サイト内
ウェブ

子供のご褒美「シャンメリー」、実は“大人の飲み物”?誕生秘話と大人が飲むようになったワケ

  • 2021年12月16日
  • Walkerplus

クリスマスシーズン、スーパーにズラリと並ぶ飲み物といえば「シャンメリー」。誕生日やクリスマスに飲まれるシャンメリーは、白ワインのような上品な色、しゅわしゅわ弾ける炭酸の音、飲めばジュースとは異なる控えめな甘さで、子供の頃に大人のマネをして飲んだことがある人も多いのではないだろうか。

しかし長年親しまれ、「クリスマスの子供の飲み物の定番」という地位を築いたシャンメリーに新たな動きが出始めている。少子化が原因でシャンメリーの売上が厳しくなっている反面、大人が飲むことが増えているというのだ。

その理由を確かめるべく、シャンメリーの製造・販売を手掛ける株式会社トンボ飲料 営業担当の石井辰宏さんにシャンメリーの“今”を聞いた。

■シャンメリー誕生秘話。もとは大人の飲み物だった
シャンメリーは“子供向けの飲み物”という認識が強いが、実は大人の飲み物として誕生した商品だったそうだ。シャンメリーの原型の誕生は1947年(昭和22年)。東京のある飲料会社が、進駐軍の軍人たちがシャンパンを楽しそうに飲んでいたのを見て、「シャンパンを一般人も楽しんでほしい」と開発したのがはじまり。

そうして誕生したのが、お酒ではないシャンパン「ソフトシャンパン」だった。販売当初は夜の歓楽街の料飲店で提供されていた大人向けのソフトドリンクで、今で言うところのビールや酎ハイなどを模したノンアルコール飲料としてお酒の場で飲まれていた。

そんなソフトシャンパンに注目したのが、当時トンボ飲料の社長であった翠田康志氏(現会長)。「開けた時の『ポン』という景気のいい音、炭酸のきらびやかなイメージはホームパーティーにもふさわしいのでは?」と、1966年(昭和41年)にアイデアを大手スーパーに提案。ジングルベルの軽快な音楽とともにスーパーに並ぶようになり、あっという間にクリスマスの定番ドリンクとして定着することとなった。

その後、フランス政府より「シャンパン」の名称の使用禁止を求める動きが起こり、1972年(昭和47年)にはシャンパンの「シャン」とメリークリスマスの「メリー」を合わせて「シャンメリー」と名付けられた。また、シャンメリーは全国シャンメリー協同組合が商標登録し、2022年には50周年を迎える。

■少子化にコロナ禍…今でこそありがたい存在に
全国シャンメリー協同組合の努力の甲斐あってシャンメリーは子供の飲み物として定着したが、ここ数年問題となっている少子化の影響もあり、販売数は減少傾向にあるという。しかし昨今の「酒離れ」や、コロナ禍によるアルコールの提供禁止も重なって、大人が飲む機会が増えているそうだ。

「健康志向の方が増え、ノンアルコールの需要が高まっているので、大人の方が飲まれることも多くなっています。ホームパーティーはもちろん、アルコール厳禁の納車式や、多くの人が集まる結婚式で提供されるなど、さまざまな場面で登場することが増えました。最近ではコロナ禍の条例で飲食店でのアルコール提供ができなくなることもあり、代わりにシャンメリーを出すお店もあるようです。弊社では大人向けシャンメリー『シャルドネ』も製造しており、通常のものより甘さ控えめで風味をよりシャンパンに近づけているので、お酒好きの方にもおいしく飲んでいただけます」

「シャルドネ」は、白ワインに使用される上質なブドウ品種「シャルドネ果汁」を使用しているため、味もシャンパンにより近く、料理との相性も良いのが魅力だという。「禁酒中だけどジュースじゃ物足りない」という人にもぴったりの商品だ。

■「名探偵コナン」「鬼滅の刃」コラボが大人気!
現在、全国シャンメリー協同組合に加盟している会社がシャンメリーを製造・販売するなか、トンボ飲料はキャラクターコンテンツとコラボし、ボトルにキャラクターラベルを貼るなどの試みを行っている。これは家庭で食事を楽しんでもらうための仕掛けの1つだそう。

「キャラクターとコラボしたシャンメリーはお子さんに喜ばれるだけでなく、コレクション目的でまとめ買いされる方もいます。また、SNSで拡散されて今までとは少し違う需要が出てきています」

どれもどのキャラのラベルが貼られているかは開けてみないとわからない仕様になっており、作品のファンがこぞって買い漁ることもあるそうだ。どのキャラクターの商品を販売するかによって売り上げが大きく変わるため、メーカーは流行しているキャラクターを細やかにチェックしている。

「キャラクターシャンメリーが売上の大部分を占めているので、これから売れるキャラクターを見据えることが売上の大きなポイントになってきます。次々売れるキャラクターを探していかなければいけないのが大変といえば大変ですね(笑)。さらに人気キャラクターとのコラボ商品を発売しても、スーパーのバイヤーさんがそのキャラクターを知らなかったりすると店頭に並ばないこともあるので、キャラクターの人気と売上が比例しないこともあります」

■日本のノンアルコール飲料を世界へ
実はトンボ飲料は最初からシャンメリーを作っていたわけではなく、1896年(明治29年)創業の現存する日本最古のラムネメーカー。ラムネをはじめ、炭酸飲料を作るラインやノウハウが現在のシャンメリー製造に生かされている。その他にも富山県のご当地ラーメンをイメージしたラムネ「富山ブラックサイダー」などのユニークな商品も手掛け、シャンメリーの開発含めまだまだあらゆることに挑戦中だという。

「今はシャンメリーの海外展開を考えています。海外でも日本と同じく、誕生日パーティーやホームパーティーの際にノンアルコール飲料を飲まれている傾向があります。さらに海外でも健康志向が高まってきているので、弊社のノンアルコール飲料の魅力を海外にも広めていきたいと思っています」

夜の街の飲み物として誕生し、クリスマスの定番として子供たちに愛されているシャンメリーは、実は大人にこそ、うってつけのドリンクだった。たまにはお酒ではなく、子供時代を思い出すあの味を楽しんでみるのもいいかもしれない。

取材・文=福井求

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright (c) 2024 KADOKAWA. All Rights Reserved.