
北野天満宮に隣接し、市内のどこからでもアクセスしやすい上七軒。通りには、伝統的なお茶屋、料亭、和菓子店が並ぶ一方で、洋食や洋スイーツの店も点在します。気軽に入れる町家カフェや雑貨屋さんに立ち寄りながら、すっきりと洗練された町並みを満喫しましょう。
「老松」は、上七軒で1908(明治41)年に創業した老舗和菓子店。儀式に用いる有職菓子から、その場をふっと和ませてくれるふだん使いのものまで幅広く扱っています。
店内もどことなく花街ならではのはんなりした雰囲気。使い込まれた和菓子の木型や、芸舞妓さんの名前が入ったうちわがさりげなく飾られています。花街の人々から信頼されている証ですね。
お菓子の原点は、ときどきの野山に実る木の実や果実という考えから、フルーツや木の実を使った和菓子があり、その代表格が夏季限定の清涼感あふれる夏柑糖。寒天で固めてあるのでホロリと崩れ、心地よい酸味、爽やかな香り、ほんのりした甘さが夏の暑さを忘れさせてくれます。
京都の老舗フレンチ店などで修業を重ねた店主が手がける洋食屋さん「グリル彌兵衛」。中がほんのりピンク色に焼き上げられたハンバーグステーキに、たっぷりかかるデミグラスソースは絶品です。
店主が命の次に大切というデミグラスソースは、脂っぽさがないのに、何ともいえない重厚なコクがあります。また、サラダにかかる、マヨネーズから手作りのドレッシングも他にはないおいしさ。足しげく通うリピーターが多いのにも納得です。
町家が並ぶ上七軒通の一角にあるヨーロッパ風の建物が目を引く「GRACE SAISON(グラース セゾン)」。ショーケースにはチョコレートの生菓子や、フルーツのケーキが並んでいます。
オーナーの母でもある大谷敦子さんは半世紀以上もの経験があるベテランパティシエで、自慢のザッハトルテは、フランボワーズジャムを使うなど独自のアレンジが施されたもの。ヨーロッパの固い甘さではなく、花街らしいはんなりした甘さを味わって。
「CLEHA coffee & tea room」は、町家の面影を残しながらスタイリッシュに改装したカフェ。アンティーク家具も素敵です。カウンターには小麦の製粉機があり、挽きたての全粒粉を使って焼き上げるスコーンは格別。
砂時計が落ちるのを待って、大蔵陶園のカップに紅茶を注ぎ、スコンにクリームとジャムを塗って、ゆっくり味わう。「そんな非日常を楽しめるのがクリームティーです。それに手を動かすと話も弾みます」とカフェを営む佐野夫妻は言います。
「クリームティーセット」は、全粒粉スコン、プレーンスコン、自家製ジャム、クロテッ
ドクリームと飲み物のセット。飲み物は珈琲、紅茶(アールグレイ)などから選べます。
昨年の夏は、パイナップルのジャムやケニア産コーヒーを使って季節感を演出したそうで、この夏はスコン、ジャムと一緒に、ティーアフォガードを楽しんで。
がま口の口金専門店「まつひろ商店」が、20年ほど前から、着物の反物やニットなどさまざまな生地を使い、がま口の製造から販売までを手がけるように。店内はあらゆる種類のがま口が所狭しと並んでいます。畳の上で落ち着いて商品を選べるので、ついつい長居してしまいそう。
がま口といっても財布だけではなく、スマホショルダーをはじめ、名刺入れや、扇子ケースまで種類もサイズも様々です。ぱちんとキレのいい音は口金の閉まり具合が良い証し。購入後の修理も受け付けてくれ、さらにがま口作りの教室も月1回開催中です。
「上七軒 ふた葉」は、店主の祖父の代から続く麺類と丼物のお食事処。夏は、定番の冷しきつねうどんや冷し中華が人気。また意外にも、なべ焼きうどんやカレーうどんを、汗をかきながら味わうお客さんも多いのだとか。
もっとよりみちしたい方は、北野天満宮から徒歩5分の「大報恩寺(千本釈迦堂)」へ。国宝に指定される見通しとなった「木造六観音菩薩像」などの仏像が拝観できます。また、嵐電北野白梅町駅が近いので、沿線の龍安寺、妙心寺、仁和寺、終点の嵐山へ足をのばすのもおすすめです。
後編では、町の中心となる北野天満宮や歌舞練場へ。七夕ライトアップやビアガーデンなど
夏の宵を涼やかに過ごせる行事をご紹介します。楽しみにしていてくださいね。