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6.5メートルの巨大鍋に里芋3トン…“ビッグイベント”すぎる「芋煮会」の実態に迫る

  • 2023年4月6日
  • Walkerplus

山形県の郷土料理の筆頭である「芋煮」。そのおいしさから今日では全国でその名を知られるようになったが、地元での矜持は相当なもので、34年前から山形では「日本一の芋煮会フェスティバル」(以下、芋煮会)というビッグイベントを実施するようになった。

そのコンセプトは「芋煮と共に〜愛する山形の誇り〜」。数万食にのぼる芋煮を調理し、地元・山形県民の気持ちを高めることに加え、県外からの来場者には“山形の素晴らしさ”をアピールするのだという。

しかし、ここでふと疑問も浮かぶ。「数万食もの芋煮を一度にどうやって調理するのだろうか?」ということだ。この疑問もまた同イベントのキーポイントで、なんと芋煮を直径6.5メートルの巨大な鍋で調理し、移動式クレーンのバックホー(重機)ですくい上げるというもの。そのダイナミックな様子をテレビなどで見かけることもあるが、参加したことがない人にとって、全貌は計り知れない。

今回は、そんな「芋煮会」の実態について担当者に話を聞いた。

■徐々に大きくなっていった巨大鍋「鍋太郎」
「芋煮会」は今から34年前の1989年に始まった。“日本一”の冠に相応しく、当初は直径5.6メートルの特注鍋「初代大鍋『鍋太郎』」によって調理し、話題になった。

この巨大鍋は初開催から3年後に、直径6メートルの「二代目『鍋太郎』」にリニューアル。さらにイベント第30回の2018年には、初代と二代目を凌駕する直径6.5メートルの「三代目『鍋太郎』」に再び世代交代し、今日に至る。

当然、食材の量も想像を絶する。現在は地元・山形の食材を中心に里芋3トン、牛肉1.2トン、長ネギ3500本、こんにゃく3500枚、醤油700リットル、砂糖200キロ、水6トン、日本酒50升を使用しているそう。これを「鍋太郎」に仕込み、衛生面での配慮を十分にしたうえで、バックホーで混ぜながら調理を行う。バックホーが一度にすくうことができる芋煮は、約150食分と言われている。

■日本一どころかギネス世界記録を持つ一大イベントに
もちろん、材料を混ぜるだけでなく「里芋にしっかりと火が通っているか」「しょうゆの味が染みているか」などさまざまな点に気を配りながら、味の調整を行って振る舞うのだという。これだけ聞くと家庭で作る普通の料理となんら変わりないが、「鍋太郎」での調理によって、具材がより柔らかくなり、しょうゆスープの深い味わいが生まれ、家庭の味とはまた違う味わいになるのだという。味そのもののファンも多く、主催者側は「実際にイベントで使用される食材を使ったレトルトの芋煮も鋭意準備中」とのことだ。

また、2018年の第30回記念大会では、「8時間で最も多く提供されたスープ」としてギネス世界記録を達成。日本一の座はもちろん、山形が誇る世界一のイベントとして広く知られるようになった。

同イベントは、毎年9月にある敬老の日とその前日に開催するのが通例となり、山形県民だけでなく、県外の旅行者たちの間でも“山形の秋の風物詩”として知られるようになったが、2020年はドライブスルー形式で実施した一方、2021年は中止となった。2022年は感染防止対策を万全にし、再び開催となった。

日本を代表する、ユニークで地元民の思いが詰まったイベント。これまで同様に続けてほしいところだが、果たして2023年の開催はどうなのだろうか。2023年4月現在、担当者によれば「今のところは感染対策を徹底し、通常通りの形式での開催を予定している」という。まだ確定ではないものの、公式からの告知に今後も要注目だ。

■“巨大なもの”イベントが多い山形県で伝統を感じよう
『芋煮会』は山形県内の川沿いで行われることが多いが、開催時には山形駅付近から会場までのシャトルバスが運行され、来場者の動線の徹底、ゴミ問題などのマナーなども年々向上しているという。

「芋煮会」を訪れる多くの来場者が“客”としてではなく、主催者側と一緒にイベントに親しみ、盛り上げるようになったと言っていいと思うが、この点もまた、コンセプトである「芋煮と共に〜愛する山形の誇り〜」を実現しているようだ。最後に、担当者にコメントをもらった。

「『芋煮会』当日まで、山形市の主催されているイベントをはじめ、さまざまなイベントに出店させていただいております。ぜひ一度、6.5メートルの大鍋『鍋太郎』で調理されている芋煮を、河原でご賞味いただき、季節の変わり目を山形で実感していただければ幸いです」

山形には古くから「人間が将棋の駒になる」という天童市の『人間将棋』、巨大な獅子舞が街中を練り歩く酒田市の『酒田まつり』といった“巨大なもの”関連の祭りやイベントが多かった。これら「山形県の名イベント」に肩を並べながら、世界にもその名を知られるようになった「芋煮会」。2023年の開催はもちろん、さらなる未来にも末長く継承していってほしいイベントだ。

取材・文=松田義人

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