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「八十八夜」よりもひと足早く新茶を味わえる、鹿児島の「走り新茶」って?

  • 2024年4月12日
  • コロカル
「新茶の季節」っていつ頃?

新しい年度を迎えて大忙しの春は、気持ちもなかなか落ち着かないもの。「今日はちょっと疲れたな……」という日は、おいしい新茶とお気に入りのスイーツでリラックスしませんか?

おもてなしやリラックスタイムにはもちろん、お食事にもよく合うお茶。(写真提供:柳田製茶)

おもてなしやリラックスタイムにはもちろん、お食事にもよく合うお茶。(写真提供:柳田製茶)

「今年の新茶ってもうお店にあるの?」と思われるかもしれません。手あそびの歌として有名な茶摘みの歌は「夏も近づく八十八夜」という歌い出しからはじまりますが、「八十八夜」とは立春から88日目のこと。今年なら5月1日前後に、その年の茶摘みが始まるのが一般的です。

ただし、茶摘みは桜前線と同じように、南から順に始まります。そのため、八十八夜よりも早くいただける新茶があるんです!それが、鹿児島から届く早摘みの「走り新茶」です。

お茶の生産量が全国第2位の鹿児島県

茶畑と開聞岳。(写真提供:公益社団法人 鹿児島県観光連盟)

茶畑と開聞岳。(写真提供:公益社団法人 鹿児島県観光連盟)

南国ならではのあたたかい温暖な気候を利用して、1年中さまざまな品種のお茶が生産されている鹿児島。豊富な日射量によるカテキン類(渋味成分)の増加に加えて、摘みとり前に遮光資材で被覆をすることでアミノ酸(甘味成分)の増加を促し、甘みと渋みのバランスがとれた、濃厚でコクのある風味をつくりだしています。

県内での茶業がさかんになったのは昭和後期からと、意外にも最近なのですが、現在では静岡に次いで国内2位の生産量を誇ります。2019年にはお茶の産出額で静岡県を追い抜き、国内1位になったことも。

薩摩半島南部の南九州市でつくられる頴娃茶・知覧茶が有名ですが、種子島や屋久島などの離島ではなんと3月から収穫が始まっているのだそう。そんな「走り新茶」は、縁起の良い“初物”としても人気が高く、もちろん、一番摘みのおいしさもギュッと凝縮されています。

参考:かごしま茶navi

生産者に聞く、お茶づくりのこだわり

柳田製茶2代目の柳田直樹さん。家業であるお茶づくりは高校生の頃から手伝っていたそう。(写真提供:柳田製茶)

柳田製茶2代目の柳田直樹さん。家業であるお茶づくりは高校生の頃から手伝っていたそう。(写真提供:柳田製茶)

鹿児島県北西部のさつま町でも、4月上旬からお茶摘みが始まります。紫尾山(しびさん)の麓にある茶畑で良質な茶栽培に取り組んでいる、柳田製茶の柳田直樹さんにお話を伺いました。

「おいしいお茶がつくられる場所は、気温の寒暖差が大きいといわれています。さつま町の中心には川内川が流れているのですが、霧が川に沿って流れていく『川内川あらし』という、とてもめずらしい気象現象が起こります。霧の発生は寒暖差があることの証明で、お茶を栽培するのに適した土地なんです」

朝霧に包まれる茶畑の様子。(写真提供:柳田製茶)

朝霧に包まれる茶畑の様子。(写真提供:柳田製茶)

そんな地理条件のもと、一番茶の新芽若葉だけでつくったのが「若蒸煎茶」です。「摘みたてのやわらかい新芽を製茶工場に運び、一瞬で蒸して発酵を止めることで、お茶本来の風味と香りを引き出しています。煎茶は緑色のイメージがあると思いますが、若蒸煎茶は美しい黄金色が特徴。特に、極早摘みの新芽若葉だけでつくった『若蒸煎茶 上煎茶』は、上品な旨味と芳醇な香りが楽しめる最上級品です」

つまり、早い時期に摘まれた茶葉が一番おいしい、ということなんですね。昔から「走り新茶」が珍重されてきたのも頷けます。

2023年に開催された「新茶を味わう会」にて。(写真提供:柳田製茶)

2023年に開催された「新茶を味わう会」にて。(写真提供:柳田製茶)

一番茶の時期が終わったら、5月以降は二番茶・三番茶・四番茶とつづき、秋冬番茶をつくるお茶畑もあるなか、柳田製茶では一番茶のみを使用。摘みとりは年1、2回に限定しているそうです。

「次の年も質の高いお茶をつくれるよう、茶の木に無駄な力を使わせないためです。茶摘みの時期が終わったら葉を切り落として、枝の本数や太さを揃えて、木をつくる、土をつくることに専念します」

そうして丁寧につくられた若蒸煎茶は、来客用・贈答用にもぴったり。ギフト用の箱入りタイプもありますが、コンパクトなティーバッグタイプもちょっとしたプレゼントとして喜ばれそうなかわいさです。

ティーバッグタイプの若蒸煎茶と若蒸ほうじ茶(5パック入り)。若蒸ほうじ茶は今年初登場!(写真提供:柳田製茶)

ティーバッグタイプの若蒸煎茶と若蒸ほうじ茶(5パック入り)。若蒸ほうじ茶は今年初登場!(写真提供:柳田製茶)

もっと気軽に、もっと幅広く!おいしいお茶の楽しみ方

お茶をもっと楽しみたい、という人におすすめのアレンジについて聞くと、「お茶を出したあとの茶葉に、かつおぶしとポン酢をかけて和えものにして食べるのもおいしいですよ」と柳田さん。茶葉、食べられるんですね!「やわらかい、若い新芽のお茶ならではの楽しみ方です」

鹿児島の郷土料理「茶節」。(写真提供:株式会社マルモ)

鹿児島の郷土料理「茶節」。(写真提供:株式会社マルモ)

味噌とかつおぶしに緑茶を注いでつくる「茶節」という鹿児島の郷土料理は、疲労回復や2日酔いのときにもいいのだそう。どちらの料理にもかつおぶしが使われているのは、鹿児島がかつおぶしの生産量日本一ということも関係しているのかもしれません。

「お酒好きの方なら、焼酎のお茶割りがおすすめです」と柳田さん。若蒸煎茶でつくるお茶割りは、焼酎の味とお茶の味がどちらもしっかり味わえると好評なのだそう!煎茶割りならさっぱりとさわやかな味わい、ほうじ茶割りなら香り高く上品な味わいが楽しめそうです。

4月のうちにひと足早く楽しめる、鹿児島の走り新茶。蒸し暑い日は、水出しでもおいしくいただけますよ。カテキンの抗菌・殺菌効果、テアニンのリラックス効果も期待できる緑茶で、新年度の忙しさを乗り切りましょう!

information

柳田製茶

住所:鹿児島県薩摩郡さつま町白男川4022-1(直売所)

※要予約。来店前に電話でご予約ください

TEL:0996-54-2066

営業時間:10:00〜17:00

定休日:日曜・祝日

Web: 柳田製茶オンラインショップ

writer profile

Haruko Sato

佐藤 はるこ

さとう・はるこ●福岡生まれ、福岡育ち。成人してから引っ越した回数は10回以上。日本各地を移動しながら、2010年からフリーランスのライターとして活動。建築、都市、まちづくりに興味あり、音楽やアートの話が好き。人から話を聞くのがとても好き。

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