庭づくりの素材はいろいろありますが、ここでは和モダンの庭に合う樹木・下草・コケ・石・砂利・水鉢・ライトをご紹介します。和モダンの庭は、日本らしい独特の雰囲気で、癒しとやすらぎを与えてくれます。
1.「樹木」
和庭向きの樹木は数多くありますが、よく使われるのは、アオキ、アセビ、ウメ、クロガネモチ、クロマツ、ゴヨウマツ、サザンカ、サルスベリ、スギ、ダイスギ、ツバキ、ハウチワカエデ、ヒメシャラ、マンサク、マキ、モクセイ、モッコク、モミジ、ヤマボウシなどです。
■常緑樹=アオキ、アセビ、クロガネモチ、クロマツ、ゴヨウマツ、サザンカ、シマトネリコ、シラカシ、スギ、ダイスギ、ツバキ、トキワマンサク、マキ、モクセイ、モッコクなど。
■落葉樹=ウメ、エゴノキ、カツラ、サルスベリ、シダレモミジ、ハウチワカエデ、ハナミズキ、ヒメシャラ、マンサク、モミジ、ヤマボウシなど。
樹高が0.3~1.5m程度の樹木を低木、3m以上の樹木を高木といいます。
■低木=アオキ、アセビ、サザンカ、シダレモミジ、トキワマンサクなど。
■高木=エゴノキ、カツラ、サルスベリ、シマトネリコ、シャラ、シラカシ、ダイスギ、ツバキ、ハウチワカエデ、ハナミズキ、ヒメシャラ、モクセイ、モミジ、ヤマボウシなど。
アオキ
ミズキ科の常緑灌木で、成長はやや早く、陰樹の代表格。日当たりの良くない小庭向き。冬に赤い実をつけます。
アセビ
ツツジ科の小常緑喬木で、細長い葉がよく茂ります。日陰にも強く、よく蹲踞に添えて用いられます。写真提供=(株)安行庭苑
エゴノキ
エゴノキ科の落葉広葉小高木で、自然のままの姿が美しい。花期は5~6月、下向きに花が咲きます。写真提供=(株)四季 サンリブ
カツラ
カツラ科の落葉広葉高木で成長が早く、ハート型の葉が特徴。花期は5月、秋には葉が黄色く染まります。
サザンカ
ツバキ科の常緑広葉小高木で、成長はやや遅く、日陰にもよく耐えます。花期は10~2月で、花の少ない時期に貴重な樹木です。写真提供=(株)四季 サンリブ
サルスベリ
ミソハギ科の落葉広葉小高木で、成長が早く、7~9月に花が咲きます。花色はピンク、白、紫など。写真提供=(有)庭樹園
シダレモミジ
カエデ科の落葉広葉低木で成長が早く、名前の通り、枝が垂れ下がるのが特徴。花期は4~5月。写真提供=ハンワホームズ(株)
シマトネリコ
モクセイ科の常緑広葉高木で、もともとは南国の樹木。大きく育つので広いスペースが必要。花期は5~6月、白い円錐型の花が咲きます。写真提供=(株)四季 サンリブ
シャラ
ツバキ科の落葉高木で、シャラノキ、ナツツバキともよばれます。株立ち樹形が美しく、剪定もそれほど必要としません。花期は6~7月。写真提供=ハンワホームズ(株)
ダイスギ
スギ科の常緑高木で、成長が早く、刈り込みにも耐えます。株から数本の垂直枝が出るように仕立てます。花期は3~4月。写真提供=(株)四季 サンリブ
ツバキ
ツバキ科の常緑喬木で、成長は遅く、日陰にもよく耐えます。数多くの品種があり、寒さ・塩害・煙害に強いので、庭木向き。花期は9~12月。
トキワマンサク
マンサク科の常緑低木で、成長は早く、花は白花と紅花があります。写真は紅花のベニバナトキワマンサク。写真提供=(株)四季 サンリブ
ハウチワカエデ
カエデ科の落葉広葉高木で、成長が早く、移植にも耐えます。花期は5月。
ヒメシャラ
ツバキ科の広葉高木で、成長が早く、花期は6~7月。写真提供=(株)安行庭苑
マキ
主木としてよく使われます。同じマキ類でも、コウヤマキはスギ科の常緑針葉高木で、イヌマキ、ラカンマキはマキ科の常緑針葉高木。写真はコウヤマキ。写真提供=(株)安行庭苑
モクセイ
モクセイ科の常緑喬木で、キンモクセイとギンモクセイがありますが、香りが良く好まれるのはキンモクセイです。花期は9~10月。
モミジ
カエデ科の落葉喬木で、春の新緑、秋の紅葉の美しさも格別です。ヤマモミジ、イロハモミジなどが有名。写真提供=(有)庭樹園
ヤマボウシ
ミズキ科の落葉広葉高木で、成長が早く、主木としてもよく使われます。品種は多く、ベニバナヤマボウシは8月に赤い実が成ります。写真提供=(有)庭樹園
2.「下草(したくさ)」
下草は、樹木・灯籠・庭石などの添えとして根元のまわりにあしらう草本類のことで、草本類以外に低木類やササ類、シダ類なども下草とされます。
草本類ではタマリュウ、キチジョウソウ、低木類ではヤブコウジ、カラタチバナ、ササ類ではコクマザサ、シダ類ではイヌワラビ、クサソテツなどが下草としてよく使われます。
オオクマザサ
イネ科の常緑低木で、日陰でもよく育ちます。グランドカバー向き。
キチジョウソウ
ユリ科の常緑多年草で、葉が細長く、先端がとがっています。
ギボウシ
ユリ科の多年草で、半日陰でもよく育ち、縁どりにもよく使われます。
セキショウ
サトイモ科の常緑多年草で、日陰でもよく育ちます。写真提供=(有)庭樹園
シラン
ラン科の宿根草で、楕円形の葉が特徴。初夏に美しい花が咲きます。写真提供=(株)四季サンリブ
タマリュウ
本来の名前はユリ科のリュウノヒゲ。日陰に大変強く、コケの生えない場所に適しています。
ツワブキ
キク科の常緑多年草で、半日陰にも強く、11月に黄色の美しい花が咲きます。
トクサ
トクサ科の常緑多年草で、直立状に育つのが特徴。写真提供=(有)庭樹園
ハラン
ユリ科の多年性草本で、柄のついた常緑のツヤのある大きな葉が特色。半日陰に適しています。
フッキソウ
ツゲ科の常緑灌木で、葉先にギザギザの切れ込みがあるのが特徴。半日陰に適していて、群植にするとみごとです。
ホトトギス
ユリ科の常緑多年草で、初夏から秋にかけて淡紫色に斑点のある花が咲きます。
ヤブラン
ユリ科の常緑多年草で、葉は細長く、斑入りのものもあります。夏から秋にかけて、紫色の小さい花が穂状に咲きます。
3.「コケ」
コケは地衣類を代表するもので、下草とともに、和風の庭には欠かせない素材です。
地衣類とは、地表の全体を覆っていく、高さのごく低い植物の総称で、グランドカバーの一種です。
(取材協力=(株)オンリーワンクラブ)
カモジゴケ
シッポゴケ科のカモジゴケは、日陰で生育し、緑が濃いことが特徴です。
スギゴケ
やや日陰の湿った地上などに群生します。寄せ植えや盆栽でも楽しめます。
スナゴケ
開けた日当たりの良い場所で、砂質や岩の上に大きな群落をつくります。和風の雑木の庭にしっとりとした落ちつきを与えます。
ハイゴケ
やや日当たりの良い場所や草原などの木漏れ日を好みます。
ヒノキゴケ
「イタチのしっぽ」の別名でも知られ、フワフワとやわらかな姿が魅力。日陰を好み、乾燥を嫌います。
マンネンゴケ
日陰を好みますが、多湿が苦手。乾き気味の土でも緑を保ちます。
ミズゴケ
吸水性が非常に高いコケで、天然の過湿植物ともいわれます。明るい日陰を好み、乾燥を嫌います。
ヤマゴケ
日陰で育つ白緑色苔。空気中の水分のみで生育します。清楚な表情で雑木の庭を彩ります。
丘マリモ(ヤマゴケ)
インテリアや美しい和庭のアクセントとして人気の苔玉。器と合わせたり、踏石の上に置いたりと楽しみ方もさまざまです。
コケには、日光や乾燥に強いもの、半日蔭・日陰に適したもの、湿った場所に合うものなどがあり、屋上緑化・シェードガーデン・グランドカバーに利用できます。
コケは、ヤシマット・ネットマットなどの形状で取り扱われています。
ネットマット
グランドカバーや屋上緑化に、手軽に加工できるシート状のコケが大人気です。ネットマットは、ピートモスを土台にネットで包んだもので、やわらかいシートなので、地面の凹凸にもなじみやすく、自然に土壌に定着します。
ヤシマット
ヤシマットは丈夫なヤシの繊維でできたマットにコケを生育させたもので、軽くて扱いやすいのが特徴。屋上緑化などに最適です。
<お問い合わせ先>(株)オンリーワンクラブ
※本誌のP.114~115は(株)オンリーワンクラブのカタログ「PLANTS」のP.140~141を著作権者の了解を得て転載し、一部加筆したものです。
コケを使用した美しい日本庭園
4.「石」
古くから和風の庭によく使われてきた石材。庭石の使い方は「敷く」「積む」が基本で、素材は自然石が原則です。
自然石では、古くから日本庭園で庭石として使われている安山岩・花崗岩・粘板岩といった国産のほかに、最近では白やベージュなど淡い色合いの石英岩や石灰岩の輸入石もふえてきました。
一方、人工の石ではコンクリートを再利用した擬石もあります。平板のものは、アプローチ床面・飛石などによく利用されます。
大谷石
栃木県宇都宮市大谷に産する石。軟質なため加工が容易で、門柱・石積みなどに使われます。写真は大谷石のアプローチ。すき間は英虞湾石を敷いています。写真提供=(株)三樂
三波石
群馬県の三波川とその周辺から産出する石。写真は存在感のある三波石で水の流れを表現しています。写真提供=(株)安行庭苑
石英岩
堆積岩の一種で、成分中に石英を多くふくむ石の総称。写真は方形(四角形)の石英岩でつくったテラス。写真提供=(株)四季 サンリブ
丹波石
京都府亀岡市産の庭石。丹波鞍馬石・丹波鉄平石・丹波玉石の3種類があります。写真は丹波石の乱貼りのアプローチ。写真提供=吉村造園土木(株)
鉄平石
長野県佐久・諏訪地方産の板状の石。写真は鉄平石の乱貼りの延段。整然とした御影平板との組み合わせ。写真提供=(株)安行庭苑
粘板岩
泥が圧力による変成を受けて固く緻密になり、薄板状に割れやすくなった岩石。写真は木材を思わせるインド産粘板岩と厚小端寸法のインド砂岩。写真提供=(株)三樂
御影石
兵庫県六甲山系から産出される淡紅色の花崗岩。写真は御影石の園路。脇は大磯砂利敷き。写真提供=(有)庭樹園
白御影石
白系の御影石で、細目の御影石として墓石にもよく使われます。写真は白御影石の門柱と石柱。写真提供=ソーマオリジナルガーデン(株)筑波ランドスケープ
六方石
天然の状態でおよそ六角形の柱状になっている石。写真は六方石の石組みによる坪庭。砂利は白川砂利・川砂利。写真提供=(株)四季 サンリブ
5.「砂利」
砂利が庭に広く使われるようになったのは、室町時代後期に枯山水庭園がつくられるようになってからだといわれています。
砂利には、ふつう砂紋という模様を入れます。砂紋は、砂粒が大きいので、しっかりと入れれば多少の雨ぐらいで消えることはありません。
砂利には多くの種類があり、産地名・色・形状などによりさまざまな名称でよばれています。
お庭のメンテナンスを考えると、砂利の下にモルタルを打ち、排水設備を設けて汚れないようにするとよいでしょう。
伊勢砂利
三重県の菰野地方から産する花崗岩を砂利状に砕いたもの。写真は水をイメージした伊勢砂利敷きの庭。写真提供=(株)安行庭苑
大磯砂利
神奈川県の大磯海岸に産する黒砂利。写真は御影石の園路(左)の脇に大磯砂利を敷いたもの。写真提供=(有)庭樹園
サビ砂利
赤味がかった錆色が特徴の化粧砂利。錆砂利。写真は坪庭の灯籠の足元に植えたスギゴケとサビ砂利敷き。写真提供=(株)四季 サンリブ
白川砂利
京都府東山北白川産の3分(9mm)から5分(15mm)の大きさの砂利。写真は白川砂利の枯山水。写真提供=(株)四季 サンリブ
白玉砂利
白系の丸く粒のそろった大きめの砂利。写真は白玉砂利敷きの和庭。写真提供=吉村造園土木(株)
那智黒砂利
三重県熊野市に産する光沢のある純黒色の砂利。大きさは3~10cm程度。写真は坪庭の床面に敷いた那智黒砂利。写真提供=(有)庭樹園
南部砂利
京都府南部地方に産する赤茶色の丸みがある砂利。写真は御影石の延石と南部砂利敷き。青い砂利は那智黒砂利。写真提供=(株)四季 サンリブ
化粧砂利
砂利の一種で、表面に着色・塗装・研磨・切削など意匠上有効な仕上げをしたもの。写真は化粧砂利で水の流れを表現した和庭。写真提供=植忠
豆砂利
径10mm以下程度の粒径の砂利。写真は木曽石の土留の犬走りに豆砂利の洗い出し仕上げを施工したもの。写真提供=吉村造園土木(株)
6.「水鉢」
水鉢とは手水鉢の別称で、茶庭で手や口を清める手水を使うための、水を入れておく器のことです。
大部分は石でつくられていますが、金属製・陶器製・木製のものもあります。
底の浅い平らな陶製または金属製の花器を水盤ともいいます。
既製品のほか、廃物となった石臼などを水鉢として再利用することもできます。
■縁側前に水盤と景石で水場のしつらい。写真提供=ソーマオリジナルガーデン(株)筑波ランドスケープ
■水盤のような水鉢。写真提供=(株)安行庭苑
■信楽焼きの大型水鉢。写真提供=(株)四季 サンリブ
■和モダンの小庭のシンプルな水鉢。写真提供=direct和
■ステンレス製の筧から流れ出た水が焼き物の器の内側を銀色に染めたかのようにみせるイメージ。写真提供=direct和
■石臼を水鉢に再利用。写真提供=(株)三樂
■御影石製の石臼を水鉢に再利用。写真提供=ソーマオリジナルガーデン(株)筑波ランドスケープ
■浴室前の飾り棚上の陶器製水鉢。写真提供=(株)四季 サンリブ
■ポイントの手水鉢を存在感を持たせながら風合いが出るようにデザイン。写真提供=direct和
■羅照の水鉢(枝洋一氏が創作した水鉢)。写真提供=ソーマオリジナルガーデン(株)筑波ランドスケープ
■2階ベランダの和庭の陶器製水鉢。写真提供=(有)庭樹園
■五行の水鉢(枝洋一氏が陰陽五行をデザインした、風水的な意味を持った水鉢)。写真提供=ソーマオリジナルガーデン(株)筑波ランドスケープ
7.「ライト」
伝統的な日本庭園では灯籠に明かりを灯すのがふつうですが、和モダンの庭では、電気を使ったガーデンライトがおすすめです。
特に、下から照らすアップライトは、お庭の添景物や木々を照らしあげ、幻想的な雰囲気を醸し出し、昼とはちがう表情のお庭が楽しめます。
手水鉢の中に水中照明を入れてもすてきです。
気になる電気代も、低電力消費のLEDライトや太陽光を利用するソーラーライトを使えば安心です。
■和風のガーデンライト。灯籠の明かりでほんのりと。写真提供=(有)庭樹園
■防水のライトでナイトガーデンが楽しめるように。夜は一段と雰囲気が出ます。写真提供=(有)庭樹園
■蹲踞まわりの夜間照明。ポールライトがやさしく照らします。写真提供=(株)四季 サンリブ
■水鉢がライトアップする庭。羅照の鉢はオリジナル製作。明かりが灯ると、昼間とはちがった景色が楽しめます。写真提供=ソーマオリジナルガーデン(株)筑波ランドスケープ
■ライトアップしたアプローチ。まるで京都の町屋のようです。写真提供=ソーマオリジナルガーデン(株)筑波ランドスケープ
■道標形灯籠。夜の園路を明るく照らします。写真提供=ソーマオリジナルガーデン(株)筑波ランドスケープ
■LEDの「魅せる」デッキライティング。ローボルトで節電効果もバツグン。写真提供=(株)四季 サンリブ
■スポットライトが門柱を照らし、木目を浮かび上がらせます。写真提供=ハンワホームズ(株)
■夜ならではの光と影の演出。照らされる壁面に浮かび上がる植栽の影が美しい表情を見せます。写真提供=ハンワホームズ(株)
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