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超絶イケメン・シャバーニの素顔とは?性格はフレンドリーで家族との関係性も良好【会えなくなるかもしれない生き物図鑑】

  • 2022年10月6日
  • Walkerplus

野生を身近に感じられる動物園や水族館。動物たちは、癒やしや新たな発見を与えてくれる。だが、そんな動物の中には貴重で希少な存在も。野生での個体数や国内での飼育数が減少し、彼らの姿を直接見られることが当たり前ではない未来がやってくる、とも言われている。

そんな時代が訪れないことを願って、会えなくなるかもしれない動物たちをクローズアップ。彼らの魅力はもちろん、命をつなぐための取り組みや努力などについて各園館の取材し、お届けする。今回は、名古屋市・東山動植物園の近藤裕治さんに、ニシゴリラについてお話を聞いた。



■国内では珍しい群れ飼育で、現在5頭が生活
――東山動植物園のニシゴリラといえば、SNSで「イケメンゴリラ」として話題になったシャバーニが有名。同園では現在シャバーニ(オス・26歳)、ネネ(メス・1973年来園、野生由来のため正確な年齢不詳)、アイ(メス・19歳)、シャバーニの息子・キヨマサ(9歳)、シャバーニの娘・アニー(9歳)の5頭を飼育中だ。

ゴリラの寿命は飼育下では50年程度と言われています。ネネは日本の動物園の中では最高齢ではないかと思われます。シャバーニは、今が男盛り。彼はオランダの動物園で生まれ、オーストラリア・シドニーのタロンガ動物園に群れごと移動しました。その後、兄のハオコとともに来日。ハオコは東京・恩賜上野動物園にいます。

シャバーニが群れを離れ、1頭だけで東山動植物園にやってきたことを「寂しいのでは?」と思われるかもしれませんが、実のところオスのゴリラが群れから離れるのは野生下では当然。シャバーニにもハオコにも不安はあったでしょうが、群れから離れるのはあくまでも自然の流れです。当園でもそろそろ、キヨマサの今後について考えなければいけない時期に来ています。

■フレンドリーで、性格も優しいシャバーニ
――5頭が一緒に暮らすシャバーニファミリー。その家族関係はどうなのだろう。

シャバーニファミリーの関係は良好のようです。たまに、シャバーニが家族に追いかけられていたりして、楽しそうにしていますね。本来、ゴリラのシルバーバック(群れのリーダー)はどっしりしていて家族にリスペクトされる存在なのですが、シャバーニが来日したころ、すでに年長のネネと、オキというもっとおばあちゃんのゴリラがいました。シャバーニはこの2頭にかなり叱られたこともあったのですが、それをアイが見ていたため、ちょっとリスペクトがなっとらんな、と思うこともありますね (笑)。

本来ボスはもっと怖く、威厳のある存在。でも、よく言えばシャバーニはフレンドリーな性格。彼は人間にも優しいですよ。来園当時、オーストラリアから来た飼育係と一緒に世話をしましたが、私たちをすごく受け入れてくれたのを覚えています。

ボスの役割は、群れを外敵から守ること。野生の映像などを見ると、ドーンと構えたボスに子供たちが寄っていって、頭の上に乗ったり、背中を転がったりして、好き勝手に遊んでいるところが見られます。でも、キヨマサやアニーは、特にシャバーニの体でそういった遊びはしていませんでした。シャバーニは子供たちを見守るような感じでしたね。

■イケメンと呼ばれるようになった理由とは?でも、ゴリラの本当の事情なども知って
――シャバーニは性格もイケメンのようだが、彼がSNSで人気になったきっかけや理由はあったのだろうか。

当初は旧獣舎に貼ってあったアイの写真が、SNSでイケメンと話題になったようです。でも、アイはメスなので、自然とオスのシャバーニがイケメンともてはやされるようになって、一気に話題になり盛り上がっていきました。

ゴリラは目の上が出っ張っていますが、シャバーニは他のゴリラより少し低めで、目の表情が分かりやすいのがイケメンだと思われる理由かもしれませんね。でも、動物園としては外面よりも内面、あるいはゴリラの本当の事情などを発信していきたいと考えています。

■鉄の檻を曲げるほどの腕力に驚き!
――東山動植物園のゴリラの飼育の歴史は長く、1959年にメス2頭とオス1頭がやってきて以来63年間、途切れていない。近藤さんが初めて獣舎(現在は新しくなっている)に入った時、直径3センチぐらいある檻の鉄棒や、トビラが曲がっているのを見て驚かされたという。

先輩に「なんで鉄棒が曲がっているんですか?」と聞いたところ「ゴリラが曲げた」との答えが。これはかなり前の話で、曲げたのは過去にいた個体です。腹に据えかねることがあったのか、自分の力を誇示するためだったのかはわかりませんが、かなり力が強いんだなという印象を持ちました。

――実際にニシゴリラは力が強く、握力も相当だという。

握力は測ったことがないのではっきりとはわかりませんが、メスのアイはちょっとぽっちゃりで128キロありますが、その体重を片手で支えることができるので、相当な力があることが分かります。ちなみにシャバーニの体重は、280キロぐらいと聞いています。

■ヒトと同じ病気にかかる。健康管理には細心の注意を
――頑強な肉体を持つニシゴリラではあるが、デリケートな点も多く、健康管理には神経を使う。

ニシゴリラやチンパンジー、オランウータンなどは類人猿と呼ばれますが、実は人間も類人猿。基本的に類人猿は同じ病気にかかります。つまり、人間の病気である風邪やインフルエンザ、コロナにも感染するということです。そのため、飼育員が病気にならないよう気を付けるとともに、ニシゴリラにも感染させないよう注意しています。

コロナ禍以来、マスクや手袋が常識になりましたが、類人猿の飼育現場はそれ以前からマスクと手袋を着用しています。海外ではゴリラが新型コロナウイルスに感染したため、他のゴリラにワクチンを打ったという話も聞きましたが、日本ではそうした対応はしていません。

仮に何か対処するとすれば、風邪用の抗生物質を投与することになるでしょう。類人猿には基本的に人間が使う薬を使用するため、ゴリラやチンパンジーにも、総合感冒薬などを与えています。

――ニシゴリラに対しても、人間の病気に対するような気配りが必要だ。だが、言葉の通じない彼らの健康チェックは、どのようにしているのだろうか。

まずはフンであったり、えさを食べているときの動作や表情を確認します。たとえば、いつも一番に食べに来る個体が来ない場合や、いつも勢いよく食べている個体があまり食べない場合は、何かおかしいなと。また、フンは大きさや形状が個体によって違うので、そういったものを見慣れておくと、「今日は便が緩い」などの判断ができます。

■糖質オフでオスの心臓疾患が減少
――健康チェックとともに、普段の食生活が大切な点も人間と同じだ。

昨今、世界的にゴリラのエサは野菜がメイン。糖質をできるだけ摂らない食生活になっています。昔はリンゴやバナナをキロ単位で与えていましたが、ボスはそれを全部食べてしまうため、心臓疾患で死んでしまうケースが多かったのです。そこでエサを見直し、野菜中心になりました。その結果、現在は心臓疾患の症例は少なくなってきています。

ちなみに、彼らは旬野菜が好きなようで、夏の白菜はあまり食べないのですが、冬の白菜は好んで食べてくれます。あとは普段の生活でストレスを与えないようにしています。

その他、メスゴリラの体のサイクルのチェックも重要。発情や月経を確認する際、チンパンジーなら陰部がむき出しなのでわかりやすいのですが、ゴリラは毛におおわれているため、直接触って出血の有無を確認し、個体のサイクルを把握します。ゴリラは人間とほぼ同じ30日程度のサイクルで月経があるので、交尾を確認して次の発情が来ない場合は、人間の妊娠検査薬を使用してチェックします。チンパンジーも同様です。

■高い知能を持つ彼らと、意思が通じ合う喜びがある
――こうした陰の努力があって、新しい生命が誕生する。それは飼育担当者にとっても大きな喜びだ。そのほかにニシゴリラを飼育するうえで感じる喜びや楽しさを聞いてみた。

赤ちゃんの誕生はもちろんですが、高い知能を持つ動物たちと意思が通じ合った時や、こちらの言うことを理解してもらえた瞬間にも喜びを感じます。私は今年度からゴリラとの関わりが増えたのですが、当初は警戒されていたのか近寄ってきてくれませんでした。それが、ある日呼んだらこちらに来てくれた時は、とてもうれしく思いましたね。

また、木の枝が扉に引っかかっていた時があったのですが「それ取って」と頼むと取ってくれたり、ちゃんとこちらの言うことを理解してくれていることがわかるのも喜びの一つ。彼らがどこまで理解できているかはわかりませんが、それもトレーニングあってのこと。こちらが慌てている時は、嫌がらせのように動かない場合もあります。表情などを見ながら判断していると思いますね。

昔先輩に「夫婦喧嘩すると動物に影響するよ」と言われたことがありました。イライラしている時には彼らはそれを察して、わざと外に出なかったり、移動しなかったりすることがあるのです。だから我が家で喧嘩をしてもなるべく察知されないよう、ポーカーフェイスで接するように努めています。

■海外に比べ繁殖例が少ない日本。野生では人間との軋轢が
――東山動植物園ではニシゴリラの繁殖にも成功し、現在5頭が生活しているが、国内のゴリラの飼育数は減少傾向にある。

1980年代後半、日本国内のゴリラの飼育数は最大で51頭に達し、各地で見ることができましたが、現在は6施設で20頭にまで減少しています。ゴリラに限らず、1970年代ごろまでは野生から動物園に動物を導入することが世界中で当たり前に行われていました。

しかし、野生動物保護の観点から取引に厳しい規制がかかるようになり、現在の動物園では繁殖と動物園間の個体の異動によって、展示動物を維持しています。ゴリラやアフリカゾウなど、群れで生活する知能の高い大型動物を繁殖させられる施設を持った動物園は限られていて、飼育頭数は減少傾向に転じました。

日本国内で言えば、海外に比べて繁殖の事例が少なかったのも理由の一つ。そもそもオス1頭、メス1頭など、群れを形成しない飼い方です。それに対して、海外では群れ飼育を導入し、しっかりケアしてきました。現状、国内で群れ飼育をしているのは3施設だけ。そういう点で日本は海外に後れを取っています。

野生での個体数が減少した原因としては、森林伐採やレアメタルの採掘、焼き畑農業、内戦などによって生息地が減少したことや、伝染病、さらにはブッシュミートとして、食用にするための密猟など人間の活動が影響していることが挙げられます。こうしたことを非難するだけではなく、現地の人間も食べなければいけないため、支援も必要です。

ゴリラの保護区は何カ所かありますが、政情不安で内戦が勃発したりすると、人々がそこに逃げ込む場合も。「ゴリラの保護区だから人間はそこに入るな」というのは、遠くで暮らす人間の勝手な言い分ですね。

■来園は雨でお客さんの少ない日に。リラックスしたゴリラたちの姿を見て
――東山動植物園のニシゴリラというと、シャバーニだけが取り上げられがちだが、近藤さんは「シャバーニだけではなく、個体と個体の関係性を見てほしい」と訴える。

東山動植物園はシャバーニがボスとして存在していて、その下に4頭がいる。野生のゴリラの群れに近いと感じています。1頭1頭を見ていると、それぞれの関係性もわかってきますよ。お客さんは個体を識別できない場合が多いので、だいたいどの個体も「シャバーニ」とおっしゃいますが、まずはゆっくり見てください。

シャバーニはひときわ大きいので見分けがつきますし、見分けがつけば違った面白さも出てきます。ゆっくり時間をかけてゴリラを見た後は、隣の獣舎にいる同じ類人猿のチンパンジーと見比べるのも、面白いと思います。

動物たちをゆっくり見るなら、雨でお客さんが少ない日がおすすめ。のんびりくつろぐニシゴリラの姿を見るチャンスです。普段とは違う、リラックスモードのゴリラたちを見に来てください。

取材・文=鳴川和代

※新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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