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海野和男のデジタル昆虫記

アマゴイルリトンボ、ネイチャーガイド日本のトンボ

アマゴイルリトンボ、ネイチャーガイド日本のトンボ
2012年06月28日

 まもなく発売予定のネイチャーガイド日本のトンボを著者の尾園さんから頂いた。
 本を見る前は 5775円は高いなと思っていたが,その分ボリュームにまずびっくり。なんと532ページもある。この内容でこのボリュームなら,決して高くない。そして内容の充実度もすごい。
 今日の写真はアマゴイルリトンボの産卵だが(本にも似た写真があって,トンボにうとくてもすぐに同定できる)。このようなあまり見かけないトンボから、普通に見られるシオカラトンボまでが、今までで一番わかりやすい写真で載っている。しかも生態写真と,色の変わっていない標本写真と幼虫の写真まであるから,コストパフォーマンス抜群である。作りはじめてから5年間もかかったというのもうなずける。幼虫の写真というか幼虫を集めるのは大変だったろうと思う。
 科の扉にわかりやすい標本写真と,翅脈などの情報がある。これでまず調べたいトンボがどの科のものかを調べると良いだろう(この一覧があったらもっと良い。科の一覧と生態写真と分布地域だけのハンディーなフィールド図鑑がこの図鑑からもう一冊作れそうだと言うか、作って頂きたいなと思う。実はそのような図鑑と思い込んでいたのだが、これは本格的な図鑑である。本格的な図鑑に子供が接すれば将来のトンボ学者は確実に生まれる。でも愛好家も育てて欲しいというのがぼくの願い。
 ともかくも、これからははこれ1冊で日本のトンボ全種が同定できる。コンプリートブックに近いものである。全種が載っているトンボの本は今まで数万円するのが当たり前だった。ネイチャーガイド日本のトンボは豪華さはともかく、内容や美しさでは、高価なトンボ図鑑より遙かに上だ。そして学術的にも最新の成果が取り込まれている。共著者の二橋亮さんは世界トンボ協会日本副代表、川島逸郎さんも日本トンボ学会編集幹事である。これに尾園さんが加わって3人の持ち味が良く出ていると思う。
 カラー写真の部分拡大で見分け方が入っていないかと思ったが、それは残念ながらない。図による胸部や頭部,尾部などにより検索するが、従来よりはわかりやすいが、捕まえないとわかりにくい種もある。次回のフイールドガイドでは是非写真だけで同定できるようにして頂ければと思う。トンボを野外で見たりして、トンボの達人はほぼ全て同定できるのだから、できないことはないと思う。
 トンボの場合、難しいのは未熟と成熟個体で,見かけが異なること。従来の図鑑でも今回も網羅されてはいない。まあ未熟個体も,尾部などの形は同じだろうから、この図鑑の検索図を使えば専門家には難しくないのだろう。
 それでも、この本がトンボ研究者の立場でなく、写真家の立場で作られれば,もっとわかりやすくなったように思う。それでも従来の大図鑑より、写真家が主著者で加わることで、現在ある図鑑の中で、一番わかりやすいトンボ図鑑であることには間違いない。
 写真はさすが尾園さんだ。わかりやすい写真を撮り、それが同定にも役立つというトンボの写真は、どんなトン研究者も昆虫写真家も真似ができない。
 値段が高いか安いかは人によるだろう。高いようにも感じるが、6月10日の日記で紹介したイモムシハンドブックは同じ文一総合出版の極めて売れ行きの良い本だが、この本より小さく、100ページぐらいで1470円する。1と2を買えば3000円近く。それで200ページ強。イモムシハンドブックは良い本だが、この本に比べると高い。つまり。ネイチャーガイド日本のトンボは値段は高いが,イモムシハンドブックと比べれば安いのだ。
動画一覧にムラサキシャチホコの飛翔をアップしました。

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