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「愛知ターゲット」 詳細解説

読み:
あいちたーげっと
英名:
Aichi Target

愛知県名古屋市で2010年10月に行われた生物多様性条約(CBD)第10回締約国会議(COP10)には、179の締約国や国際機関、市民団体などからおよそ1万3000人の人が参加し、2011年以降の新たな戦略計画となる「愛知目標(愛知ターゲット)」や、遺伝資源の採取・利用と利益の公正な配分(ABS)に関する「名古屋議定書」などが採択された。愛知ターゲットは、2002年にオランダのハーグで行われたCOP6で採択された「2010年目標」に代わる新目標だ。

2010年目標では、生物多様性が失われる速度を2010年までに遅くすることを目指していた。しかし、その達成状況についてCBD事務局は「地球規模生物多様性概況第3版(GBO3)」の中で、生物多様性を守るための取り組みは増加したが損失は続いていると指摘している。それによると、21の個別目標のうち地球規模で達成されたものはないという。生物資源の持続性を欠いた消費は止まらず、動物や薬用植物など生物資源の減少による貧困層への影響が拡大し、伝統的知識や権利の長期的な減少が続くなど、状況は好転していない。

こうした状況を受けて採択された愛知ターゲットのビジョン(展望)は、「自然と共生する世界」を実現することだ。生物多様性が評価・保全・回復されるとともに賢明に利用され、生態系サービスが保持され、健全な地球が維持されることにより、人類に恩恵が与えられる世界を2050年までに実現することができるという。そのためのミッション(使命)として、生物多様性の損失に歯止めをかけるため、2020年までに実効的で緊急の行動を起こすことを求めている。

COP10では愛知ターゲットの内容について、意欲的な目標を求めるEUなどの先進国側と、実現可能な目標にとどめるべきとする途上国側との間で意見が分かれた。しかし、議長国である日本が調整した甲斐もあり、保護地域を陸域で17%、海域で10%とする数値目標を含めた20の個別目標について合意を得た。これらの個別目標は5つの戦略目標の下に置かれている。

1) 戦略目標A:各政府・社会が生物多様性を主流に据えることで、損失の根本原因に対処する
2) 戦略目標B:生物多様性への直接的な圧力を減らし、持続可能な利用を促進する
3) 戦略目標C:生態系・種・遺伝子それぞれの生物多様性を守り、厳しい現状を打開する
4) 戦略目標D:人類が生物多様性と生態系サービスから得る恩恵を増強する
5) 戦略目標E:参加型計画立案や知識管理、能力開発などを通じて、対策の実施を強化する

締約国には今後、愛知ターゲットを受けて国家戦略を策定・改訂し、具体的な施策を実施することが求められる。わが国が2007年11月に策定した「第3次生物多様性国家戦略」も2010年目標を基にしており、改訂が必要だ。

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