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「多自然型川づくり」 とは

読み:
たしぜんがたかわづくり

河川の護岸整備において、従来はコンクリートを岸と川底の3面に張るコンクリート護岸が主流だった。しかし、コンクリート護岸は、魚類や甲殻類など川にすむ生物が生息できる場所を減らすため、水生生物全体の生息量が小さくなることが大きな問題だった。そこで、自然の生態系を失わせることなく河川の工事や管理を行う「多自然川づくり」の必要性が高まった。

多自然川づくりは、河川全体の自然の営みを視野に入れながら、河川が本来もつ生物が生息・生育・繁殖しやすい環境や、多様な河川景観を保全・創出するために河川管理を行う手法だ。生物がすみやすい環境を可能な限り変えずに、地域の暮らしや歴史・文化との調和、景観などの要素にも配慮する。砂利をつめたカゴや、魚の棲家となる細かいすき間のあるコンクリートブロックなどで河川を整備することで、地上部には植生を回復させ、水中には水生生物の生育環境を提供する。また、直線的な河川整備ではなく、瀬や淵など自然の川が本来もっているくねくねした形状を再現する。

国土交通省は、1990年に「多自然型川づくり実施要領」を策定。2006年には河川環境を再生し、人と川の関係を取り戻すための「多自然川づくり基本指針」を策定した。同指針が従来の「多自然型川づくり」という呼び名を「多自然川づくり」に変更したのは、モデル事業のような性格ではない多自然川づくりをすべての川づくりの基本とする姿勢を示したものとして注目される。

同指針は、川づくりのあらゆるプロセスを通じて多自然川づくりを実現すべきであるとしている。また、すべての一級河川、二級河川、準用河川における調査、計画、設計、施工、維持管理など、河川管理におけるすべての行為を対象としている。さらに、川づくりにあたって、自然物や自然に近いものを寄せ集めるだけでなく、できる限り自然の特性や機能を活用すべきであるとしている。そして、無理な横断工作物の採用を避け、落差ができる場合は水生生物の自由な移動を確保するための工夫などを求めている。

こうした多自然型川づくりの取り組みは全国に普及しつつあり、整備後は周辺住民の親水空間として利用されるケースが多い。たとえば、高知県を流れる一級河川の四万十川では、河川事業において生態系や景観に配慮した多自然川づくりが進められている。

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