企業などの組織が、経営や運営を通じて環境保全に取り組むにあたって、環境方針や目標などを自ら設定し、これらの達成を目指して取り組む一連の流れのことを環境管理という。そして、環境管理を事業所や工場などで実現していくための体制や仕組みが、環境マネジメントシステム(EMS)だ。代表的なEMSとして、国際規格のISO14001や、環境省によるエコアクション21などが有名だ。一方で、NPOなどが策定したEMSもあり、なかでも全国規模のEMSとして知られているのが、KES・環境マネジメントシステム・スタンダードだ。
KES・環境マネジメントシステムは、京都を拠点に持続可能な社会の実現を目指して活動している「京(みやこ)のアジェンダ21フォーラム」が中心となって、2001年4月に始まった。当時、大企業などでISO14001の取得が進んでいたものの、中小企業や地場産業にはやや敷居が高い規格だった。このため、わかりやすくて比較的安いコストで取り組むことのできる、中小企業や地域における環境改善活動のツールとしてのEMSが必要であるという認識から、KES・環境マネジメントシステムが生まれた。「KES」の名は、Kyoto(京都)、Environmental(環境)、Standard(規格)の頭文字を合わせたものだ。その背景には、京都議定書発祥の地であるという京都の事業者や市民の気概がある。
KES・環境マネジメントシステムは、企業価値を高める環境経営を普及するとともに、企業などの組織が地域と共生する機会を提供することによって、さまざまな組織の環境改善活動を促進することを目的としている。運営組織として2007年4月にNPO法人KES環境機構が設立され、審査・登録を実施している。全国における登録件数は、2011年11月末現在で3781件あり、京都府内の事業者が1465件と一番多い。これに、兵庫県、大阪府、東京都、宮城県などが続く。業種では、製造業が64%でいちばん多い。
KES・環境マネジメントシステムは、環境改善活動を計画(Plan)、実施(Do)、点検(Check)、是正(Action)の流れに基づくPDCAサイクルによって、継続的に改善し続ける仕組みだ。登録の種類としては、環境問題への取り組みを始めた「ステップ1」と、将来的にISO14001の認証取得を目指す「ステップ2」の2段階がある。登録の有効期間は1年間で、書類審査と本審査、そして年1回の確認審査を受ける必要がある。審査を行うのは、ISO14001審査員補以上の有資格者などで、同機構が認めた審査員及びコンサルタントだ。また、北海道から九州までの全国各地に同機構の協働活動組織があり、審査・登録活動を行っている。