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JTの「葉たばこ」の研究開発施設を見学。約15年待ちに待った取材で知った9つのこと

  • 2023年10月1日
  • GetNavi web

JTの研究開発施設「Leaf Tobacco Research Center」のメディア取材会が7月末に栃木県の小山市で行われました。筆者(編集部山田)はGetNavi編集部に異動して約15年が経ちますが、実は念願叶っての機会であり、とてもレアな施設見学でした。

 

というのも、JTはこうしたR&D施設の公開を行っていないから。私もこれまでJTの浜松工場や九州工場、北関東工場を見学する機会がありましたが、それらはいずれもたばこ葉を巻き上げ、梱包する「製品工程」を行う工場。原料を加工する工程や、さらにその上流となる、原料自体を研究し開発する施設に訪れたことがなかったからです。

 

本記事では、「Leaf Tobacco Research Center」の施設を紹介しながら、そもそもの葉たばこの蘊蓄も織り交ぜてまとめてみました。

 

【1】JTのたばこの研究開発施設は全国に3か所ある

JTのたばこの研究&開発拠点は、墨田R&Dセンター(東京都墨田区)、たばこ中央研究所(神奈川県横浜市)と、今回の訪問したLeaf Tobacco Research Centerがあります。Leaf Tobacco Research Centerの敷地面積は約26ヘクタール(約26万平方メートル)と広く、その6割は圃場(農産物を育てる場所)が占めています。ちなみにJTグループ全体としては、日本のほか、ブラジル、ザンビアにも葉たばこの研究拠点があります。

 

【2】1947年に試験場として開設

小山とJTの歴史は古く戦後まもない1947年、当時の大蔵省専売局 宇都宮煙草試験場がその始まりです。1988年、葉たばこ研究所としての機能も持ち併せるようになり、それ以降、未来に向けた葉たばこに関する各種研究活動が行われています。

 

研究開発施設なので製造工場のように大型機械が高速で動いているといった様子ではなく、学校を思わせる雰囲気。実際、運動場などもありのどかな環境です。

 

【3】たばこはナス科たばこ属の植物

たばこは実はナス科の植物。ちなみに、じゃがいもやトマト、ほおづきもナス科です。外敵から身を守るため、葉にニコチンを含有しています。品種にもよりますが、大きくなると草丈120センチほどに。一方で種は小粒で小さいもので約0.5mm、大きいものでも1.0mm程度しかありません。

 

【4】葉たばこの種類には大きく、「黄色種」「バーレー種」「オリエント種」がある

葉たばこは植物なので、育つ気候やその土地の土壌などで多種多様な種類がありますが、大きく3つに分けることができます

 

・黄色種:温帯地域で栽培され、日本では沖縄県〜新潟県あたりまでで扱われています。鮮明な黄色で葉が肉厚なのが特徴。糖含量が多く、甘い香りがします

・バーレー種:黄色種よりも冷涼な地域で栽培されています。草丈が大きく、背も高く、葉は薄く褐色なのが特徴。チョコレートのような香りがします

・オリエント種:日本では栽培されていない品種です。地中海性気候でよく育ち、草丈は低く、葉も小さいのが特徴。ブレンドにおいて調和的な役割を果たします

資料提供:JT

 

Leaf Tobacco Research Centerでも研究のために、黄色種とバーレー種を栽培。圃場の見学時には収穫間際の葉たばこたちが等間隔で美しく並んでいました。

↑圃場の様子。葉たばこの栽培方法は次の項目で

 

【5】葉たばこは3月に種が植えられて、7月に収穫される(東日本の場合)

葉たばこは春から夏にかけて栽培される植物です。地域によって時期は異なりますが、3月に苗に種が植えられて、4月に畑に移植、6月に心止めと呼ばれる作業を行い、6月下旬から8月上旬にかけて収穫および乾燥を行い、たばこの原料として加工されます。

↑たばこの花

 

【6】「心止め」は重要な工程

これは葉たばこに限らずですが、心止めは栽培において重要な工程です。たばこの花が咲き始めるころに花(を含む上部)を切り落とすというもので、これにより葉に十分な養分や水分を行き渡らせ、その成熟を促進させることができます。

取材したのは7月下旬ということもあり、すでに心止めが行われているものがほとんどで、収穫も始まっていました。研究施設ならでは、という点では種子を採取するために心止めを行わずカバーがかけられているものもありました。

 

【7】黄色種は機械乾燥で、バーレー種は自然乾燥で乾燥させる

葉たばこは品種によって乾燥方法が異なります。黄色種は機械乾燥で、バーレー種は自然乾燥。Leaf Tobacco Research Centerも同様の手法が取られています。

↑黄色種は機会乾燥

 

↑バーレー種は自然乾燥。乾燥工程の前半1週間はパイプハウスで、後半3週間は乾燥施設で乾燥させます

 

取材では実際に建物内に入ることができましたが、香りのインパクト大。むせ返るような暑さに強烈な葉たばこの香りが充満していました。たばこ農家ではより大規模な乾燥施設を用いて葉たばこを乾燥させているそうです。

 

【8】栽培実験施設や人工光栽培室、昆虫実験棟などの施設も

面積的には圃場および乾燥施設がLeaf Tobacco Research Centerの大きな割合を占めますが、その他の施設も充実しています。下の写真は栽培実験施設の写真。ここでは、品種改良や栽培環境試験などに使用する葉たばこを栽培しており、様々なケースに応じた栽培を行っているといいます。

↑栽培実験施設の様子

 

このほかに、今回は見学できませんでしたが、人工光を使ってLEDで葉たばこの栽培を行っている施設や、たばこ原料や製品の保管中に発生する害虫の研究を行う施設もあります。

 

【9】ブレンドも大きく3つに分けられる

Leaf Tobacco Research Centerの施設紹介は以上ですが、今回の見学ツアーではたばこのブレンドに関するレクチャーも行われました。そのなかから興味深かった内容を最後にお届けします。それは、日本における代表的なたばこのブレンドは「バージニア」「アメリカン」「ドメスティック」の大きく3つに分けられるということです。

・バージニアブレンドタイプ

代表銘柄としては「ピース」。黄色種をメインに使うブレンドで、ピースの場合は黄色種100%の商品。ちなみに黄色種100%といっても同じ土地の葉を使っているのではなく、黄色種の中で国内外の様々な地域や環境の葉をブレンドしているとのこと。

・アメリカンブレンドタイプ

代表銘柄は「メビウス」「キャビン」「ホープ」。バランス型タイプで、国内外の黄色種/バーレー種/オリエント種をバランスよくブレンドしているとのこと。

・ドメスティックブレンドタイプ

代表銘柄は「セブンスター」「エコー」。その名の通り国産葉を多用している銘柄。

 

ちなみに、ひとつの銘柄で国産葉・輸入葉含め100種以上の原料をブレンドしているそう。ブレンダー視点では、葉たばこの上の葉と下の葉でも特性が異なり、特徴のある原料をいつも探し求めているとのことでした。

 

【まとめ】ものすごい平凡な言い方ですが、奥深い。

見学時間は説明を含めて数時間でしたが、それでも奥深い。たばこはワインと違って、その土地や気候の個性を活かすものではなく、常に同じ品質であることが重要。それを100種類以上の葉たばこからブレンドして成立させている点では驚異的といえるでしょう。

 

今回は紙巻たばこ商品を前提としたレクチャーや見学が多かったですが、今後は加熱式たばこに使われる葉たばこについても知りたいーーそう感じさせられる取材でした。

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