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「ダム問題」 詳細解説

読み:
だむもんだい
英名:
Dam Problem

ダムは、飲料水の確保や水力発電などの「利水」や、川の水量を調節して洪水を防ぐ「治水」など、社会の中で大きな役割を果たしてきた。日本の主な河川のほとんどにダムや堰が建設されており、200基近いダム建設計画がある。これに対して、建設予定地からの移転を求められる住民や、ダムの建設による自然環境への影響を懸念するNGO/NPOなどによる反対運動が各地で起きている。国内では、川辺川ダム(熊本県)をはじめとして、八ッ場ダム(群馬)、奥胎内ダム(新潟)、徳山ダム(岐阜)などで、ダム建設をめぐり多くの争いがあり、訴訟となったものもある。

このようにダム問題は、ダムの建設をめぐる賛成派と反対派の意見のぶつかり合いから生じる社会問題である場合が多い。ダム建設に反対する人があげる理由の一つが、水需要の変化だ。国内で進められている計画の多くは、人口増加や工業化などで水需要が高まっていた高度経済成長期に立案されたものだが、人口が減り、工場における水のリサイクルが進んだ現在は当時と比べて水需要が少ないため、新たにダムを建設して水を確保する必要はないというものだ。また、市民への情報提供が不十分だったり、当初の計画以外の目的を追加してでも事業を継続しようとしたりする、国などの事業主体の姿勢が関係者からの不信につながる原因ともなった。

こうした中、川辺川ダムと八ッ場ダムの中止を政権公約(マニフェスト)で掲げていた民主党が2009年9月に政権与党となった。前原誠司国土交通大臣は、予算の無駄をなくすとして八ッ場ダムの建設中止をはじめとする143のダム事業の見直しを明言。2010年度予算で確定する予定だが、国の直轄事業と水資源機構事業については2009年度中に用地買収や本体工事などの段階に入らない方針を示した。国によるこの方針転換によって、ダム問題は、国や地方自治体などの事業主体と反対派市民の対立という二極化の構図から、建設中止を求める国と対応に苦慮する自治体、そして市民という三つどもえの様相へと一変した。

一方、コンクリート製の巨大なダムを山奥に建設するのではなく、森林整備などによって治水の効果を高めるとともに地球温暖化への対応を図るべきであるとする「緑のダム」という考え方が注目されている。国内では2000年に「緑のダム構想」が発表された。また、海外では、米国をはじめとする欧米諸国で新たなダム建設に対して慎重な意見が強く、建設されたダムを撤去する動きもある。一方、中国では水力発電を目的とする世界最大規模の三峡ダムがほぼ完成した。

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