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「宇宙太陽光発電(SSPS)」 詳細解説

読み:
うちゅうたいようこうはつでん
英名:
Space Solar Power System

地球温暖化の進行を食い止め、気候変動による自然や社会への影響を防ぐには、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを発生する石油や天然ガスなど化石燃料の使用を抑える必要がある。原子力発電もCO2をほとんど発生しないが、安全性や使用済み核燃料の最終処分などの点で課題が多い。このため、自然から取り出す再生可能エネルギーへの期待が高まり、なかでも太陽光発電が世界各地で実用化されている。しかし、太陽電池には夜間に発電できないなどの弱点があり、さらなる普及の足かせとなっていた。その限界を超える未来のシステムとして注目されているのが、宇宙太陽光発電(SSPS)だ。

SSPSは、宇宙空間で集めた太陽光を地上へ送り、電気や水素として利用する発電システムだ。具体的には、地上約3万5900kmの静止軌道上に大規模な集光設備(反射鏡)と太陽電池を浮かべて、集めた太陽光エネルギーを電気に変換した後に、マイクロ波やレーザー光に変えて地上の受電アンテナ(レクテナ)で受電する。そのマイクロ波などを再び電力に変換して利用する。最大の利点は、天候などに左右されることなく、いつでも発電を続けられる点だ。地上での太陽光発電に比べて10倍近くも効率がよく、ベースロード電源になるとも期待されている。

SSPSの実現には、宇宙空間で効率よく太陽エネルギーを集める反射鏡や太陽電池などの技術、宇宙から地上へ安全かつ効率的にエネルギーを伝送する技術、そして巨大な発電設備を構築する技術を開発しなくてはならない。たとえば、地球上で100万kWの電力を得るには、直径2~3kmに及ぶ反射鏡及びソーラーパネルが必要になるといわれている。SSPSに使用されるマイクロ波は、生物や航空機に影響を与えるレベル以下のもので、受電設備の安全性を確保すれば地上に住む市民への影響はないとされている。

SSPSは、1968年に米国のピーター・グレイザー博士により初めて提唱された。このアイデアを実現しようと、同国ではNASAやエネルギー省などが検討を行ったが、財政難を理由に計画が縮小、先送りされてきた。一方、日本では、石油ショックなどの経験を踏まえて、脱化石燃料の一手法としてSSPSの研究が広く行われてきた。その水準は高く、送電設備の小型・軽量化などの分野で世界をリードしている。

2015年1月に政府の宇宙開発戦略本部が決定した「宇宙基本計画」には、SSPSの研究推進が盛り込まれている。現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心として、大規模なSSPSを実現するための研究開発が進められている。2015年3月には、電気をマイクロ波に変換して受電アンテナに送信する、地上での実証実験に成功した。これにより、SSPSは実用化に大きな一歩を踏み出した。

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