電気は私たちの生活に欠かすことのできないエネルギーだ。従来は火力発電所などで化石燃料の石炭や重油を燃やして電気を生み出していたが、地球温暖化を進める二酸化炭素(CO2)が燃焼時に発生するため、それに代わる新たな電力源が求められている。なかでも太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの期待が高まっているが、天候に左右されやすく電力供給が不安定な短所がある。こうした課題を解決する次世代電力網として脚光を浴びているのがスマートグリッドだ。
スマートグリッドは「賢い(スマート)」な「電力網(グリッド)」を意味する言葉で、電力網にIT技術を導入して電気機器などに関する情報の通信や制御を行い、電力の利用を最適化しようという考え方だ。その大きな特徴は、火力や原子力など従来からあった大容量で集中型の発電所と、ロスやCO2の排出量が少ない分散型電源との共存を図ることができることだ。また、電力供給の安定化や省エネルギーに役立つほか、送電事業者と利用者との間に双方向の関係が成り立つなどの利点もある。
欧米では再生可能エネルギーの導入拡大を図るため、スマートグリッドの普及に向けた動きが活発化している。EU(欧州連合)では、環境対策と電力供給品質の向上を両立させるため、スマートグリッドに早くから着目。約1億ユーロ(約160億円)をかけて研究開発や実証実験を進めている。一方、2003年に大停電を経験した米国では、2009年に誕生したオバマ政権のもと、景気刺激策としてスマートグリッド関連の政策に力を入れ、45億ドル(約4500億円)が措置された。また、米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)は同年3月、スマートグリッドの基準などに関する提案書を発表。再生可能エネルギー源やエネルギーの貯蔵システム、セキュリティなどに関する事項を提案している。
スマートグリッドの利用法として注目されているのがエコカーとの連携だ。電気自動車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などのエコカーには、電力を貯蔵するための電池が搭載されている。スマートグリッドを使えば、電力需要が低い時間帯に充電することができるだけでなく、近い将来、災害などの緊急時にエコカーの電池をエネルギー貯蔵庫として使用することも可能になるという。
日本では(独法)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、スマートグリッドについて日米の官民共同による実証実験を行うための準備を進めるなど、本格的な導入に向けた取り組みが行われている。