997年に河川法が改正され、目的に「河川環境の整備と保全」や「地域住民の意見の反映」の観点が盛り込まれた。また、河川砂防技術基準においても、河川環境の整備と保全や、自然環境等への配慮といった項目があげられている。技術や工法の面でも、国土交通省環境省は、ドイツなど海外の事例を参考にしながら、河川の改修にあたってできる限り自然の形態を保つ工夫を凝らす「多自然型川づくり」に取り組んでいる。魚の遡上や降河など自由な回遊を助けるため、魚道を設けている場所もある。

川と人間が付き合っていくためには、治水や利水の面からだけ見るのではなく、生物を育み、生態系を保持する川の働きを、もう一度見直すことが重要といえよう。

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