サイト内
ウェブ

廃校活用に暗雲が……。3年続けた展覧会イベント、開催の危機!

  • 2024年4月17日
  • コロカル
3年間続けてきた校舎での活動に転機が訪れて

ここ数日の暖かさで、北海道でも雪解けが一気に進んだ。4か月ぶりに土を踏みしめて歩く喜びは何ものにも代えがたい。この時期は野山に出かけて春を満喫したいところだけれど、なかなかそうもいかず、忙しない日々が続いている。

MAYA MAXXさんが仲間と建てた鳥の塔がある旧美流渡中学校のグラウンドもようやく雪解け!

MAYA MAXXさんが仲間と建てた鳥の塔がある旧美流渡中学校のグラウンドもようやく雪解け!

先月の連載では、私が代表を務める地域PR団体「みる・とーぶプロジェクト」が、岩見沢の無印良品で展覧会を開催したことを紹介した。この展覧会が終了したのは3月31日。そこからわずか1か月半で、次なる展覧会が控えており、その準備が佳境となっている。

会場は岩見沢のまちなかにある阿弥陀寺というお寺で、ゴールデンウィークの5月3、4、5日の開催を計画中だ。お寺で開催は今回初。ここで展覧会を行うことになった経緯をまずは書いておきたい。

2021年から、私たちは近隣にある旧美流渡中学校で、地域のつくり手の作品を紹介する『みる・とーぶ展』と、美流渡在住の画家・MAYA MAXXさんの絵画を展示する『みんなとMAYA MAXX展』を開催してきた。今年も旧美流渡中学校で展覧会が開催できるものと思っていたのだが、思いがけない展開が待っていた。

校舎の教室を利用して開催された『みる・とーぶ展』。家具や器など手仕事の作品が並ぶ。

校舎の教室を利用して開催された『みる・とーぶ展』。家具や器など手仕事の作品が並ぶ。

この3年間、私たちの団体は、岩見沢市の教育委員会から、この校舎を試験的に活用し、その実績をまとめ、活用のアイデアを提案するという業務を受託してきた。展覧会開催のほか月1回のワークショップデイを設けるなど、3年間の来場者数合計は1万人を超えた。

取り組みの輪をさらに広げていきたいと考えていた矢先の昨年10月、岩見沢地区消防事務組合消防本部から、市側に指導が入った。現状は、校舎は建築基準法上の用途が「学校」であるが、校舎では作品の物販もしていることから用途を「店舗」へ体育館は子どもの遊び場となっていることから用途を「集会場」へ、変更する必要があるとのことだった。

3階の教室でMAYAさんは毎回新作を発表してきた。

3階の教室でMAYAさんは毎回新作を発表してきた。

教育委員会の担当者によると、試験活用を十分に行ってから建物の用途を決め、いずれ改修をしていこうという方向性が検討されていたという。しかし、今回、消防の指導をきっかけに、早急な対応を迫られることとなった。おおよその改修費を調査したところ、現在のようなイベントを実施するための基準を満たす用途変更には、おそらく1億円以上かかることがわかってきた。この金額では改修を実現させるのは難しいのではないか。市や教育委員会のなかでは、そんな声も上がっているようで、校舎の活用を部分的にするなどで改修費を抑えつつ、みる・とーぶプロジェクトの意見も踏まえながら現実的な道をこの1年で探ることになった。

旧美流渡中学校でのMAYAさんによるワークショップ。道内全域、ときには道外からも来場者が訪れるようになっていた。

旧美流渡中学校でのMAYAさんによるワークショップ。道内全域、ときには道外からも来場者が訪れるようになっていた。

どうやって展覧会を開催する? 可能性を探って

昨年末、改修が進まない状態では、校舎で展覧会の実施は難しいことがわかった。けれど私たちはこれまで通り展覧会を開催したいと考えていた。別の会場の候補について話し合っていたとき、「まちなかにある阿弥陀寺さんに聞いてみてはどうか」とメンバーのひとりから提案があった。阿弥陀寺の住職・松岡瑞翔さんと高校の同級生だったという。こうしたつながりから打診をしたところ、快い返事をいただき、ゴールデンウィークに展覧会を開催できることとなった。

阿弥陀寺の境内。向かって右が本堂。左に知恩会館がある。

阿弥陀寺の境内。向かって右が本堂。左に知恩会館がある。

活用を続けてきた校舎が使えないというのはとても残念なことだったけれど、この動きをポジティブにとらえていこうとメンバーらと話した。

阿弥陀寺は岩見沢駅から徒歩圏内。旧美流渡中学校は駅から車で25分ほど。コミュニティバスがあるものの、車を運転できないとアクセスが悪いエリアなので、「行きたくても行けない」という声がこれまでにあった。また市民のみなさんへ、この活動の周知が不十分と感じていたため、まちなかでの開催はいい機会になると思った。

敷地が本当に広くて、本堂でライブとMAYAさんの作品展示を、会館の大広間と控室では展示や作品販売、ワークショップを行う計画を立てた。

阿弥陀寺では「OTERAシアター」と題し、住職がセレクトした映画を定期的に上映している。3月は耳の聞こえないプロボクサーの姿を描いた映画『ケイコ 目を澄ませて』(三宅唱監督)が上映された。

阿弥陀寺では「OTERAシアター」と題し、住職がセレクトした映画を定期的に上映している。3月は耳の聞こえないプロボクサーの姿を描いた映画『ケイコ 目を澄ませて』(三宅唱監督)が上映された。

こどもの日に合わせ、親子で楽しめる企画が集まって

今回は、みる・とーぶプロジェクトがPRを行っている岩見沢の山あいのエリアである東部丘陵地域で活動する人々に加え、地域外からも出展者を募った。また、パフォーマンスやライブも企画していて、参加者の合計は40組。このうち約3分の1が初参加となった。テーマとしたのは「こどもの日」。これに合わせて、親子ペア参加可能なワークショップが10も揃うこととなった。

5月3、4、5日に開催されるワークショップ。

5月3、4、5日に開催されるワークショップ。

「シャボン玉を描こう」や「ベラさんと風船で遊ぼう!」、「ガラスアクセサリー」、「木のおもちゃ車づくり」はこれまで行ってきた定番のワークショップ。今回、新しく仲間入りとなったのは6つ。東部丘陵地域からは、昨年、上志文のアトリエでショップやワーショップスタジオを開いた、エディブルフラワーとロースイーツのショップ〈Shunka〉と、オーダー専門の花屋〈日々の花 糸〉が参加。〈Shunka〉は「オーガニックカカオでつくるチョコレート」と題して、低温調理で風味豊かなチョコレートのレシピを教えてくれる。〈日々の花 糸〉は、花言葉からイメージを広げたミニブーケづくり。できあがったブーケのリボンに好きな香りの精油をつけて、色と香りを楽しむワークショップを行う。

Shunkaによる「オーガニックカカオでつくるチョコレート」は5月3、4日に随時受付。体験料3500円(事前予約の場合は3000円)。

Shunkaによる「オーガニックカカオでつくるチョコレート」は5月3、4日に随時受付。体験料3500円(事前予約の場合は3000円)。

日々の花 糸による「花言葉でつくるかんたんブーケ」。5月4、5日に随時受付。体験料2000〜3000円。

日々の花 糸による「花言葉でつくるかんたんブーケ」。5月4、5日に随時受付。体験料2000〜3000円。

また、美流渡に拠点があり、音楽フェスなどで活動を行う「Make a Mark」は、Tシャツにさまざまな木版をプリントするワークショップを開催。さらには、岩見沢市にある北海道教育大学の学生を中心に構成されているアートグループ〈ACT〉が「鯉のぼりづくり」や、札幌在住で自由研究家と称するさとうまりこさんが「まりまりさんとつくろう」と題した編み物のワークショップを行うなど、多様な内容が集まった。

Make a Mark。テーマのなかから好きなスタンプを選んで、オリジナルのTシャツを制作。5月3、4日に随時受付。1スタンプ500円、Tシャツ込み5スタンプ3000円。

Make a Mark。テーマのなかから好きなスタンプを選んで、オリジナルのTシャツを制作。5月3、4日に随時受付。1スタンプ500円、Tシャツ込み5スタンプ3000円。

「Art」と「Contact」をかけ合わせて〈ACT〉。鯉のぼりづくりのワークショップを実施。5月3、4、5日に随時受付。体験料500円。

「Art」と「Contact」をかけ合わせて〈ACT〉。鯉のぼりづくりのワークショップを実施。5月3、4、5日に随時受付。体験料500円。

こうしたものづくり体験とともに、市内にあるカイロブラティックのサロン〈テオリア〉が、親子でピラティス体験も行ってくれることとなった。みる・とーぶプロジェクトのメンバーの多くが、施術でお世話になっているサロンだ。

西洋のヨガと呼ばれるピラティス。親子で楽しみながらできる体験会を行う。

西洋のヨガと呼ばれるピラティス。親子で楽しみながらできる体験会を行う。

パフォーマンスやライブを本堂で開催!

ワークショップは会館で行い、本堂ではパフォーマンスとライブを予定している。5月3日のオープニングを飾るのは札幌を拠点に各地でパントマイムを行っている〈夢見劇場〉。4日は岩見沢の朗読サークルせせらぎによる、子どもも楽しめる童話や絵本の朗読会。

そして、5日は4つのライブが行われる。トップバッターとなるのは、小学6年生のToshiyaさん。Toshiyaさんとの出会いのきっかけは、MAYAさんが岩見沢のコミュニティラジオで担当している番組「MAYA MAXXのplaypray」から。この番組にファンレターを送ってくれたことからやりとりが始まり、出演が決まった。エレファントカシマシをこよなく愛し、オリジナルも30曲以上あり、当日の雰囲気に合わせて曲を選ぶ予定。

オリジナル曲をギターで弾き語りするToshiyaさん。

オリジナル曲をギターで弾き語りするToshiyaさん。

また、昨年からみる・とーぶのイベントでライブを行ってくれている長澤まろいさんは、札幌のバンド・ヌルマユの中村正敬さんとともに、オリジナル曲に加え、MAYAさんの絵本にも曲をつけて歌うという。このほか地元でずっと活動を続けている川村幸大さんのギター弾き語りと、イベントではいつもフィナーレを飾っているアフリカ太鼓バンド〈みるとばぶ〉も登場するなど、にぎやかな1日となりそうだ。

昨年、旧美流渡中学校で開催した長澤さんのライブ。ヌルマユの中村さんがギターとバスドラを担当した。

昨年、旧美流渡中学校で開催した長澤さんのライブ。ヌルマユの中村さんがギターとバスドラを担当した。

パフォーマンスやライブを本堂で開催!

ワークショップやライブとともに、フードや作品展示・販売もぜひ楽しんでもらいたい。MAYAさんの作品は本堂で展示。美流渡に移住する以前、MAYAさんは東京・原宿にあるヘアサロン〈boy Tokyo〉の一角を借りて制作を行っていた。1畳にも満たない窓越しのスペースで、来る日も来る日も描き続けており、やがて「いいね!」をするうさぎが無数に描かれたシリーズを展開していった。それらの1枚には「念彼観音力」(観音様を念じることで救いが訪れる)と描かれたものがある。

ポップな色調のなかに、どこか仏の世界を彷彿とさせる感覚があって、本堂という場での展示にぴったりなのではないかと考えている。このほか、岩見沢在住のイラストレーター・大西洋さんやユウキマスミさんの作品、プロジェクトのメンバーの遠藤亜未さんと私のふたり展も実施する。

MAYA MAXX「いいねウサギ 念彼観音力」(部分)。一艘ずつ船に乗り、いいねポーズをする無数のウサギが描かれている。

MAYA MAXX「いいねウサギ 念彼観音力」(部分)。一艘ずつ船に乗り、いいねポーズをする無数のウサギが描かれている。

MAYAさんと仲間でつくった動物オブジェ「Zoo, Zoo, Miruto」も会場をにぎわせる。

MAYAさんと仲間でつくった動物オブジェ「Zoo, Zoo, Miruto」も会場をにぎわせる。

書き切れないほど魅力的な内容がいっぱいのこの展覧会。親子はもちろん、ひとりでじっくり作品を鑑賞したり、ものづくりを楽しんだりもできるので、ぜひ立ち寄ってもらえたらと思います(駅から歩ける!)。旧美流渡中学校での開催はできなかったけれど、どこへ出かけても、みる・とーぶプロジェクトらしさを感じてもらえるように、がんばります!!!

information

こどもの日スペシャルみる・とーぶとMAYA MAXXがやってきた!阿弥陀寺ワンダーランド

日程:5月3日(金祝)、4日(土)、5日(日祝)

時間:10:00〜16:00

会場:浄土宗 阿弥陀寺 北海道岩見沢市4条東3丁目

交通:JR岩見沢駅より徒歩13分

駐車場:あり(満車の場合は近隣のコンパーキングの利用を)

Web:こどもの日スペシャル みる・とーぶとMAYA MAXXがやってきた! 阿弥陀寺ワンダーランド

writer profile

Michiko Kurushima

來嶋路子

くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、『みづゑ』編集長、『美術手帖』副編集長など歴任。2011年に東日本大震災をきっかけに暮らしの拠点を北海道へ移しリモートワークを行う。2015年に独立。〈森の出版社ミチクル〉を立ち上げローカルな本づくりを模索中。岩見沢市の美流渡とその周辺地区の地域活動〈みる・とーぶプロジェクト〉の代表も務める。https://www.instagram.com/michikokurushima/

https://www.facebook.com/michikuru

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright © Magazine House, Ltd. All Rights Reserved.