ゴードン・ムーアはこの時代をどう思うのだろうか。
2024年3月25日、インテルがQ1’24 プレスセミナーにて、これからの戦略を発表しました。簡単にまとめると、ファウンドリ（半導体を生産する工場）として世界第2位の規模を目指していくこと（首位はTSMC）、Core Ultraをビジネス向けPCにも搭載していくこと、そして生成AIに力を入れていくことです。
インテル日本法人代表取締役社長、鈴木国正氏このうち、インテル的に特に推している要素が「AI PC」というもの。これからはAIの時代なんだろうなってのはなんとなくわかるんですけど、じゃあAI PCってどういうものなんでしょ？
言葉だけ見るとAIフレンドリーなPCなのかなといった印象ですが、AI PCというものをインテルは以下のように定義しています。
CPU、GPUに加え、新たにNPU（Neural Processing Unit）を搭載し、生産性、創造性、セキュリティーにおいて新しいAIを体験をもたらすインテルCore Ultraプロセッサー搭載PC。
またマイクロソフトもAI PCを定義しており、それは次の条件に合致するものとなります。
Copilot搭載 Copilotキー搭載 CPU、GPUに加え、新たにNPUをシリコン上に搭載どちらにも出てきたワードが、NPU。これもAI時代になってよく耳にするようになった言葉ですね。CPUとGPUに続く、第3のパソコンの処理装置のようなものになります。
CPU…コンピュータのメイン頭脳。多用途に使えるのが特徴で、GPUっぽいこともNPUっぽいこともできる。
GPU…画像処理を専門とするプロセッサー。規模が大きかったり複雑な映像出力の演算に特化している。
NPU…機械学習の処理に特化しており、CPUやGPUでは間に合わない量の計算を担う。AI処理のアクセラレーター。
インテルの最新CPUであるCore Ultraシリーズは、このNPUを搭載しているのが大きな特徴です。
今では新しいWindowsのSurfaceシリーズやApple製品にも、NPUは搭載されています。カメラアプリで映した映像を瞬時に解析し、植物や風景を同定するのはNPUが得意とするところです。
Stability AI Japan株式会社代表、ジェリー・チー氏一方で、ChatGPTや画像生成のようなAIサービスは、現状では企業のサーバー側（スマホやPCの外側）で複雑な処理を行なっています。こうなるとローカル側にNPUが載っている恩恵はあまりないのではって思いません？
そこで、インテルが面白い実例を紹介してくれました。BUFFERZONE Security社がAIを用いたフィッシングサイトの検出アプリを開発しており、これにNPUが使われているとのこと。いわゆるセキュリティ対策ソフトで、感染前にマルウェアを発見するタイプです。
アプリが保有している膨大なデータと今見ているサイトを照らし合わせて「そのサイト危ないよ！」とアラートをしてくれるわけですが、このフローをサーバーを介して行なうとどうしても時間がかかってしまう。ハードウェアレベルでのAI処理が実現した、次世代のセキュアというわけです。
もちろん、ローカルで画像生成やLLMの学習のような大量のデータを食わせる処理についてもNPUの得意分野。今まではGPUに任せていたこういった処理を、より得意なNPUに任せることができます。個人でも生成系を楽しめるようになりそう！
AIコンパニオンのCopilotを一発呼び出しできるキーをマイクロソフトが搭載したことで、PCの作法そのものに変化が訪れようとしてくれます。メールが送りたいときもCopilotキーを押して「〜〜な文面を作って」とお願いしたり、調べ物があるなら「◯◯と□□ってどう違うの？」と柔軟に聞いてみたり。
こうしたユーザー体験の変化だけでなく、普段は見えないハードウェアもしっかりと変化しており、NPU搭載の一般化は具体的な一例でしょう。Photoshopの生成塗りつぶしはネット環境が必要なサービスですが、NPUが強まればローカルで動かせるかも？
そうなったら月額料金安くなってほしいですね…。
Image: ヤマダユウス型（Adobe Firefly） 画像生成のおかげで記事のオチの画像も作りやすい時代に。つよつよなAI PCを体験できるイベント「AI PC Garden」が、2024年3月30日〜31日のあいだ原宿のcafé STUDIOで開催されます。この力の入れよう、2024年はAIフレンドリーなAI PCが花開く年とみて良さげですな。
Source: インテル
