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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第83回 ペットボトルリユース実現のための課題

  • 2010年12月9日

特集/ペットボトルのリユース実現に向けて ペットボトルリユース実現のための課題 国連大学名誉副学長、東京大学名誉教授、 製品評価技術基盤機構理事長 安井 至さん

リサイクルが主力

 2008年に環境省の「ペットボトルを始めとした容器包装のリユース・デポジット等の循環的な利用に関する研究会」が当時の鴨下環境相の鶴の一声で立ち上がりました。しかし、ペットボトルをリユースに変えていくのは実際にはかなり難しい状況です。

 ペットボトルの生産量は年々増えています。1993〜2006年までの統計によると、10数万tだったものが右肩上がりで54万tにまで増えています(図)。このような背景から2000年に容器包装リサイクル法が制定されました。法律施行で回収率(リサイクル率)は60数%にまで上がっていますが、その主要な原因は同法によって始まった事業所からの回収です。
 リサイクルを推進するにはいろいろな問題があります。日本国内で循環させるのが理想的ですが、実際は集めたものを中国に持ち出して使うケースが最も多くなっています。こんな状況にありながら、2000年に循環型社会形成推進基本法を作り、第1にリデュース(発生抑制)、第2にリユース(再使用)、第3にリサイクル(再生利用)と優先順位を明記しています。第4に熱回収をして、最後は適正処分、つまり埋立てをする。その優先順位で取り組むべきだという法律ですが、実際には3番目のリサイクルばかり一生懸命やってきたというのが日本の現状です。

ペットボトルの生産量と分別収集量の推移
作成=ポンプワークショップ

ペットボトルの3R

 ペットボトのリデュースについては、軽量化が挙げられます。日本コカ・コーラの「い・ろ・は・す」のボトルの重さは12gで、10年前のペットボトルは32gでしたから、計算すると37%の発生抑制になっています。ただ、おそらくこれが限界で、これ以上の軽量化は難しいでしょう。

 次にリサイクルですが、回収したものを再びペットボトルに加工することが比較的環境負荷が低いといわれますが、革命的に低いのではありません。また、半分以上は繊維系に姿を変えています。次に多いのが卵パックなどのシートで3〜4割。その他は、植木鉢などの成型品や結束バンドになり、再びペットボトルになるのは約3%(2006年度)だけです。

 そしてリユースですが、日本で再使用されているのは瓶だけです。しかし、リータナブル瓶の使用量は年々減っており、1997年度は400万本だったのが、2003年度には200万本を割り、その後もどんどん減っています。一方、ワンウェイ瓶の出荷量は150?200万本弱です。昔はビールといえば瓶が多かったのが、最近は自宅では缶ビール、飲み屋では生ビールを飲むことが多く、ガラス瓶は急減しています。

 以上が3Rの現状です。リデュースがトップでその次がリユース、リサイクルといった優先順位通りにはいっていません。一番根本的な理由は、そもそも3Rは廃棄物行政の一部で、廃棄物行政に関して最大の問題は最終処分地が足りなくなるということですから、最終処分する量を減らそうと行政は躍起になっていました。
そろそろ、3Rの三つのRを適当に組み合わせて、資源の有効活用や廃棄物の減量を目指すタイミングではないかと思います。3R政策と温室効果ガスの排出量削減政策と合体するなど、いろいろな対策を組み合わせる必要があります。

 今後の3Rの方向性を提案したいと思います。まず、最終処分地の保全だけでなく、資源エネルギーの保全に取り組むべきです。それから、常にリスクを正確に把握し、ベネフィットを重視することです。今は何でもリサイクルしようとしています。食べ残しがくっついたプラスチックのフィルムなどは絶対に燃やすべきなのですが、リサイクルしようとしてお湯で洗うことがあります。すると、お湯に使ったガスで洗っているプラスチックの3〜4倍のエネルギーを使うことになります。そういうことも考えて、選択したリサイクルをすることが必要になってきます。
 ペットボトルのリユースにはどのようなリスクがあるか。オランダの研究機関TNOは健康リスクを報告しています。また、風味への悪影響防止には検査システムの導入が必要だとしています。

 環境省の研究会では、ペットボトルをリユースしているドイツのコカ・コーラを見に行っています。しかし、ドイツ全体を見ると徐々にワンウェイ使用が増えています。理由は二つあります。リユースの場合、検知システムの導入などによってコストメリットが少ないということが一つ。もう一つは、ドイツには容器がリユースされている割合が80%を下がるとワンウェイボトルにもデポジットをかけるという法律があります。数年前にリユースの率が下がってきてワンウェイのボトルにもデポジットがかかっているのです。利用者は空いた容器をスーパーに持っていって回収機に入れると、レシートのようなものが出てきて、それをカウンターに持って行くとその分を割り引いてくれるので、結局ワンウェイで何が悪いのか、全然わからないのです。本来はデポジットをかけることで市民がリユースに戻るだろうと思ったら、そうはならなかったのです。

ペットボトルをリユースするには

 研究会によるLCA(ライフサイクルアセスメント)の結果では、日本全体を考える広域のシステムでは、オープンでもクローズでもリユースよりリサイクルの方が優位となりました。回収率が高く、輸送距離が短くなれば、リユースの二酸化炭素(CO2)排出量が小さくなる結果が出ています(PETボトル等のリユースによる環境負荷分析結果について)。

 ただ、リユースは一石二鳥どころか一石多鳥な面があります。例えば、地域とのつながりを強くすることにつながります。大阪の能勢酒造では、お酒だけでなくミネラルウォーターとウーロン茶もガラス瓶で飲み屋に宅配し、一緒にウーロンハイに使われます。持ってきて、持って帰ってもらえるので地域の中で事業者と事業者のつながりが強くなります。地元の文化、伝統を守るとか、製品への愛着を深め、リピーターを作るとか、リユースを地域活性化のために使うのは良いのかも知れません。

 現時点での具体的な取り組みとしては、一つは料飲店でのリユースの推進です。和民で日本酒瓶2種類のリユースを始めています。もう一つは、ペットボトルのメカニカルリサイクルで、ペレット化して再びボトルにするものです。米国のFDAが反対しないと宣言しており、コカ・コーラも乗り気になっています。

 3Rはそろそろ根本的な発想の転換が必要です。リデュース、リユース、リサイクルの優先順位と、リユース的な発想を強化するしかありません。リユースが行われればリデュースは自動的に実現します。リユースシステムは、リサイクルシステムよりもコミュニティ的な協調が必要ですが、段々ビジネスライクになってしまうので、どこかが崩れると回らなくなってしまいます。市民、行政、事業者3者の同時変革が必要です。

(2010年4月21日「第2回ペットボトルのリユースに関する研究会」より、文責:GN編集部)


(グローバルネット:2010年6月号より)


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