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藍染めの前の「藍建て」とは? 味噌やぬか漬けのように育てるミニキット発売!

  • 2023年11月8日
  • コロカル
業界初!「蒅藍建てキット」を開発

藍染めが盛んな地、徳島県上板町にある〈Watanabe’s(ワタナベズ)〉。藍染めの原料となる植物、タデ藍の栽培に始まり、刈り取った葉からの染料「蒅(すくも)」づくり、その蒅を用いた染料液を使って染色、服や小物などのオリジナル藍染め商品の製作販売にいたるまで、まさに“藍染めの入口から出口まで”を行っている工房です。

藍に携わってから今年で12年目を迎える代表の渡邉健太さんと、4年目のスタッフ、加藤慎也さんは業界初の「蒅藍建て(すくもあいだて)キット」を開発。今秋、まずは「キット販売+講習会」をスタートさせました。このキットを用いて藍の染料液を仕込めば、自宅でいつでも天然藍染めができるというわけなのです。画期的!

(写真提供:Watanabe’s)

(写真提供:Watanabe’s)

(写真提供:Watanabe’s)

(写真提供:Watanabe’s)

「蒅藍建て」ってナニ?

「藍染め」と聞いてほとんどの人が思い浮かべるのは、“ジャパンブルー”と呼ばれる、あの美しい藍色。では、「藍建て」は? そもそもこの言葉を初めて聞く人も多いかもしれません。

藍には青色色素成分、インディゴが含まれています。この色素は不溶性のため、布などの繊維にも染み込まず、そのままでは染めることができません。そこで、インディゴを発酵菌の力によって水溶性の「ロイコインディゴ」に変化できる環境を整えることでようやく染めることが可能になるのです。この“藍染めができる染料液づくり“が「藍建て」。天然の材料で仕込み、あとは微生物の力を借りて発酵させる伝統的な手法です。

藍をまるごと体験してほしい

ミニキットで染めた手ぬぐいを手にする渡邉さん(左)と、加藤さん。

ミニキットで染めた手ぬぐいを手にする渡邉さん(左)と、加藤さん。

藍染め体験の多くは染色の工程。染料液に浸したあと、空気に触れることで青色に変わっていくさまは印象的な経験です。しかしその手前の藍建てが「実はおもしろい」と渡邉さんは言います。

「地味ですが、“発酵”という目に見えない微生物と毎日向き合っています。味噌やぬか漬けと同じで、日本人なら馴染みのある発酵文化のひとつなんです。わかりづらいけれども、この藍染めの根っこともいえる部分も体験してもらいたいと思うようになりました。僕らがこれまで培ってきたノウハウをすべてオープンにして、藍の魅力やわからなさ、おもしろさをたくさんの方と共有したい。みんなで一緒にできると単純に楽しいじゃないですか」と、渡邉さん。

実験中のミニサイズの蒅藍建てキット。

実験中のミニサイズの蒅藍建てキット。

全89回分もの藍建て&日々の管理をまとめた、加藤さんの研究ノート。

全89回分もの藍建て&日々の管理をまとめた、加藤さんの研究ノート。

そして、キット開発の立役者となったのが、染料液の生産管理を任されている加藤さん。

「僕はもともと赤が見えないんです。あるとき、液面に赤い小さな膜が張ると染色できるサインだと言われたのですが、僕にはわからないので、それをきっかけに数値を取るようになりました。データを追うことで、感覚的にはわからないものを論理的にわかりたいと思って。すると、目には見えないけれど液の中で起こっていることが少しずつ想像できるようになりました。それでも、藍の世界はまだまだわからないことだらけ。そんなことも含めてもっとみんなに知ってもらいたいと思っていたらキットに行き着いた感じです。最終的には子どもでも手軽に扱えるようなかたちにするのが目標です」

加藤さんはインスタグラムの「watanabes_lab」というアカウント名で、自分が知り得た藍にまつわる知識や解釈を発信しています。

どうするの? どうなるの? をぜんぶ教えます

「なぜ染まるの?」「藍建てって?」などをイラスト図解で解説。

「なぜ染まるの?」「藍建てって?」などをイラスト図解で解説。

「なぜ染まるの?」「藍建てって?」などをイラスト図解で解説。

講習会は藍染めの基礎的な話からスタート。染色は「酸化と還元」という化学反応を利用するため、どうしても小難しい言葉が飛び交いますが、加藤さんの手描きイラストによる図解に助けられて理解が進みます。そして「藍建て」の具体的な方法を教わったら、休憩がてら藍染め体験を。

ミニキットでできる「板締め絞り」を体験。板締めとは、折りたたんだ生地を2枚の板で挟んで染める方法です。

ミニキットでできる「板締め絞り」を体験。板締めとは、折りたたんだ生地を2枚の板で挟んで染める方法です。

ミニキットでできる「板締め絞り」を体験。板締めとは、折りたたんだ生地を2枚の板で挟んで染める方法です。

その後、工程ひとつひとつの意味や、カギとなる温度やPH管理の話、「こんなときはどうする!?」の対処法などを説明。質問タイムを経て、およそ2時間で終了します。決して簡単ではありませんが、この講習を聞くだけでも藍への理解がグッと深まります。

ミニキットなら手ぬぐいや靴下が染められる!

藍建ての材料。左から蒅、ふすま、貝灰、木灰汁。すべて自然のもの。

藍建ての材料。左から蒅、ふすま、貝灰、木灰汁。すべて自然のもの。

材料の入った状態のミニキット。木灰汁を入れたら藍建てのスタート。

材料の入った状態のミニキット。木灰汁を入れたら藍建てのスタート。

キットは3種類。1.5リットル用のミニキットから、15リットル用の中キット、76リットル用の大キット。サイズに応じて染められるものや量は異なります。

藍建てができた状態。

藍建てができた状態。

ミニキットでむらくも染めした靴下。

ミニキットでむらくも染めした靴下。

ミニサイズの場合は手ぬぐいや靴下くらいまでなら染められます。中サイズの場合は片方ずつ靴を染めることもできます。大は大型のバケツサイズなので、Tシャツやセーターなど大きさがあるものもOK。

「今回はプレイベントですが、ゆくゆくはキットだけオンライン販売できるような体制を整えたいと思っています。また、このキットで藍建てを始めた人同士が情報交換できたり、僕たちと情報共有できたりする非公開の勉強会グループの作成なども検討中です。脈々と受け継がれてきた藍建てを広め、次の世代へと繋いでいきたい。誰でも始めやすく続けやすい、開かれた藍の場をつくっていきたいですね」と渡邉さん。

「ぬか漬けと同じで生き物みたいなもの。まずは観察するような感覚で藍建てを楽しんでもらえたら」と加藤さん。

藍染め好きの方はもちろんのこと、興味はあったけれどもきっかけがなかった方、また、発酵好きな方はお見逃しなく!

information

「Watanabe’s 蒅藍建てキット講習会」

開催日:2023年11月11日(土)、12日(日)、18日(土)、19日(日)

時間:午前の部10〜12時、午後の部14〜16時

定員:各5名程度

服装:身軽に行動でき、汚れてもいい服 ※染料液がはねる可能性があります。

持ち物:空のペットボトル(ミニサイズ購入の方のみ)※木灰汁の持ち帰り用

参加費:18000円(ミニサイズ) ※中サイズ、大サイズご希望の方は問い合わせ時にお知らせください。

内容:自宅でできる藍建て講習、板締め染色体験、キットのお持ち帰り

申込方法:インスタグラムのDMで受け付け

★詳細はインスタグラムをご確認ください。

information

Watanabe’s 

住所:徳島県板野郡上板町瀬部314-10

電話:080-1835-1731

Web:Watanabe’s

Instagram:@watanabes_japan @watanabes_lab

*価格はすべて税込です。

writer profile

Akiko Sato

佐藤晶子

さとうあきこ●企画・編集・執筆。出版社で雑誌、書籍の編集を経て独立。2011年、結婚を機に帰郷。

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