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「大切なのは“正直さ”」車業界の透明化に挑む中野優作のリーダー論に、こじりんが涙した理由とは?【NMB48・小嶋花梨の“最強キャプテン”への道】

  • 2024年2月28日
  • Walkerplus

大阪・なんばを拠点に活動する「NMB48」。かわいらしさと親しみやすさを兼ね備えたアイドルグループとして、メンバーたちはバラエティにモデル、グラビアといったあらゆる分野でその才能を発揮し、多方面で活躍している。

そんなNMB48の2代目キャプテンを務める“こじりん”こと小嶋花梨さんは、個性豊かなメンバーたちのまとめ役として日々奮闘中。自身のYouTubeチャンネルでは、企業の社長やビジネスシーンで活躍中の人物に自らインタビューを行い、「リーダー論」を学んでいる。

本連載「NMB48・小嶋花梨の“最強キャプテン”への道」では、こじりんがリーダーとして成長していく姿をレポートしながら、ビジネスシーンにおいて役に立つエピソードをお届けする。語られる内容はもちろん、こじりんが自らリサーチして投げかける質問にも注目だ。

第3回のゲストは、もともとは中古車販売大手・株式会社ビッグモーターのトップセールスマンで、現在は「株式会社BUDDICA(バディカ)」の代表取締役である中野優作さん。YouTubeチャンネル「中野社長 / クルマの通販『BUDDICAダイレクト』」を見たことがある人も多いかもしれない。そんな中野さんに、こじりんがリーダーとしての在り方に迫る。撮影中に見せた、こじりんの涙の理由とは…?


■自分で自分を売り込むアイドル業界にも通ずる?中野さんの「営業術」
こじりんは、2023年8月31日に発売された中野さんの著書『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』(幻冬舎)を読む前、「車や中古車業界に興味がない自分でも得られるものがあるのかな?」と少し不安だったそう。しかし、読んでみるとアイドル業界にも共通する点が多く、学びになることが多かったという。そして、書籍を読んだうえで中野さんに聞いてみたかったことがあるようだ。

小嶋「さあ、今回は株式会社BUDDICAの代表取締役である中野優作さんにお越しいただきました」

中野「よろしくお願いします。ありがとうございます!」

小嶋「どんなお話を伺いできるのかすごく楽しみです。きっとこの記事を読んでいる人の中には『中野さんのことはもう知ってるよ!』という人もたくさんいらっしゃると思うんですが、私から中野さんのことをギュッと説明させていただいてもいいですか?(笑)」

中野「大丈夫ですよ(笑)」

小嶋「建設業をご経験後、株式会社ビッグモーターに就職し、わずか1年で店長、営業本部長を務めるなど結果を出し続け、その後ご退職。2017年に株式会社BUDDICAを設立したという経歴をお持ちです。これだけじゃあまり何も伝わらないかもしれませんね、申し訳ないです…」

中野「いえいえ、ありがとうございます!」

小嶋「昨年出版された『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』、私も読ませていただきました」

中野「ありがとうございます。びっくりしました!読んでくれてるって聞いて」

小嶋「この本を読むと、車の売り方だったりとか、中古車業界で働いてる方や実際に今働かれている方にとっては共感できることがあると思うんです。ただ、私はそもそも車への関心がなかったりとか、車業界が一体どんなものなのかっていうのも知らないなかで、『ちゃんと読み込めるのかな』と思いながら読ませていただいたんですけど、アイドル業界ともけっこう共通する部分がありました」

中野「え〜、うれしい!」

小嶋「今日はそのあたりのお話をお伺いしていけたらなと思います。特に『営業術』と『マインド』についてお伺いしたいです」

中野「そういったテーマで!最高ですね」

小嶋「あっ、本当ですか?(笑)。じゃあ、早速お話お伺いしたいと思います!『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』でもたくさん書かれていたと思いますが、営業をするうえで大切なことはなんでしょうか?」

中野「この記事を読む人は“お客様”の立場になる人が多いと思うので、その人たちに向けてお話するとすれば、まず僕にとっての営業とは『選択肢の提供』です。営業というポジション、ワードから想像すると“ガンガン売る人”みたいなイメージですけど、僕は“選択肢を示して選んでもらうだけ”なんです。そして今、それを自分の会社でも実践していますね」

小嶋「でも、そのこと自体がけっこう難しいですよね?まず相手のことを理解しないといけないですし…。それこそ本にもありましたが、その人がどんな生活をしていてどんな環境にいるからこういうのが必要だろうとか、そういう“分析力”みたいなものが必要なのかなと思ったんですが」

中野「おっしゃるとおりなんですけど、分析するというよりは“一緒に考える”というイメージですね。ちなみに、花梨さんは車持ってますか?」

小嶋「持ってないです!」

中野「今は自分の車はいらないと思うんですけど、誰かの車に乗って出かけることはありますよね?」

小嶋「はい、あります!」

中野「あ、でも、アイドルだからデートはできないか…(笑)。じゃあ、たとえばの話として『理想のドライブデート』ってありますか?」

小嶋「あります!大きすぎず、小さめの車でドライブしたいですね」

中野「遠出したいタイプですか?」

小嶋「遠出がいいです!時間をかけて山の奥まで行って、きれいな場所で星を見たいです」

中野「おぉ!最高じゃないですか!夜景も見に行きたいですよね」

小嶋「行きたいです!」

中野「オープンカーで行って、天井を開けたりしてね」

小嶋「あっ、そんな方法があるんですね(笑)」

中野「“一緒に考える”というのは、こうやって一緒に将来のことを話したりするようなイメージです。ドライブデート中に『寒いね』って言って暖房つけたり、好きな音楽をかけたり…みたいなことを今想像したじゃないですか?」

小嶋「はい、まさに想像しました」

中野「僕、今、花梨さんの『脳』を使ったんですよ」

小嶋「えっ」

中野「まだ家庭を持っていないから、今想像してもらったのって2人きりのドライブデートだったじゃないですか?」

小嶋「たしかに!妄想でしかなかったです(笑)」

中野「こちらで勝手に想像するよりは、こうやって聞くほうがよくて。花梨さんは未来の想像をしたと思うんですけど、このテクニックは前頭葉に働きかけるので、ドーパミンが出て楽しくなるんですよ」

小嶋「一瞬で楽しくなりましたね(笑)」

中野「僕も楽しいんで、いつもこんな感じです!そこから、『こんなのもありますよ』『どっちが好きですか』と、選択肢を提示します。これが、僕の思う営業のほぼすべてですね」

小嶋「今の会話で私、完全に営業されてましたもんね…」

中野「たぶん、一般的に想像される営業って、商品のスペックを説明して価格が安いのを提示して…みたいなものですけど。世の中の営業は、そういうものか、僕が実践した方法のどっちかだと思います」

小嶋「お客様の思考に合ったことを提案していくんですね。本を読んでいて、最初は営業というものは私たちアイドルとは接点のないものだと思っていました。でも人への接し方の部分で言うと、私たちは“自分が商品”であって、ファンの方に好きになっていただくお仕事なので、ある種、自分自身が営業パーソンだなって思ったんです」

中野「たしかにそうですね!昔あった総選挙とかだと明確に票が入ったりするし、自分に値札がついてるようなもんですよね」

小嶋「そうなんです。アイドル一人ひとりのファン層も違ったりするんですが、それって、ファンの方の好きなものや求めているものに自分が当てはまっているからじゃないですか。自分自身を営業できるようになることで、私自身にもファンがつくんだなって思って。本にある“信頼を得ること”や“周りからの見られ方”という部分は、アイドルと似たものがあるなと感じたんです」

中野「僕がさっきやった方法って“物を売る手法”じゃないですか。やっぱり営業って2つあると思っていて、1つはその人の雰囲気や話し方など、花梨さん本人の魅力によるもの。もう1つは、花梨さん自体の強みを生かした営業で、これって表裏一体なんですよね。ただ、花梨さんの場合はそれを全部自分でやっていかなければいけない難しさがありますよね?」

小嶋「そうなんですよ。やっぱりそれができるかできないかで、アイドルとしての差は開くなって思っているんです。私たちは『自己プロデュース』と呼んでいるのですが、営業にも似たような部分があるのかなって思います」

中野「めちゃくちゃあると思います!48グループの成り立ちも、『票を集めて、自分で票を取って勝ち上がってこい』というスタンスだから、めちゃめちゃ競争原理が働いて、なんならちょっと営業会社っぽいですもんね」

小嶋「そのとおりだと思います!」

中野「うまくできなかったら選抜になれないとかもあるでしょうし、怖い世界ですね」

小嶋「そうですね。私自身も最近よく思うのが、AKB48さんが18年前ぐらいにできて、当時はSNSもここまで発展していなくて。今と環境が全然違ったし、それこそまだプロデュースされていたほうだったのかもって」

中野「たしかに。そっか、最初はね」

小嶋「でも今の時代、プロデュースされている人ってあんまりいなくて、どちらかというと自分から積極的に何かをすることが増えているように感じます」

中野「なるほど!じゃあこのインタビュー企画もそうですか?」

小嶋「そうです!マネージャーさんと私の2人で組み立ててやっているので、決められたことをやってるわけではないんです」

中野「え、それはすごいね!営業戦略でも『こういう人に何か売りたい』とか、いろいろなやり方がありますけど、そこも自分で考えていくんですね。なるほど、おもしろい!」

小嶋あ「自分が今そういう環境でやらせていただいているからこそ、何か通ずるものがあるんだなって感じられたんだと思います!」

中野「うれしい!ありがとうございます」

■「優れるな、異なれ」“個”の時代に中野さんとこじりんがとった行動
AKB48グループはじめ、男女問わず多くのアイドルが活躍する、まさに群雄割拠の時代。そのなかで頭角を現すのは並大抵のことではなく、こじりんも常に自分の強みや個性を模索しているようだ。それは中野さんが身を置く中古車業界でも同じだそうで、著書の中でも「“個”を出していくこと」を提唱している。

小嶋「あと、本の中で『10年前と今とでマーケティングも変えなきゃいけないだろ』というお話をされていたと思うんですけど、そのお話もお伺いしたいです」

中野「“個”の話ですよね?」

小嶋「そうです!」

中野「これは車の業界だけじゃないと思うんですけど、SNSが普及したことで『人に紐づくようになった』と感じます。たとえば料理でも、ミシュランの星を獲得した店のレシピが手に取れるようになったし、車で言うと品質などすべてが丸裸にされたので、差がなくなったんです。なので、“誰がその物を扱っているかによって選ばれる時代”が来たんだな、と。それこそ僕は、音楽を聴くときも『路上ライブで頑張ってたんだなぁ』とか、その人のストーリーも思い浮かべながら聴くんですよ。だから僕、ドリカムの結成秘話とか好きなんですよね」

小嶋「なるほど…」

中野「何かを聴く側や見る側は、そこまで考えることもあるじゃないですか。なので、そこをどう出していくかがすごく大事なんです。僕たちが扱うのは車なんですけど、たとえば家族連れの人たちがミニバンを買うとして、何も情報がなければ、実際にミニバンに乗っている人に相談するほうが簡単じゃないですか。それも含め、普段の在り方だったり、ほかの人と違うところ、つまり“個”を出していったほうがいいと思いました。最近僕たちは車を通販で売ってるんですけど、SNSを使うとおもしろいんですよ。ちょっと、長く喋ってもいいですか?」

小嶋「大丈夫ですよ!(笑)」

中野「たとえば、イケメンが5人いる店があったとして、1人普通の見た目の人がいるとしますよね。僕はこの5人がよく物を売れると思っていたんですけど、通販で買う人の中には、その普通の見た目の人を選ぶ人も一定数いるんです。なぜかというと、『意識が高いゴリゴリ来そうな人に売られたくない』みたいな。ちょっとニッチだけど、意外とそこに集中するんですよ。こういうことって、インターネットの世界ではすごく多くて。ニッチな層をサッと取れるので、僕はよく『優れるな、異なれ』と言っています。営業においては、『よそと一緒じゃなくて、“自分”という人となりを表に出すに足るだけの人になれ』っていう話をよくしていますね。これは僕もそうですし、そういう意味で、アイドルも変わっていかなきゃいけないって思いますね」

小嶋「本当にそうだと思います」

中野「今、アイドルっていっぱいいるじゃないですか!」

小嶋「もうわんさかいます!(笑)。だから、顔がかわいいとかダンスがうまいとか歌がじょうずとか、それだけじゃ、もはや何もないのと一緒なんですよね」

中野「そうだよね。だからみんな“個”を出すしかないんですよね」

小嶋「でも、それが苦手な人もいっぱいいると思うんです」

中野「ちなみに、花梨さんは何か工夫していることはあるんですか?」

小嶋「私自身は、このYouTubeチャンネルやウォーカープラスでの連載も、自分の在り方だなとは思っていて。YouTubeで一番最初に出した動画が『グループとの向き合い方』みたいなもので、そこで私たちのリアルな姿を初めて出したんですね」

中野「あれ、めっちゃよかったですよ!泣きましたもん」

小嶋「ありがとうございます。あれは2年前とかだったんですけど、ファンの方の中には、『こんな人が好きで、こんな人でいてほしい!』っていう憧れだったりとか、そういった“理想のアイドル像”を持ちながら応援してくれる方のほうが多いと思うんです。そうなると、やっぱり自分の弱い部分やダサい部分を見せないようにすることが正解みたいになるんですよね」

中野「たしかにそういうイメージありますね。でも、あの動画ではそれを出しちゃったんですね?」

小嶋「そうなんです。そのときは、なんなら批判のほうが多かったです」

中野「えっ、そうなんですか?」

小嶋「私からはそう見えました。コメントとかも見ていましたけど、やっぱり批判も多かったし、自分のファンの方だけでなく、グループ全体を巻き込んでしまったことだったので、やっぱりそういう姿を見たくない人だっているんだなって。でも、世間が思うアイドル像をやり続けていても“48グループの看板を背負っているグループ”でしかなくて、NMB48が本当にやろうと思っていることやメンバーの思い、リアルな部分は絶対に届かないだろうなっていう思いで始めたことなので、後悔は全くしていません」

中野「めちゃくちゃよかったですけどね!『頑張れ』って思いました。僕はそのほうが絶対いいと思いますよ。批判もあったけど、動画は消さずに残してるんですよね?」

小嶋「はい。あれはもう、自分にとっての決意だったと思っているので」

中野「なるほど。ということは花梨さんも“個”を強化しようとしているってことですね?」

小嶋「完全にそうですね(笑)。応援してくれているファンのみなさんの不安を煽るわけではないですけど、やっぱりアイドル卒業後のことを考えたら、その看板がない自分をしっかり確立しておかなきゃいけないですからね」

中野「そのために僕の本を読んでもらったり、そういうことから始めてるんですね」

小嶋「そうです!」

中野「めちゃくちゃ筋がいいと思いますけどね」

小嶋「え〜!そうですか?私は知識も全然ないですし、今後本気でやっていきたい大きな軸がはっきりあるわけではないので、今いろいろな人にお話を聞いて、私のようにまだ夢が確立できていなかったり、ずっと何かをやりたいのに何をやればいいのかわからない人に刺さればいいなって」

中野「うん、わかる。みんなそうですよね。手数を打ちまくるしかないですもん。けど、その姿勢がすごくいいですね」

小嶋「そんな人たちの共感を得られたら…って言うとおこがましいですが、一緒に学んでいくみたいなことができたらな、という思いもあります」

中野「めちゃくちゃいいですね!素晴らしいです」

小嶋「なので、グループ全体を考えても、10年前はそれでよかったかもしれないけど、今だからこそ変えるべきことってたくさんあるのかなって、ずっと思ってるんです。私はマーケティングも詳しくはないんですけど、そういった側面からアプローチしたらグループを変えていけるんじゃないかって思うんです」

中野「そっか、セルフプロデュースしていくわけですもんね。うわぁ、すっげぇ…。僕、あの動画って『マネジメントそのものだな』と思ったんですよ。あれって花梨さん発信で『やろう!』って呼びかけたんですもんね」

小嶋「はい、そうです。ちゃんとできているかどうかはわからないですけどね(笑)」

■こじりんの「申し訳ない」という気持ちと、過去を清算する方法
【本当に申し訳ない事をした】 (「クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言」本文より)

これは、中野さんがビッグモーターに勤めていた時代に関わった人たちに向けた、懺悔の言葉だという。この一文を読んで、NMB48のキャプテンを務めるこじりんにも思うところがあったのだとか。

小嶋「この本、『本当に申し訳ない事をした』という一文から始まるじゃないですか?」

中野「うん、謝罪からね(笑)」

小嶋「私もあの動画を出したときに、本当によくない自分だったなって思うんです」

中野「え、そうなんですか?」

小嶋「あの時期は本当に、今でも思い出すとしんどかったなって思うんです。…すみません」

中野「泣かせてしまった!こちらこそごめんなさい!言いにくい質問しちゃったかもしれない」

小嶋「違うんです…!今は現実を受け入れられるようになったんですが、それはすごく残酷だなって思うしそんな自分を悲しくも思うけど、あの時期は本当に『何とかしてでも変えたい』という気持ちが先走ってしまって。今はあの動画の自分は恥ずかしくて見れないんです」

中野「いや、めちゃくちゃいいと思いますよ。動画の中でもみんなに謝ってたじゃないですか。それができる人ってなかなかいないんですよ。メンバーみんなの意見を聞いてあげて、『これまでごめんね』って話せていたじゃないですか。あれができるリーダーって本当にいないですから、泣かないでくださいよ」

小嶋「ありがとうございます。今、キャプテンになって5年が経つんですけど、何年やっても言い続けてきた夢をなかなか叶えられなくて、ずっと『申し訳ない』と思ってしまいます」

中野「だから本にある『申し訳ない事をした』っていうワードが気になっていたんですね」

小嶋「そうなんです。私は全然結果を出せていないのでアレですけど…(笑)」

中野「めちゃくちゃ結果出してるじゃないですか!」

小嶋「いやぁ(笑)。中野さんは当時を振り返って『申し訳なかった』って言葉が出てくるのかもしれないですけど、結果がついてきていたので私とまったく同じ環境ではないと思いますが、やっぱり過去の自分を振り返ったら私も『申し訳ない』って気持ちがあって」

中野「そっか、マインドみたいな部分を今も清算しきれてないんですね。じゃあ、その話をしましょうか!たぶん同じような悩みを持っている人がめっちゃいると思うんですよ。過去の失敗や責任を背負って前に進みづらくなっているかもしれないですが、過去のことは消せないですからね。じゃあ、僕が過去を清算した過程を含めて話しておきましょう。まるで何にもなかったかのように振る舞っている理由みたいなものを(笑)」

小嶋「はい(笑)」

中野「僕もYouTubeやXをやっているからもちろんアンチがいて、『ふざけんな!』という言葉は何百何千の数来てるんです。『おまえも元ビッグモーターだろう。ふざけんな!この元凶を作ったやつじゃないか』っていう人もいますし、『お前、なんであのとき止めなかったんだ!』みたいなことを言われるんですね。それに関しては、本当にもう謝るしかないというか、止めようと思ったけど、僕は止められなかった人間なんで。『尻尾を巻いて逃げた』『おいしいところだけ持っていった』って言われるんですけど、本当にそのとおりだと思います。そういう声もあるってわかっていたし、出ても叩かれるってわかっていたので、僕、40歳まで勇気出なくてSNSをやってなかったんです(笑)」

小嶋「え!そうなんですか?」

中野「まだSNSを始めて1年ちょっとなんですよ!別にその当時はビッグモーターもこんなことになってなかったし、やましいわけでもなかったんです。表に出るようになって、SNSのフォロワーが増える様子を見て、下手したらBUDDICAが潰れるようなことになるかもしれないリスクはあったけど、うまく立ち回ればファンがつくかもしれないと思いました。正直怖かったですけどね。『元ビッグモーターの幹部』ということを一生背負っていかないといけない、という恐怖がずっとありました。ただ、これは本にも書いているんですけど、それを言ったことでプラスになる人がいるんだったら、やっぱり出たほうがいいと思ったんです。『今さら』って言われるけど、それはそのとおりなんです。でも、今からできることに、未来に集中することにしたんです」

小嶋「そうだったんですね」

中野「ビジネスマンに多いんですよ。過去に失敗しているから、大きな商談を飛ばしてしまったから、また迷惑かけちゃうんじゃないかって思い切れないんです。逆に言うと、僕ら上司や経営者の立場だと、1回失敗したことがある人のほうが仕事を任せやすいんです。失敗したことがない人よりは1回失敗したことがある人のほうが当然うまく立ち回るだろうし、慎重にやるでしょうから。むしろその人はもう1回失敗してるんだから、『もう次は失敗しません!』って言ってやってほしいんですよね。それでできなかったとしてもいいんですよ。そういう人のほうが成功確率が高いんで。だから、過去に失敗や責任を感じるよりは、理想の未来だけに集中するのがいいと思います。僕はいまだにけっこう叩かれますけどね(笑)」

小嶋「まだ叩かれるんですね…」

中野「それはもう全部ミュートです(笑)。とはいえ、花梨さんの場合、そういう対処ではいけないこともあるんでしょうけどね」

小嶋「でも、正直周りの反応にビビっているというのもあると思うんですけど」

中野「怖いですよね」

小嶋「でも、こうやって涙があふれるってことは、まだ夢を実現したい気持ちがあるってことなのかなと思いました」

中野「その涙は、花梨さんがキャプテンとして責任を感じている証ですよ。メンバーの子たちにもめちゃくちゃ伝わっていると思います。僕はよく、努力や頑張りを定量的に測る方法についてYouTubeで発信しているんですけど、頑張っているから涙が出るんです」

小嶋「えっ、そうですか?」

中野「うん。キャパシティを超えて頑張って、そのキャパを超えた分が涙として出ているんで、それは素晴らしいですよ。頑張っている証ですから、自信持って!」

小嶋「ありがとうございます。自分の今の立ち位置やいろいろなことを考えて、久しぶりに涙が出ました。なんか自然と自分の気持ちを閉ざしていた気がします。たぶん、今はもう自分の気持ちを出しすぎないことが正解かもって考えて、閉ざしていたんだと思います」

中野「全部出しちゃいましょう。苦しさもあるんでしょうけどね」

小嶋「ありがとうございます。けっこう出ちゃいましたけどね(笑)」

■自分の“弱さ”を出していく!中野さんが提唱する「リーダー」論
小嶋「本を読んでいて、中野さんの人間性やマインドがすてきだなと思いました。先ほどもお話した冒頭での『申し訳ない』から始まり、途中でも謝っている一文があったりして、常に正直でいるような気がしたんですが、そうなれたきっかけはありましたか?」

中野「きっかけね。たしかに『なんでそんなに全部出せるんだ』って言われますね。出せない人多いんでしょうね」

小嶋「はい、出せないと思います(笑)」

中野「いつからだろう。でも、大人になるにつれて徐々にじゃないですかね。もともとは嘘つきというか、盛り癖があるんですよ。これ、ある程度優秀な起業家の条件だと思っていて。“嘘はつかないギリギリのラインでやる”みたいな」

小嶋「え、どういうことですか?」

中野「『BUDDICAで流通革命を起こす』と宣言して実行に移していくんですけど、最初はプレハブで『革命だ!』って僕ひとりで叫んでたんです。これ、ちょっと盛ってるんですけど(笑)。こんなふうにとにかく宣言してから実行するタイプなので、現実とかけ離れてることもあります。たとえば、ビッグモーターに入社したときに『最短でトップセールスになる!』と言って、入社した月にそれを達成するって宣言したんです。で、その月には達成できなかったんですけど、次の月もまた同じことを言うんですよね。それで、結果的に達成するんです。でも宣言した時点では嘘をついてますよね。大事なのは“言った言葉に自分を追いつかせること”なので、だから僕は全部言うようにしてるんですよ。そうすると自分の失敗とかも全部言うようになってきて、言えば言うほどコスパいいんですよね(笑)」

小嶋「なるほど!」

中野「ちなみに僕、ADHDの診断を受けていて。めちゃくちゃ忘れ物するし、今日も名刺入れ忘れてきたし(笑)。電車も50%の確率で乗り越したりして、とにかくミスりまくるんですよ。遅刻もしまくるんですけど、それを取り繕って萎縮するよりは、常に言い続けたら許してくれるかな、みたいな。もちろん、何とかしようとは思ってるんですけどね(笑)。だから、『できない、弱い、助けてくれ!』と声に出します。それこそ僕、エクセルが苦手なんで、『うわぁ、できない』って言ったほうが助けてもらえるし、逆にできることも言うようにしています。花梨さん的には思っていたような答えじゃないですよね。誠実で人間性が素晴らしいって話ができたらよかったんですが、実は打算的にやってる部分もあるっていう(笑)」

小嶋「いやいや、ありがとうございます!けど、いわゆる“社長”のイメージで言うと、弱いところは見せない、失敗は見せない、みたいな感じがなくはないのかなと思うのですが…」

中野「というか、大体それが“いいリーダー”とされていますよね(笑)」

小嶋「そういった世間のイメージがあるなかで、ここまでさらけ出せるはいことってやっぱ難しいのかなって」

中野「そっか、花梨さんも世間的なイメージのほうのリーダー派だったんだ」

小嶋「そっち派でしたね」

中野「それはそれでいいと思いますし、リーダーにもいろいろあると思うんですけど、漫画の『ONE PIECE』のルフィって知ってます?」

小嶋「もちろんです!」

中野「どちらかと言えば、僕はルフィに近いリーダーなんですよ。だから『俺は航海術は持ってねえんだ』『飯も作れねーし』みたいに、ルフィは弱さを吐露するんです。時々、泣いたりもしてね」

小嶋「たしかに…!」

中野「僕もみんなの前で泣いたりするし、普通に感情高ぶったりテンション上がりまくったりするんですよ。それで、できることとできないことをセットで言うと『誠実』と思ってくれるし、助けてくれる人が集まってくれるんです。今、うちは社員がどんどん増えてきてるんですけど、必要なときに必要な人が増えていくんですよね。こんな感じで会社を運営しています。だから僕ね、Xでよくクレームが入るんですよ。SNSをやっている車屋ってけっこう珍しいからクレームが来るのも当然のことですけど、それも全部表に出すんです。『こういうことがあって本当に申し訳ないから、すぐリカバリーさせてくれ!』と言いながら、やり取りをすべて出します。普通は隠そうとするじゃないですか。だけど、出したほうがクレームを出した人の傷も癒やせるし、ほかの人にも見せられるし、『こんなことやらかしてんだ』っていうクレームでも、表に出したら『正直だ』って言ってもらえるんですよ。これが商売じゃなくても、人間の弱さって表に出したら案外共感してもらえるっていう」

小嶋「『ピンチです!』って言ったほうがいいんですね。まるで失敗のない会社を装っているよりそれを見せたほうが、その嘘偽りのない姿が信用となって、そこにファンがつく」

中野「なかなかできないかもしれないけど、コスパはいいですよ!もうそのまま出すだけなんで、『これやろうかな、いややっぱダメだな』とかないですからね。それをどう見えるかを考えてしまうとけっこう大変なんで。だから僕は、Xによく『またやってしまった』ってポストしています(笑)」

小嶋「(笑)。正直ですね!」

中野「ただ、そのへんもアイドルは難しいところありますよねぇ」

小嶋「どんな失敗かにもよりますけどね(笑)」

中野「たとえば、僕の自宅の鍵は2つあって、スマホで操作できる鍵とリアルな鍵があるんですけど、スマホでロックできるんで、リアルな鍵を忘れても部屋は出られるんですよ。でもスマホを30%くらいの確率で家に忘れるんです。だから誰かが入るときに一緒に入るんですが、その鍵がないとエレベーターにも乗れないんで階段で戻ることになって、それがもうつらい(笑)。『なんで俺はこんなにも忘れるんだ!』って思いますね。あらゆる対策をするんですけど、それでも忘れちゃって。でも、これを表で言うと『かわいい』って言ってもらえるんです」

小嶋「たしかに(笑)。ちょっとお茶目というか」

中野「あと、これはリアルな話ですが、GoogleマップにあるBUDDICAの評価が良すぎたんで、ちょっと調べたんですよ。そうすると、『サービスがよかった』っていうのもあったんですが、身内のコメントもあったんですよね。これも『こんなことがあったので、消させました』ってXでポストしたこともありますし、社員の目の前でお客様にレビューを書いてもらったりしていたので、そういったことをやめましたって発信したら『すげぇ』ってなりましたね」

小嶋「それはなりますよね!」

中野「でも放っておいたら、社員や僕らにもずっとやましい心があるし、『評価が良すぎるだろう!』って言われたときに反論できないんで。今でも言われるんですけど、こうして清廉潔白にすることで反論できるようになったんで、だからやっぱり『コスパがいい』っていう考えですかね。でも、アイドルだとこういうところは難しいですよね。アイドルって日本語で『偶像』って意味でしたっけ?」

小嶋「はい!そうですね」

中野「気になっていたんだけど、NMB48のメンバーの中で、その偶像のアイドルをやりたい人と、もうちょっと自由にやりたい人ってどれぐらいの割合なんですか?」

小嶋「どうでしょう…。7:3くらいですかね。偶像のアイドルでいたい人が7で、自由にやりたい人が3って感じでしょうか。もしかしたら8:2くらいかもしれません。私自身、最初はアイドルになりたかった人ではないので、そもそもNMB48に入った段階からモチベーションが違うかもしれないですけど、アイドルになりたくて入ってきたメンバーは偶像のアイドルを目指しているケースが多いと思います。ただ、それが間違いではないと思うんですよ。それを求めてるファンの方もいますし」

中野「なるほど、それはマネジメントが大変だ(笑)」

小嶋「そうなんですよね。めっちゃ難しいです」

中野「僕たちみたいな組織だったら、同じ性質の人たちが集まってくるじゃないですか。だけど、8:2で割れるってなると難しいよね」

小嶋「そうなんです。全員一緒の方向を向くようにしたりとか、マインドをそろえるのはやっぱり難しくて…。そこは現実的に無理かなって思ったりしています(笑)」

中野「なるほどね」

■“謝れること”と“開き直れること”はリーダーの大切な素質
小嶋「じゃあ、逆に正直であるがゆえに苦労したことってありました?」

中野「たぶんあるんですけど、僕、覚えてなくて。『すぐ謝れるようにしておく』のが重要で、正直、綺麗事ばっかり言ってるし言い切っちゃうんで、間違った判断もするし、有言実行できなかったりするんですよ。そのときは『ごめん』って謝るようにしています」

小嶋「え、それだけでOKになるんですか?」

中野「絶対OKになります!『ごめん!やっぱ無理!』みたいな。今、僕が着ているこのパーカーやTシャツ、いろいろな人から『欲しい』って言われるんですけど、ずっと売らなかったんですよ。だけど『アパレルやります!』って言って、みんな喜んでくれたんです。数百万ぐらいかけて作ったんですけど、やっぱり売るのはやめたんですよ」

小嶋「え!何でやめたんですか?」

中野「やめた理由としては、『やっぱよくないな』と思ったんです。おそらく全部売れるし、儲かると思ったんですけど、『これを着てビッグモーターに行って値引き交渉してやる』みたいなアンチもいたんですよね」

小嶋「うわぁ、なんか嫌ですね。悪質…」

中野「そうすると、傷つく人もいるだろうから売るのはやめたんですけど、そうしたらそりゃブーイングが来ますよね。だけどそのときも『ごめん!』って謝りました。『数百万損するけどやめます』って言ったらそのポストが盛り上がって、『その判断ができる人すごい』って逆に褒められるっていう(笑)」

小嶋「意外な反応が返ってきたんですね!」

中野「経営者で謝れる人って、けっこう少ないじゃないですか。僕は何かあったらスライディング土下座するぐらいの勢いで即謝ります。もちろん、謝る必要がない場面では絶対にしないですけどね。意見が変わったときや、実現できなかったときは謝るようにしています」

小嶋「それだけで全然違いますし、それも結局は『正直』ってことですもんね!」

中野「あと僕、本当に言うことがコロコロ変わるんですよ。昨日言ったことでも今日変わっていたりするんですよ。でも、昨日と今日で状況が変わることってあり得るじゃないですか?」

小嶋「ありますね」

中野「みんなから『言うことがコロコロ変わって一貫性がないやつ』って言われそうだなと思ったんです。そこで、うちでは『変わらないことは変わり続けることだ』って言ってるんですよ。これで完全に正当化しましたね。ただ、『言ったことを正解にする』って決めているから、自分の発言にあんまり責任を持っていないだけなのかもしれないです(笑)」

小嶋「えぇ、そうなんですか?(笑)」

中野「花梨さんの場合は、発言が残っちゃうから難しいですよね」

小嶋「いえいえ、私もけっこう適当な人間ですよ(笑)」

中野「でも、開き直ることは大切だと思います。『ごめん、あのときはそう思ったけど、今は違うんだもん』っていうね(笑)」

小嶋「そうなんですよね。『大変でも正直で乗り切る』というのが、答えな気がしました!では、これもザックリなお話になるかもしれないですけど、営業に限らずお仕事をするうえで大切なことってなんですか?」

中野「僕たちは仕事の定義を決めていて、もちろん仕事とはお金を稼ぐことなんでそれは当たり前なんですけど、それを『スコア』と呼んでいます。そのうえで、僕たちの仕事の定義は『人々の笑顔を増やすこと』と言っているんです。綺麗事かもしれないけど、人の笑顔を奪うことだったり働く人が苦しくなるようなことをして稼ぐのは仕事じゃない。うちではそういうことはやらないって決めています。とはいえ、相手がいる仕事じゃないですか。花梨さんだったらファンの人がいたり。体調が悪くて仕事がつらいときもあるけど、『楽しい仕事はない、仕事を楽しくする人であろう』とセットで言っています。だから、うちの社員って大変な仕事とかがあると『チャンスや!』って言うんですよ」

小嶋「すごい!それ、めちゃくちゃいいですね!」

中野「大変なことがあっても対処するしかないので、自分たちでそういうマインドでいるようにしています。難しいんですけどね。やっぱり言葉が思考を作ると思うので、言葉の質を上げていくことを大事にしています」

小嶋「そういう考え方がみんなに広がっていくと、チームの空気感や居心地などがすべてが変わっていきそうですね。自分も、そういうふうにやってみたいです」

中野「めっちゃいいと思います!たとえば、5人ぐらいで暗いムードで『どうする?どうする?』っていう空気になっているときに、事情を知らない箕輪さんみたいな人が『何やってんの!』って入ってくると、電気がついたように明るくなるじゃないですか。そうすると『まぁ、なるようになるか!』って思いません?要は、それが多数派になればいいので、うちではそういうふうになるように無理矢理やってますね(笑)」

小嶋「私は、そんなに計画的ではないのかもしれないですけど、自分の中で意識してることがあって。NMB48は全員で約60人いるので、チームが3チームに分かれているんです。なので1グループ12人くらいいるんですけど、2023年秋にそのチームが新たに結成されたので、メンバーが一気に変わったんですね。よく顔を合わせるメンバーがいなくなったり、今まであまり接することのなかった7年ぐらい離れてる後輩、年齢も13歳、14歳のメンバーたちとグループが一緒になったんですが、あまり明るくなくて。たぶん真面目すぎてだと思うんです」

中野「へぇ、そうなんですか」

小嶋「意識してるわけではないと思うんですが、人の話を真剣に聞いている姿がとても暗く感じて。実際にそういう人っていると思うんですよね。色でいうと『寒色』というか(笑)。私はこれを、どれくらい時間かかるかわからないけど『暖色』にしたいと思っていて、いつかできると思っているんです」

中野「間違いなくできます!」

小嶋「勝手に決めつけるのもよくないですけど、そのメンバーたちが今までかけられてきた言葉が寒色だった気がするんです。だから、私はいっぱい暖色の言葉を浴びせて、変えていきたいですね」

中野「めっちゃいいと思います。やっぱりリーダーの使う言葉が伝染するんで、みんな同じようなことを言い始めるんですよ。なので、うちの社員もみんな僕と同じようなことを言ってますよ!じゃあ、テーマは『太陽のように明るいグループ』ですね」

小嶋「そうですね!人数が多いので、私もメンバー全員とちゃんと関わることってすごく難しいんですけど、まずは自分の近くにいるチームの若いメンバーたちに、今自分が伝えられる言葉を伝染させていこうかと。結局、この先のグループを守っていくのはそのメンバーたちなんで」

中野「明るいし、みんな元気をもらえるし、いいんじゃない?ちょっと話が変わるかもしれないけど、“笑わないグループ”ってどこでしたっけ?」

小嶋「『欅坂46』ですね!」

中野「じゃあ、逆に“太陽のように明るいグループ”ってあるんですか?」

小嶋「そういった売り出し方のグループはないかもしれないですね。アイドルって、笑顔なのが当たり前になっているので」

中野「そうか、みんな笑っていますよね。けど、チームの方向性としてめっちゃいいと思いますよ」

小嶋「自分の中では、ここ数年NMB48は“がむしゃらに泥臭く”というのがなんとなくのテーマだったんです。でも、今の世の中がイメージしているアイドル像って、韓国のアイドルグループのような“完成しきったもの”なんですよね。そういうのが好きな人もいっぱいいると思うんですけど、私たちがそれを目指すのは難しいと思っていて。もちろん、それを目指してやってはいるんですけど、私たちは完成しきったものを見せるアイドルではなくて、成長過程を見せてそれを応援してもらうグループなんだと思っています。だったら、きれいなものばかりではなく、“ダサくても一生懸命ならいいんじゃない”っていう雰囲気でやっていきたいなと。まだ出し切れてないとは思うんですけど、声に出して言うようにはしてます!」

中野「花梨さんってこういう話をしてるとき、生き生きしていてめっちゃかわいいと思います。理想の状態がちゃんと見えているなって。僕もいいと思ったし、きっとこの記事を読んでいる人も『それいいやん!』って思いますよ」

小嶋「ありがとうございます。数年前と比べて、チームとしても私個人としても『絶対に今のほうがいい』って思える部分がちゃんとあるんです。だからそこをもっと伸ばしていきたいなって思っています」

■「業態をすべて透明化したい」中野さんが描く中古車業界の未来
小嶋「続いて、『中古車業界を変えていきたい』という思いでBUDDICAを作られたと思うのですが、具体的にどのように変えていきたいですか?」

中野「そうですね、変えることと変えないことがあります。僕がいたビッグモーターの社員さんたちも全員が悪者ではなく、ほとんどの人は真面目にやっていたんです。とはいえ、報道で『中古車業界自体どうなの?』みたいな話がたくさん出たわけですが、その原因を突き詰めると、“ブラックボックスであること”なんですよ。何をやっているのかわからない、みたいな。あとは正しい金額だったり、車って買ったら整備しないといけないんですが、車の部品って何千点もあって。本当に部品を交換する必要があるのかどうかって、正直わからないじゃないですか」

中野「そこに正解はないので、だったらITの力を駆使して、業態を全部透明化させればいいと思っています。だから僕らもSNSでありのままを出すし、今、公式サイトをリニューアルしているんですけど、『展開図』と言って、車の評価を全部表に出すようにしたんですよ。これはこの業界ではけっこう珍しいことなのですが、査定した人物や値段なども出していくし、購入後もデータが残るようにしています。イメージとしては、家に車の整備士が来てくれているような世界観です。特に東京では『車は欲しいけど、面倒くさいよね』といった意見が多いし、車を買った人からは『2年に1回車検で持って行くのが面倒くさい』みたいな意見もあるんで。それこそ『何されるかわからない』とかね」

小嶋「そうですね」

中野「でも、全部アーカイブで残っていたらいいですよね。たとえば、商談の流れが残っていたら悪いことはされないし、整備した履歴が全部残っているのに悪さをしたら『こんなにぼったくられました!』ってSNSに投稿されるわけだから。だから、大体そういうものは残させないんですけど、それをあえて透明化しようと思っています」

小嶋「それこそ『すべて正直に』ってことですよね」

中野「はい。ほかの業界だったら当たり前なんですけどね。また、自分たちだけが実践するのではなく、まず自分たちが先行でやってみて、そのプラットフォームをみんなに開放して、あとは好きにしてもらえたらなと考えています」

小嶋「なるほど!では、将来的に変えていきたいこともあると思いますけど、もっと近い目標について聞いてもいいですか?」

中野「近い目標は、いろいろなところで言っているんですけど、『10期で年商100億円の会社を作る』です。その100億って、いわゆる“やりたいことをやるための手段”だったんですけど、実は先週に上方修正して『8期で100億達成しよう!』って現場が言ってくれたんです。なんか、2年短縮するらしいんですよ(笑)」

小嶋「えぇ、すごすぎます!」

中野「今6期目なので、あと2年半で『年商100億円の会社を作る』がひとつの通過点で、これが短期の目標ですかね。そして長期の目標としては、僕がBUDDICAにいる間に、日本中の車を愛する人たちが笑顔で車を買って、乗れるような世界を作りたいです。もっと言えば、10年で実現したいですね!」

小嶋「10年…。なんか、すごく長いようであっという間な気がしますね」

中野「そうですね。けど、一気にやれると思いますよ。今は通販で車を届けるBUDDICAの子会社『BUDDICA・DIRECT』の立ち上げ段階ですが、これがうまくいけば一気に実現できると思っています」

小嶋「ありがとうございます。では最後に、中野さんにとってBUDDICAとはどのような存在ですか?」

中野「『BUDDICAはみんなのもの』というのが僕の考え方です。社名にもある『BUDDICA』は、『buddy Car』つまり『相棒の車』という意味があります。たとえると、僕はこの“BUDDICAくん”を作った人で、オーナーでもあるから、会社における“脳”の役割を担っています。そして従業員全員が“BUDDICAくん”なので、右腕になる人もいれば、左腕や足、内蔵を担う人もいます。それに、“BUDDICAくん”は僕にとって子どもみたいなものだから、『BUDDICAくんが大きく成長して、いつか僕が追い出されるのが理想』って、社員には話しています」

小嶋「うわぁ、それいいですね!ありがとうございます!」

中野「逆質問いいですか?」

小嶋「はい」

中野「花梨さんにとってNMB48とは何ですか?」

小嶋「私にとって…何でしょう(笑)。今までみなさんに聞いてばっかりで、自分のことは何も考えてなかったですね。なんかいろいろなんですよ。難しいなぁ」

中野「『言葉にならない』ってことですね。いや、それが答えだと思いますよ」

小嶋「難しいんですけど、いつかは私もここを卒業するので、一生背負いたくても背負えない、大事な存在なんです。よく卒業したメンバーが言うのは、『NMB48は私の青春でした』ですね。でも、本当にそのとおりだと思っています。いつまでも夢を追いかけさせてくれるし、夢をいっぱい見させてもらえるし。頑張らなくても頑張っても全部自分次第って思うと自分そのものでもあるけど、いつかはその看板を下ろさなければいけないという難しさがありますね」

中野「なるほど。たしかに卒業前提だから、それはひと言では言えないですね、僕らみたいに(笑)。じゃあ、その答えはまたの機会に聞かせてください!」

小嶋「はい。きっとまだ『これ!』という結果が出ていないのが答えでもあるので、グループを卒業するころには見つかるようにがんばりたいと思います。本日はありがとうございました!」

中野「すみません、いろいろ聞いちゃって!」

小嶋「いいえ、すてきなお話をたくさんありがとうございました!」

抑え込んでいた気持ちが涙としてあふれ出たこじりん。同時に、今後の進むべき道が開けたように見え、最後はすっきりとした笑顔となっていた。これからこじりんが、後輩たちに暖色の言葉をかけていき、NMB48はより元気で太陽のようなグループになっていく。そんな未来を、中野さんも楽しみにしているように見えた。

取材・文=西脇章太(にげば企画)
撮影=大林博之(D-Heart Studio)

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