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【照英さん×脳科学者のパパ対談】子どもが賢く幸せに育つカギはアウトドア体験にあり!?

  • 2021年5月25日
  • 暮らしニスタ

自然の中で遊びを楽しむ達人であるタレントの照英さんは、3人の子どものパパでもあります。子どもの成長にともない、学力や将来のことも気になり始めるとか。

そこで「子どもの脳の発達に欠かせないのが自然の中での遊び」と話す東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之先生に、子どもの能力をのばすためのアウトドアの楽しみ方を徹底取材しました。

アウトドアで「もう帰りたい」という子どもを楽しませるコツ

照英さん(以下、照英) はじめまして!ぼくは釣りやキャンプなどのアウトドアが大好きなんですが、瀧先生も自然がお好きですか?

瀧先生(以下、瀧) はい。子どもの頃から蝶が大好きで、いつも虫取り網を持って原っぱや野山を駆け回っていました。今は、休日には息子と山へ行って昆虫採集をして標本を作ったりしています。
自然の中に行くと、子どもと遊ぶ楽しさが何倍にも膨らみますね。
照英さんはお子さんが3人いらっしゃるんですよね?

照英 中3の息子と小学生の娘2人です。子どもが小さい頃から親子でキャンプしたり、釣りをしたりしていて、先日は親子でカヌーを楽しみました。
以前は息子といっしょに乗っていたんですが、最近は息子が妹たちを乗せてくれるようになったんです。

瀧 子どもの成長を実感しますね。お子さんたちもアウトドア大好きなんですか?

照英 必ずしもそうではないんです。初めて息子を船釣りに連れて行ったときには、「飽きた」「もう疲れた」ってブツブツ言われました。

でも釣れた魚を息子に捌かせて、一緒に食べたんですよ。それが本当においしくて、ぼくもめちゃくちゃほめたんです。そしたら「また行きたい」って。で、次はキス釣りに連れて行ったらものすごく釣れたんです。そしたら「釣りって楽しいね!」って。

息子さんと釣りに行き、船上で満面の笑顔の2人。照英さんのブログより

瀧 大成功ですね。アウトドアって予想通りにいかないことが多いので、子どもが「楽しい!」と思えるしかけを、さりげなく用意しておくことは大事です。

でもそれ以上に、親が心から楽しんでいる姿を見せることはもっと大事。子どもは模倣する力が高いので、照英さんが釣りを心から楽しんでいる姿を見て、息子さんも「楽しい」って思えたんじゃないですか?

照英 模倣ですか!実を言うと、子どもが生まれたときにぼくは「子どもに誇れる人間になりたい」と思ったんです。「うちのオヤジ、何でもできるんだよ。オヤジみたいになりたいんだ」って言われたいなぁって(笑)。

それで大型バイクや船舶の免許をとったり、釣りやカヌーを覚えたり、いろんなことに挑戦してきたんです。そのせいで、気づいたらぼくは「大人になるのをやめちゃった」みたいな大人になっちゃった。こんなんでいいんでしょうか?

瀧 理想的です!親が自分の趣味や人生を心から楽しんでいれば、子どもも「大人になるって楽しそう」と思えるはずです。

自然体験で学力アップ?知的好奇心の育て方

照英 でもね、正直に言えば、ぼくは中高生のときスポーツに夢中で、あまり勉強しなかった。それをいま後悔しているんですよ。勉強すれば人生の選択肢は増えると思うんです。先生は、お医者様で、研究者で、企業経営者。かっこいいですよね!

瀧 え!? 医者や研究者や経営者にアンケートとったら、みんな照英さんみたいな仕事したかったって言うと思いますけど(笑)。

照英 ありがたいです。でも親って勝手だから、自分のことは棚に上げてわが子には賢くなってほしいって思うんですよ。一方で、親の希望を押しつけたくもないし、自分で夢を見つけてがんばってほしいとも思う。どうすりゃいいんでしょう?

瀧 子どもに賢くなってほしいというのは、どの親御さんも思うことですよね。そのポイントとなるのは、知的好奇心と自己肯定感です。
この2つを伸ばすことができていれば、子どもの学力は自然に高まっていくはずです。

照英 自然に学力が高まっていくんですか!それは確かに親ならみんなわが子に身につけさせたいと思う力ですよね。でも何をすればいいかわからないんです。

瀧 そうですか? 照英さんは十分やっていると思いますよ。

照英 え?本当に? 

瀧 学力の源になるのは知的好奇心です。与えられたものを機械的に覚えるよりも、「どうしてだろう?」と好奇心をもって学んだ方が定着しやすいし、勉強が楽しくなります。その知的好奇心を育むのにぴったりなのがアウトドア体験なんです。

照英 そうなんですか? あ、でも確かに。ぼくは釣りが大好きなんですが、釣りをしていると「なんでこの季節にこの魚がここで釣れるの?」とか、疑問がわくんですよね。

プロの方に聞くと「黒潮の流れが変化している」とか「海水は空気より温度が変化しにくいから、地上より1カ月遅く季節が変化する」とか、目からウロコの話が聞けるんです。
ただ、そういうのって直接学校の勉強には関係ないような……。

瀧 実はそうじゃないんです。何かにハマってとことん調べたり、考えたりした経験が学習の土台になるんですよ。アウトドア以外でも、楽器の演奏とか、読書とか、スポーツでもいい。何かに夢中になる経験こそが学力の基礎なんです。

照英 じゃあ、ゲームにハマるのでもいいんですか? 

瀧 ダメではないですよ。医者や研究者にはゲーマーが多いんです(笑)。
ただ、人間が作ったものにはどうしても限界があります。一方、自然界に存在するものはわからないことだらけ。興味も無限に広がります。

照英 確かに。ぼくは子どもを釣りに連れていく理由の一つは、どこまでも広がる海を見せて、自然の偉大さや環境についても興味を持ってくれたらいいなぁという思いがあります。釣りをしていると、気象や生態系、地球環境にも興味が向きますよね。

大海原を前に自然の偉大さを改めて感じるひととき。照英さんのブログより

照英 あと、釣ってきた魚を美味しく食べたいから料理もやりたくなる。実は最近、上手にさばくために、包丁とぎも習い始めました。

瀧 照英さんは知的好奇心の見本みたいな人ですね(笑)。そういったように、一つの体験から興味がどんどん広がっていくのが自然体験のいいところです。

「勉強できないからムリ」と言う子にかける言葉は?

照英 もう一つ大事なことは、自己肯定感ですよね。ぼくもわが子を誰かと比べないようにしよう、この子だけの長所を見つけて伸ばしてあげたいって思うんですが、結構難しいんです。興味の対象がコロコロ変わるので。

瀧 それは好奇心旺盛な証拠ですよ。3日坊主でも3カ月坊主でもいいので、何かを始めて挑戦させましょう。だんだんハマり方がわかってくると思います。息子さんは今何に夢中なんですか?

照英 筋トレかな(笑)。

瀧 いいですね~!こう見えても私、筋トレ大好きです(笑)。
思春期の男の子は特にそうだと思うんですが、体を鍛えることで自信をつける傾向があります。体力に自信がつけば、対人関係においても自信がつく。応援してあげてほしいな。

照英 なんかね、僕自身が一見自由そうな仕事をしているから、子どもに悪影響を与えているんじゃないかって心配になるんですよ。「勉強しなくてもなんとかなる」と思われているんじゃないかって。

瀧 親が思うよりもっと深く、子どもはいろんなことを考えているものです。ただ、中高生になると、小学生の頃みたいに無邪気に夢を語れない。現実が突き付けられる時期ですからね。

照英 そうなんです。だから子どもが「自分は勉強ができない」と思ったときに、大人が何と言ってあげられるのか、すごく考えているんです。

「だったら勉強しろ!」って言うんじゃなくて、何か道標になるワードを子どもに伝えられる大人でありたい。そういう意味で、親だって勉強しなくちゃいけないですよね。子どもの発達や、人間関係について。

瀧 おっしゃる通りです。私はね、「勉強ができない」「運動が苦手」っていう考えは大きな間違いだと子どもに伝えています。私たちの脳は、何歳であっても可塑性(変化する力)があります。「○○だから無理」っていう思い込みを壊すことから始めなくちゃ。

照英 それを親が言葉で伝えていいんですか? 本人が気づくまで待つべき?

瀧 どんどん言いましょう。「そんなことはないぞ!」って。

照英 そうかぁ、なんか勇気出ますね。

瀧 脳が変化するもっともいい方法は、一生懸命楽しくやることです。たかだか15歳や18歳くらいで「自分はここが限界」だなんて思う必要はまったくない。

照英 それ本当です。実はぼく、2019年に「全日本マスターズ陸上大会」に出場して、やり投げで優勝したんです。

瀧 すごいですね!おいくつだったんですか?

照英 当時45歳です。中学高校時代にやり投げをしていたんですが、筋肉も衰えているし、体も動かないんですよ。でも1年間トレーニングしたら、現役時代の感覚が戻ってきました。
妻と子ども3人が応援しに来てくれたので、「40代半ばでも、がんばればできるんだ」って見せてあげられたかなって。

瀧 それこそ、「○○だから無理」という思い込みをはずすすばらしい具体例です。いい見本になっていますよ。

病気や老化を予防する「主観的幸福度」。親の背中を見せて育脳にも

瀧 照英さんのすごいところは、自分自身がさまざまなことに夢中になって楽しく生きていることです。私たちの心と体の健康のためにもっとも大事なことは、主観的幸福度なんですから。

照英 主観的幸福度?

瀧 人と比べて幸せか否かではなく、純粋にワクワク楽しめる幸せな時間がどれだけあるかということです。例えば、自分が熱中できる趣味などですよね。

この「主観的幸福度」が高い人は、動脈硬化や高血圧、糖尿病のリスク、そして私の専門分野でもある認知症のリスクも下げることがわかっています。

照英 それ、すごいことですね。

瀧 そして自分自身が幸せだと、周囲の人にイライラをぶつけることがなくなるし、病気で迷惑をかける可能性も下がる。いいことだらけですね。

照英 なんかうれしい! 先生のおかげで自己肯定感が上がってきたなぁ(笑)。ぼく自身、やっぱりずっとこの仕事を続けたいし、釣りやキャンプも楽しみたい。
何歳になっても「照英、まだこんな子どもみたいに一生懸命やっているよ!」って言われるのがいいなぁって。

瀧 照英さんみたいな生き方ならば、自己肯定感も知的好奇心も高まる。そういう人は魅力的なので、いい仲間が集まってきます。人生がいい方向に進むんです。

子育てには「正解」ははないと思うんですが、唯一できることがあるとすれば、自分がなってほしい大人に自分がなる、それしかないと私は思っています。

照英 ドキっとするほど素敵な言葉ですね。さすがだなぁ。
やっぱり先生みたいに偏差値70を超えるような人になりたかったな~(笑)。

瀧 生き方の偏差値でいえば、照英さんはとっくに偏差値70越えです(笑)。
お子さんたちもその背中を見て、アウトドアでもほかの趣味でも夢中になることで、知的好奇心や自己肯定感が育まれると思います。

照英 本当に勇気がわいてきた。今日は、ありがとうございました!

撮影/土屋哲郎
取材・文/神 素子

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