サイト内
ウェブ

Vol.43 最先端技術に触れて考えるのはやはりその技術で何を伝えるかということ

  • 2010年3月4日

 

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 今月は、予告した通り、見学企画第2弾のレポートをお送りします。今回の見学は、東京・武蔵野市にあるNTT情報流通基盤総合研究所というところにお邪魔させていただきました。広大な敷地に立派な研究棟がいくつも立ち並ぶこの施設では次世代ネットワークや環境・エネルギーに関する様々な研究開発が行われているということでしたが、今回はそのなかから「トピック空間可視化技術〜Topigraphy〜」「高効率燃料電池」「高性能バックアップ電源システム」「NEXT GENRATION NETWORK(NGN)」、そして「高電圧直流給電システム」という5つの研究成果を紹介していただきました。

 前回のゴミ処理場見学は、そもそもペットボトルの分別に懐疑的だった僕がその実態を確認するという現実的でかなりシビアなテーマだったわけですが、今回は未来の可能性がどんなふうに開かれているのかというころを知る、まさに夢の暮らしを思い描く見学ですし、加えて生まれついての理系人間である僕としてはこうした研究所は場の匂いからしてなにやら懐かしい感じがして、かなり興奮してしまいました(笑)。

 とは言っても、ただ興奮していたわけではなくて、いろいろと思うところもありました。例えば「NGN」では美しいデジタル画面に映し出された遠隔地にいる相手とほとんど時間差を感じることなく会話することができるネットワーク・システムのデモストレーションを体験しました。本当にクリアな映像が印象的だったし、デジタル・ネットワークを介したライブ・セッションができる日もそう遠くないなと思わせてくれて、まさに夢が膨らんだわけですが、音楽というソフトを生み出して届ける仕事をしている僕としてはこういう先進的なハード・インフラで何を届けるのがいちばん有効かということをやはり考えてしまいます。PS2が発売されたとき、あまりの処理能力の高さにゲームの作り手たちが戸惑った時期があったそうですが、その事実が伝えているのは「できることが多くなる分、何をしていいのかわからなくなる人も増える」ということですよね。今回見せていただいた映像がそれくらいきれいだったということでもあるわけですが、それほど先進的だと、現状はネットワークの恩恵を享受している人たちもネットワークの性能が上がったことによって離れていってしまう場合だって起こりうるわけです。ネットワークが進化して余裕ができたからといって必ずしも必要のない高精細映像や大量のデータを転送すると、それがかえってユーザのストレスになってしまう事も考えられます。だから、Vol.38で紹介したデジカメの話のように「これを使うと、こんなことができます」「こうすることで、あなたの生活がこんなに豊かになります」あるいは「こうすると、こういうことができなくなります」ということまで含めてちゃんと提示しないと、ユーザは“じゃあ、どうしたらいいの?”というところで立ち止まってしまう事態が予想されます。音楽の現場でも同じようなことが言えるでしょうが、ビジネスとしてある種過酷な要求が必要になるところへの対応としてはスペックを伝えるだけでいいかもしれないけれど、より一般的な層にアピールしていくにはそういうふうにライフ・スタイルの提案というスタンスがより大切になっていくんだろうなと思います。

gooラボ  それから「トピック空間可視化技術〜Topigraphy〜」ですが、これはgooラボ内の「ブログレンジャーQA」で、みなさんも体験することができます。個人的には、“蓄積されたデータをどういうふうに可視化するか?”というテーマに対するひとつの試みとしては面白いと思いましたが、そもそもなぜ可視化するかということを考えてみると、それはそのデータを使って何かやろうとするからだろうと思います。つまり、面白いデータをみつけるための試みであるはずです。で、検索データを地図にして見せるというこのアイデアの面白いところは、本当の地図とは違って、ものすごい勢いで地形がどんどん変化することだと思いました。そして、その変化に対してどう対応するかということが現代社会で求められていることだから、その課題に対する解決法の手がかりのひとつとしてあの地図はあるんだろう、と。だから、あの地図のいちばんの価値はどんどん変わっていくことが可視化されているということだろうと思うんです。つまり、「注目したひとつのキーワードがある期間でどれくらいの距離を移動したか」「注目度や人気度のような数値の変化と移動距離との関係」というようなことが情報として重要なんじゃないでしょうか。

 データをマッピングするというのは手法です。スタイルと言うか、入れ物でしかないという点ではアカペラと同じです。ただ、アカペラという手法を使った曲が必ずいい曲かというと、そうとは限らないですよね。だから、あの可視化技術を使って何をするのか、どんなサービスを提供するのかということがポイントになるのだろうと思いますが、まずは読者のみなさんもgooラボに見に行ってみてください。

 次回は、今回の見学のメインテーマだった「高電圧直流給電システム」のお話です。どうぞ、お楽しみに。


キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。