サイト内
ウェブ

「開発教育」 詳細解説

読み:
かいはつきょういく
英名:
Development Education

開発教育が対象とする社会問題は、貧困・飢餓、紛争・戦争、環境破壊、人権侵害など広範な分野に及ぶ。開発教育を日本の教育現場に広げるための活動をしているNPO法人の開発教育協会(DEAR)によると、開発教育の具体的な学習目標は大きく5つある。第一に、多様性の尊重である。開発を考える上で、人間の尊厳を前提とし、世界の文化の多様性を理解すること。第二に、貧困や南北格差など各地の開発問題の現状を知り、その原因を理解すること。第三に、開発と環境など、地球規模の課題が密接に関連していることを理解すること。第四に、世界のつながりの構造を理解し、開発をめぐる問題と自分たち自身との関わりに気づくこと。そして第五に、開発をめぐる問題を克服するために、自分自身が参加する能力と態度を養うことだ。

開発教育を実践する上で重要なのが、ファシリテーターの役割と、参加型学習だ。開発教育は、知識を詰め込むのではない問題提起型の教育方法をとる。そこでは、生徒一人ひとりが持つものを引き出し、グループの中で対話を起こし、教える者自身が共に考え合う姿勢が求められる。こうした役割を担う人をファシリテーターと呼ぶ。また、参加型学習の代表的な手法がワークショップだ。ワークショップでは、参加者がグループに分かれてテーマについて話し合い、そこから得た成果を発表して、全体の話し合いの場につなげていく試みだ。さらに、貿易の仕組みを疑似体験することで国際社会の現状を理解する貿易ゲームなど、ゲーム形式の学習方法もある。このほか、NPOなどが行うスタディツアーやイベントなども、広い範囲の人を対象とした開発教育である。

 海外では、オックスファムなどのNGOに専門のセクションがあり、開発教育担当スタッフが教師を対象に研修や教材開発などを行っている。また、イギリスでは、全国にある開発教育センターが地域での開発教育の導入と実践を支援している。全国のセンターは開発教育協会(DEA)によりコーディネート、支援されている。また、オランダのように政府が開発教育の普及に力を入れている国もある。

日本に開発教育の概念が本格的に紹介されたのは、国連広報センターとユニセフ駐日事務所、国連大学が1979年に開催した「開発教育シンポジウム」でのこと。その後、開発教育協議会(現・DEAR)などが中心となって普及活動が本格化し、各地でセミナーや貿易ゲームなどのワークショップが盛んに行われた。2002年に「総合的な学習の時間」が始まってからは、学校など教育現場でも実施されている。

DEARは、1982年に任意団体として発足。全国でのセミナー開催などを通じて担い手を育て、2003年にNPO法人格を取得した。開発教育に関する政策提言や世界各地の関係団体との情報交換、ネットワークづくり、調査研究などを行っている。また、全国国際教育研究協議会(JAFIE)は、教師を中心とした集まりだ。開発教育を日本の教育に根付かせるために、各地の学校で行われている研究や実践活動を収集、発信している。外務省や国際協力機構(JICA)も開発教育の普及に取り組んでいる。さらに、2005年には開発教育の専門学校も設立された。

一方、2005年には、国連の「持続可能な開発のための教育の10年」(ESDの10年)キャンペーンが始まった。これを機に、環境と開発のあり方や、その教育に関する考え方や手法が再構築されつつある。開発教育は、新たな広がりと展開を見せている。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。