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「有機農業推進法」 詳細解説

読み:
ゆうきのうぎょうすいしんほう
英名:
Law on Promotion of Organic Agriculture

有機農業とは、化学肥料農薬を使用せず、遺伝子組換え技術を利用しないことを基本とする農業だ。農薬や化学肥料を使用しないなど環境への負荷をできる限り低くして、自然循環機能を増進させる。また、生物多様性の保全も目指す。有機農業を求める消費者のニーズは高く、2004年度に農林水産省が行った調査では、有機農産物を今後も購入したいという人が4割を超え、「特長が理解できれば」「価格が低くなれば」という条件付きの人を含めると、約8割の人が有機農産物を購入したいと回答している。1999年施行の「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」(持続農業法)は、環境と調和のとれた持続的な農業生産の確保を図ることが目的だ。たい肥による土づくりや、化学肥料・化学農薬の使用の低減などを一体的に行うことで、有機農業の普及拡大を目指した。

また、国は、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(JAS法)に基づく「有機JAS」で、有機農産物の表示のルールや検査認証制度を定めている。有機食品の検査認証制度で、厳しい生産基準を満たして生産された有機(オーガニック)食品の証だ。有機JASに適合した生産が行われていると認定された事業者だけしか有機JASマークを貼ることはできない。しかし、技術が十分に確立されていないなどの理由から、有機農業への取り組みを進めるには限界があった。このため、有機農業を推進、普及することを目的とする「有機農業の推進に関する法律」(有機農業推進法)が、2006年12月に制定、施行された。超党派の「有機農業推進議員連盟」による議員立法だ。

有機農業推進法は、環境への負荷を低減する農業生産方法の推進を目的とする。最大の特長は、JAS法に基づく取り組みに限定せず、対象を広くとらえていることだ。同法は、目的、定義などを定めた上で、農業の持続的な発展や環境と調和のとれた農業生産の確保を目指すため、主に次の基本理念を定める。1) 農業の自然循環機能の増進と農業生産に由来する環境負荷の低減、2) 消費者が有機農産物を入手しやすくすること、3) 有機農業者と関係者、消費者との連携の促進、4) 農業者などの自主性の尊重。また、国や地方自治体の責務や、農林水産大臣による基本方針の策定、都道府県における推進計画の策定、有機農業者への支援施策、技術開発の促進、消費者の理解と関心の増進、有機農業者と消費者間の相互理解の増進、国や自治体による調査の実施、有機農業者の意見の反映―など幅広い定めがある。

2007年4月には、同法に基づき、国と地方自治体が連携して有機農業を推進するための、「有機農業の推進に関する基本的な方針 (基本方針)」が策定された。基本方針は、農業者が有機農業に積極的に取り組んでいけるような条件整備を進めることに重点を置いており、2007年度から約5年間を対象としている。農業者が有機農業に取り組みやすいように、有機農業に関する技術体系の確立・普及などの支援施策の充実とその積極的な活用を推進するとしている。また、有機農業者や農業団体と流通・販売業者、消費者などとの橋渡しを推進し、消費者が有機農産物を入手しやすいよう、農産物の生産、流通、販売や、消費に関する情報の受発信を行うとともに、有機農産物の適正表示を推進する。このほか、食育地産地消、農業体験学習、都市農村交流などを推進するとしている。

さらに、有機農業の推進、普及のために、次の目標を2011年度までに達成することを目指す。1) 有機農業に関する技術体系を確立、2) 全都道府県に普及指導員を配置、3) 消費者の理解の割合を50%以上に拡大、4) 全都道府県での推進計画策定。一方、有機農業者への支援策としては、1) 共同利用機械・施設の整備、2) エコファーマーの認定、3) 新たに有機農業を行う人を貸付けなどで支援、4) 有機農産物の流通・販売面での支援、5) NPOとの連携など、さまざまな施策を行うとしている。

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