ビルの省エネについては、省エネ法(省エネルギー法)により、延べ床面積2000平方m以上の建築物を新増改築する場合には、省エネのための措置を届け出ることが義務づけられている。しかし、建築物におけるエネルギー消費量はわが国全体の三分の一を占めており、建築物の省エネを一層進める必要がある。このため、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)が、2015年7月に通常国会で可決・成立し、公布された。
2013年6月閣議決定の「日本再興戦略」が、新築住宅及び建築物について、2020年までに段階的に省エネ基準への適合を義務化するよう求めたことを受けた法制化だ。建築物省エネ法は、住宅以外の一定規模以上のビルについて、エネルギー消費性能基準への適合を義務づけるなどの規制措置と、省エネ向上計画の認定制度の創設などの誘導措置から成る。
一定規模以上の住宅を除くビルを「特定建築物」と位置づけ、新築時などに省エネ基準への適合と、基準適合について所管行政庁または新設の登録判定機関による判定を受けることを義務づける。これを建築基準法に基づく建築確認手続きに連動させることで、実効性を担保する仕組みになっている。特定建築物は、政令により延べ床面積2000平方m以上のオフィスビルや商業施設、ホテルなどが指定される見込みだ。
また、中規模以上の建築物に、新築時などにおける省エネ計画の届出義務を課し、省エネ基準に適合しない場合には、所管行政庁が指示や命令を行うことができる措置も盛り込まれた。対象となるのは、特定建築物を除く延べ床面積300平方m以上の建築物で、オフィスビルだけでなく集合住宅も含まれる。特定建築物と中規模以上の建築物に関する規制措置は、2017年に施行される。
一方、省エネ向上計画の認定による容積率の特例と、省エネ性能の表示に関する制度が創設された。省エネ性能の優れた建築物は、誘導基準に適合するとして所管行政庁の認定を受けると、容積率の特例を受けることができる。断熱窓サッシ・ガラスや高効率空調設備、LED照明の導入などが対象になる。また、省エネ基準に適合した建築物は、所管行政庁の認定を受けてその旨を表示することができる。これらの誘導措置は2016年に施行される。さらに、建売戸建住宅に関する「住宅トップランナー制度」も2017年に始まる。