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海野和男のデジタル昆虫記

昆虫写真家への道19(最終回)

昆虫写真家への道19(最終回)
2007年01月30日

 さて続けてきた昆虫写真家への道の話は、一部を除きぼくが高校生から25才ぐらいまでの話です。面白く読んでいただけたとしたら嬉しく思います。
 アンケートでもこの昆虫写真家への道は反響がありました。もっといろんな話を書いたり昔の写真を載せて欲しいという要望もありました。また時折昔の話も書こうかなと思いますので、今日はとりあえずの最終回ということにします。

 「どうしたら昆虫写真家になれますか」という質問を受けることがある。
 写真家は検定試験があるわけでもないから、写真家といえばそれで写真家になれるわけだ。昆虫写真家と名乗ったら、それにこだわって一生懸命昆虫の写真を撮ればそれで立派な昆虫写真家だ。
 どうしたらプロ写真家(生業にすること)になれるかというのは人それぞれだ。ぼくの場合は勤め人は、たぶんつとまらないから、フリーの写真家が生業で良かったなと思う。人によっては生業としてはやってられないけれど、アマチュアの昆虫写真家が向いている人も多いと思うのだ。
 生業の場合はそれで生活を支えるわけだから、どうしたら伝えることができるかなとか、読者が何を見たく、自分は何を伝えたいかということを考えることも必要だと思う。
 収入を得ることに時間をとられてしまうのはフリーの宿命だ。だからもしかしたら生業にしない方が自由に面白い写真が撮れるかも知れない。(プロは大学の先生が授業と研究を同時にやるのと似ているかも。でも昆虫写真家は給料がないからちょっと違うかな?)
 昔は写真技術者が科学者の手伝いをするようなかたちで大学などに在籍した。でも科学技術が進歩した今は、残念ながら写真はそういった科学的な役割を昔ほどには持っていない。そのかわり、もっと広く面白い昆虫の世界を一般に伝えることができると思う。そういった意味で、僕たちの写真を使ってくれる出版社と写真家の関係は、昔の大学と写真技術者との関係と似ているのかなとも思う。その恩恵を受けるのが直属の学者ではなく、もっと広い世界なのだから素敵だと思う。
 昆虫写真家になるのに、どんな学校へ行ったらよいのかとか、どんな勉強をすればよいかという質問を受けることがある。学校を出なくても昆虫写真家はできる。けれどもし昆虫や生物の勉強を少しでもしていれば、科学的なものの見方という目に見えない部分でずいぶん得をすることになると思う。でも一番の先生は自然そのものである。自然の中で過ごす時間が多い方がよい。学校も大切だが、昆虫や自然が好きなことはもっと大切だ。
 ぼくは日高敏隆先生に学問だけでなく、多大なる人間的な影響を受けた。偉い先生なのに、権威主義的なところが全くないのがすごいなと思った。
 学者も写真家も、研究や写真を撮ることも重要だが、人間社会とコミットすることの必要性も何となく教わったような気もする。
 個々の生物には、その種独特の世界があり、その種を構成する個は全くそんなことは考えていないというのが面白かった。
 日高先生の弟子(勝手にそう思っている)でなければ、今のぼくはないと思う。昆虫写真家に限らず、写真家は先人から技術や知識を学ぶのではなく、考え方や生き方を学ぶことが大切なのかなと思う。
 何かを目指したとき、人生の岐路はいくらもある。その時が実はチャンスだ。たとえばぼくが日高先生に「先生をしながら写真を撮ったらどうだろうか」と聞いたときに、それは良くないというようなことをおっしゃられたわけだが、それがチャンスなのだ。
 そう言われれば一人でやるしかないのだから。そんな時に考えていたらそれでもう諦めたも同然だ。後で悔やんでも時間は後戻りしない。考えるより行動することが大切だと思う。それでうまくいかなければ運と努力がたりなかったと諦めるしかないのだが。
 ともかくもフリーの写真家は「好きこそものの上手なれ」、「案ずるより生むはやすし」の精神は必要だ。そして常に好奇心を持ち続けることだ。幸い昆虫は被写体としてあまりにも多様なのでこの辺は心配はないと思う。
 今日の写真は昨年11月にペルーで撮影した道の写真。ただただ、チョウに導かれて10km以上も歩いた道だ。

 2月のスペシャルコンテンツはクラッシクレンズで撮る小諸日記です。5年ほど前に一生懸命に古いカメラでフイルムを使用して撮った小諸の風景や昆虫写真です。見ていただけたら嬉しいです。
 写真はペルーでチョウに出会った道。ただただチョウに導かれてどこまでも歩いた。2006年11月の撮影。Ricoh GR Digital
◎昆虫写真家への道はいかがだったしょうか。今年は色々試行錯誤して小諸日記を続けています。2月はクラシックレンズで撮影した小諸の風景や虫を1ヶ月連載します。ポジで撮影した写真です。その写真を撮ったカメラを紹介したの小諸日記のリンクもコメントの中に入れます。ご期待ください。
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