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「ジャックは死ぬ必要があった」 『タイタニック』のディカプリオが 好きな意外な“日本アニメ”とは?

  • 2024年4月25日
  • CREA WEB

 ある日Amazonプライムビデオのオススメをスクロールし、髪が逆立った。うぉお!! 「タイタニック」が絶賛無料配信中である!


この画像を見た時点で音楽が聞こえてくる。サブリミナル効果として「My Heart Will Go On」が仕込まれているとしか思えない。©Photo12 via AFP

 サブスクリプションというシステムに手を合わせたい。何度見てもいいものはいい。こんな膨大な情報量の映画がかつてあっただろうか。カテゴリー分けが非常に難しい。あえて言えば青春アドベンチャーアクション歴史パニックサスペンスラブロマンス。一度見ただけでは、多分このうちの1割くらいしか堪能できない。そのため、何度も見たくなるという、非常に卑怯なつくりの映画である。

 今回の配信、希望と不安が半々の不安定なこの季節、せめてロマンチックを満喫してね、というAmazonからのニクい心遣いとみた。ならば思う存分浸らせてもらおう――。

●初っ端から聞こえてくる「My Heart Will Go On」で号泣

 再生ボタンを押すと、20世紀FOX(※現:20世紀スタジオ)お約束の、ダンダン! ダンダン! ダラララ! という行進曲みたいな音楽が鳴るが、本編が始まると、打って変わって静かになり

 フーゥーゥーウウウウーウー……♪


歌唱中のセリーヌ・ディオン。画像を見るだけですでに歌が上手そうである。2022年末から難病を公表した彼女の闘病に密着したドキュメンタリー『アイ・アム セリーヌ・ディオン 〜病との戦いの中で〜』が6月25日からアマプラで独占配信される。©AFP=時事

 イカン! ど初っ端から聞こえてくる「My Heart Will Go On」のハミングはあまりにも破壊力がすごい。いきなり涙がドーッ! 始まって1秒でティッシュに手が伸びる。

 改めて恐ろしい曲である。映画が公開されていた1997年から1998年、映画のサントラはもちろん、セリーヌ・ディオンの歌も爆発的ヒットとなった。

「にー! ふぁー! ゆーうぇーああああゆああーー!(Near, far, wherever you are)」

というサビは当時死ぬほど聞いたなあ……。「My Heart Will Go On」の陶酔感は譲り合いの精神を忘れさせるようで、カラオケで歌自慢たちがこぞって歌い、全国セリーヌ・ディオンだらけだった。私も恥ずかしながら挑戦したことがある。表現力と発声が全く追い付かず、ターザンの雄叫びと言われたが、それはそれでいい想い出である。この歌も「タイタニック」の世界を盛り上げた素晴らしい一つの要因であることは間違いない。

●不憫な婚約者キャル氏に同情


このシーンに憧れたカップルは多かった。しかし高所恐怖所の私の友人のように「あんな危ない所にオレを信じて昇れと言うジャックはヤベエ奴。絶対恋人になれない」というタイプもいる。ロマンスに発展するのは奇跡なのだと改めて思う。©Photo12 via AFP

 全長270メートルという凄まじく大きなタイタニック号の中で、泊まる部屋も階級も全然違うのに、出会ってしまったジャックとローズ。まさに運命。しかも2人はお似合いなのだが、それにしても不憫なのが、ローズの婚約者、キャルドン・ホックリー氏である。

 確かに金持ち君でウザいが、ローズには「心を開いてくれ」と必死でゴキゲンを取るなど、けなげなところもある。大好きな北村一輝さんに似ているので、ついつい肩入れしてしまうのもあるかもしれないが、どう考えてもローズの態度が失礼すぎる。他の男とイチャイチャされて、プライドがズタズタではないか。彼があんな意地悪フルスロットルになったのは、ローズにも責任があるのではないかと私は思っている。

●本当にジャックは助けられたのか?

 とかブツクサ言っている間に後半に突入。タイタニック号が氷山にぶつかり異変が起こってからどうなるか、結果は分かっているのに、こちらまでオロオロしてしまう。私は公開時映画館で見たのだが、船酔いした。それほど大迫力である。

 そうそう、楽団は最後まで演奏するのよね。船が真っ二つに割れるのよね。海に落ちる2人。大きめの板を見つけたジャックはそれにローズを乗せて、自分は水に浸かったまま死んでいくのである。ティッシュティッシュ(むせび泣)。


恐ろしく美しい二人の横顔。©Photo12 via AFP

 このシーンに関して「板はジャックも一緒に乗れるほど大きい。助けられたのでは」説が浮上したことがある。私はそれを読んだとき、思った。助けられる、助けられないの問題ではない。この流れが良きなのだ。ぶるぶる震えながら「ローズ、ちょっと横空けて。よいしょ……」と必死に板の上に上がるジャックは見たくない。いっそジャックが突然、死の恐怖に襲われ、ローズを張り倒して板から落とし、自分が乗るくらいの急展開があったらそりゃそれで見たいが、恋愛ドラマはやはりロマンチックの王道(自己犠牲)が萌える。

 ジェームズ・キャメロン監督も私と同じ考え(?)だったようで、

「ストーリー上、ジャックは死ぬ必要があった」

 と答えている。

 それに、ジャックはちゃんとローズの中で生きている。この映画はなによりエンディングが素晴らしい。沈んでボロボロになったタイタニックが、徐々に美しさを取り戻し、ジャックとローズの恋を乗客みんなが祝福する、というもう一つの世界線で終わる。柱時計の前での、あのキスシーンの美しさよ。

 スーツもいいけど、やっぱりレオナルド・ディカプリオはサスペンダーよね!

 しかし、こんなビックリ裏話が。レオナルド・ディカプリオが実は水に濡れるのがすごく苦手だったそうで、監督は撮影の際、彼に海の中に入ってもらうことに、一番手間取ったという。

レオ様は映画のほぼ半分、水に浸かっている。よくぞこの役を引き受けたなと驚くばかりである。

 実はレオナルド・ディカプリオの他に、ジョニー・デップ、クリスチャン・ベール、マシュー・マコノヒー、ブラッド・ピット、トム・クルーズなどが候補に挙がっていたそうだ。錚々たるメンバーではないか!

 しかしジョニー・デップは沈んだ船を海賊船にしそうだし、クリスチャン・ベールだったらサスペンス度のほうが高まったろうし、トム・クルーズなんて、乗客全員救い出して生き残りそうである。マシュー・マコノヒーは、どっちかというとライバルっぽい。ブラッド・ピットはローズ役のケイト・ウィンスレッドとの並びが、色気があり過ぎて生々しい。ということで、やはりジャック役はレオ様。彼で大正解だったのである。

●レオナルド・ディカプリオの魅力


「セレブについて説明せよ」という課題が出たら提出したいほどのセレブっぽい画像である。レオ様は多分サムズアップしようとしている途中。©AFP=時事

 興奮してしまったついでに、レオナルド・ディカプリオについて語りたい。彼のなにがすごいって、そもそも名前がスゴイ。本名なのだろうか。調べて見ると、本名はレオナルド・ウィルヘルム・ディカプリオ……!! もはや大昔の皇帝の名ではないか。

「ディカプリオ」は世界に何人いるのだろう。小学校の時代からクラスに3、4人はいた「田中」の私とはえらい違いである。

 名前だけではない。ルックスも素晴らしい。あんなに童顔で素直そうでかわいい顔なのに、なぜか非合法で成り上がる役が世界一似合う不思議。しかも大成功を収めたあとにしっかりツケが回ってくるパターンが多く、栄光からボロボロになっていく流れを見守る至福。ああ、見るもの誰をもドSに変える天真爛漫なスマイルの持ち主、それがディカプーリオ!! 「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」なんて最高である。

 彼は日本のアニメやマンガが大好きで、特に好きな映画が「千と千尋の神隠し」というのも、これまた萌えポイントである。

「釜爺リスペクトだよ……」

 とか言う姿を想像するだけで癒される――。

●「タイタニック」のジャックから、ポスト「ジャック・ニコルソン」へ


髭レオも素晴らしい。髭を生やす、剃る、というシンプルな変化で、20歳くらい老けたり若返ったりできるレオ様である。©EPA=時事

 繊細な少年から、年を重ねるごとにだんだん熊さんのようになり、現在は、見た目は普通だが実はヤバい人も見事演じるレオ様。この変化も私好みである。マーティン・スコセッシ監督による「シャッターアイランド」やクリストファー・ノーラン監督の「インセプション」ではメンタルが迷子の主人公を見事演じきり、「シャッターアイランド」は私が人生で見た鬱映画ベスト5に入る「カッコーの巣の上で」を思い出してしまった。爽やかの極みみたいなジャックを演じたレオ様が、ジャックはジャックでも、ジャック・ニコルソン寄りになるとは想像もしていなかった。

 そのジャック・ニコルソンと共演した2006年公開の映画「ディパーテッド」では、ネタバレで失礼するが、エレベーターの扉が開いた瞬間頭を撃たれて倒れ、彼の身体を挟んでガッコンガッコンと扉が開閉を続ける、というシーンがある。これ、なんと「太陽にほえろ!」のラガー刑事(渡辺徹)と同じ死に方! ショッキングであると同時に、アラフィフにとっては最高にエモくもあり、思わず飲んでいた缶ビールを画面前に差し出し、レオ様と渡辺徹さんに乾杯したのを覚えている。

●人生は贈り物


©Photo12 via AFP

 話が飛びまくってしまったが、もう一度「タイタニック」に戻ろう。船の先頭にジャックとローズが立ち、両手を広げ、ローズが「私、飛んでるわ……!」と言うあの伝説のシーンも確かにいい。

 しかし、春のちょっと不安定になりがちなこの季節は、ジャックが金持ちだらけのディナーに誘われ、完全アウェーの状態で堂々とこのセリフを言い放つシーンを推したい。

「人生は贈り物だと思っています。僕は無駄にするつもりはありません」
I figure life is a gift and I don’t intend on wasting it.

 ホントにできた男だよ、ジャック(泣)!! 私は何度見ても、ここでグッと足を踏みしめる力をもらえるのである。

 スター街道まっしぐらに見えて、「何をやっても本人にしか見えない」という酷評に悩まされ続けたという、レオナルド・ディカプリオ。「タイタニック」の爆発的ヒットでイメージが固定したことによって悩んだ日々もあっただろう。

 名作は、きっと、演じる人たちの葛藤も含めたパワーで輝いている。

 誰かの心を動かす、きっかけを届けるために。


田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

文=田中 稲

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