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Vol.28 「和のくらし」おもてなしスタイルは・・・自然との共生
和のコンセプトデザイナー/ 廣瀬輝子さん

  • 2014年4月18日

ボストンで、妖精人形づくり…「和の子」

ボストンで日本の生活文化について講演の廣瀬さん

ボストンで日本の生活文化について講演の廣瀬さん
ボストンで日本の生活文化について講演の廣瀬さん
 1998年米国ボストンの大学で、マクロビオテックの久司道夫先生の夏季セミナーで5日間日本の生活文化について講演した廣瀬さん。マクロビオテックの食事を1日3食、5日間体験し、体の変化を実感させるというもので、世界各国から800名くらいの栄養関係の仕事をしている人、学者たちが多く集まっていた。その間大学に宿泊して様々なセミナーに参加し、数日ゆっくり過ごすという体験セミナーです。

 「私は季節の行事、活け花など日本の生活文化に関する講座を担当させていただき、3日目に精霊(妖精)人形を創る講座を開催。『今どき大人が針を持って人形を創るなんて、どうかな?』と思っていましたが、カナダ、スイス、アメリカ、イタリアなどの人たちが15人ほど集まりました。まず、『この人形は、日本では古い時代、貴族の人たちの間で子供が生まれると、枕元に子供のお守りとして置いた“這う子人形”というもので、それを原型に私がデザインしたお守りの妖精だ』という説明をしました。
 次に材料を渡し、作り方の説明を。長方形の四隅の角が手足となるように四隅を縫い、綿を入れておなかを閉じ、大きな銀杏の実に顔を書いた物を表情を付けた角度で張り付けるというような作業です。はじめはテーブルを囲んで全員が黙って針を動かしていました。

ボストンのセミナーで妖精人形をつくる男性
ボストンのセミナーで妖精人形をつくる男性
 やがて、誰かが『私の自分の国にも、こんな伝説の妖精がいるのよ』という話を始めました。するとまた他の誰かが、『自分の国には火守りのこんな妖精がいるよ』と紙に絵を書いて説明する。こんな雰囲気の国際色豊かな井戸端会議が始まり、一同がみな同じ目的に向かって手を動かしながら、おしゃべりをするというのはいいものです。言葉なんかあまり解らなくても、何となく言っていることが解るのも面白い。自分の身体を使って人形の姿をして見せる人もいて、一同大爆笑することもありました。約2時間、『できたぞ!』と誰かが叫ぶと、その人に集まって、『いいね!』『私の子はこの子、私の子のが可愛い』と、互いの子供を自慢し合う。最後までじっくり取り組んで仕上げていたのが、男性で、出来た時初めてニタリと口元をゆるませていました。彼は、糸を長くして、生まれたばかりの人形を首に下げ、その人形を両手に挟んで拝むようにして顔を寄せ、そっと口づけをした。そして、『ありがとうございました』と丁寧に頭を下げて部屋を出て行かれた。

のちに、この人形を「和の子」と呼ぶことに
のちに、この人形を「和の子」と呼ぶことに
 夕方、食堂に行くと15人全員が集まって、人形を首に下げて見せ合い、子どもみたいに嬉しそうでした。他の人が寄ってきて『どこで作ったの』『どこの教室でやっているの』と聞いてました。それからは、首に人形を下げた人はなんだか自慢そうに歩いているように見受けられました。これは“親バカ”かな?」という廣瀬さん。妖精人形には確かに不思議な力があるらしいです。


季節と年中行事、歴のこと

食の総合商社の商品開発プロジェクトチーム 廣瀬さんが、食の総合商社の商品開発プロジェクトチームでスーパーバイザー向け社員教育の1部門を担当していた時のこと。内容は季節の捉え方、年中行事と行事食、風土と食、といった日本の食文化の背景をトータルにお伝えした上で、食のグランドデザインの方向付けをするといったもの。
 「教育が始まって2年位過ぎ、教育成果が現れ始めた頃、ビジネス系テレビ局の夜の人気番組で「食ビジネス最前線の動向」というタイトルでこのプロジェクトチームが取材を受けることになりました。顔に見覚えのある初々しい社員が、テレビ画面で現場の年輩社員に対し、季節のとらえ方、催事の店舗イメージなどを的確に指示し、自信に満ちた凛々しい彼の表情がアップで映し出された時には、思わず自分の息子を見るような愛しい思いがこみ上げました。20分位の放映でしたが、担当部長は翌日、朝から終日、前夜の番組についての問い合わせ電話に追われたそうです。
 実はこのチームの教育カリキュラムが最終決定される折、役員の数名が『こんな当たり前のことを今更会社で教育するまでもないだろう!』と異議を申し立てたそうです。しかし、実際にスタートしてみれば、かつては当たり前だったことを今の若者たちがいかに知らないかが明らかになりました。また、自分たちは当然知っていると思っていたはずの団塊世代の役員たちも、年中行事や暦について、自分たちが無関心だったことに気付くきっかけになったといいます。一番驚いたのは土用が年4回あるということを多くの人たちが知らないでいることだ。何時も『えっ?』という感じで会場にどよめきが起きていました」

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