参加者:
石山さんに質問です。海外のいろいろなところに足を運ばれていると思いますが、海外の経験を踏まえて日本にも導入すべきものや日本のこういうところが将来的に伸びるといった考えがあれば聞かせていただけますか?
石山:
海外で流行っていても、規制や法律の壁があって日本ではできていないものが結構あります。例えば個人の家で作った食事を提供するサービスやライドシェアは日本では基本的にはできません。ヨーロッパを中心に、株式会社が提供するのではない、スケーラビリティ(規模の拡大)を目指すのではないシェアリングサービスも生まれています。例えばその地域でしか使えないサービスをNPOが運用するモデルや、コミュニティにいる人がお金を出しあって成り立たせている組合型のシェアサービスなどです。日本にも生協がありますが、例えば運営の仕組みにテクノロジーが導入されたら今よりもっとすごいことができるようになるなと思いますね。
参加者:
日本人はシェアビジネスが不得意で、中国や欧米などに圧倒的に負けていると聞いたがあります。日本はどこが負けていると思いますか?
石山:
消費者の価値観の問題があると思います。例えば他人の家に泊まる民泊には心理的に抵抗があるとか、他人とのやりとりのトラブルが心配だとか。それから日本はそもそも先進国でクオリティの高いB2Cのサービスが既に確立しているということもあります。中国でライドシェアが流行っているのは、実は、中国企業のタクシーよりもテクノロジーによって管理されたシステムの方が信頼できるという考えがあるのです。
森:
日本で「第二の信頼」がかなり確立されているということの現れとも言えるんですね。
参加者:
私は今大学3年生で、地元の福島の集落支援や復興事業をやっています。温泉が有名でお祭りなどもあるのですが、Uターンする人が少なく、若者を取り戻すことや温泉の有効活用が課題とされてます。シェアリングエコノミーの観点からどういうところに着目できるか、成功事例をお聞きしたいです。
石山:
若者人口が流出する大きな原因は、地域に仕事がないからと言われています。佐賀県多久市はシェア事業を公共事業として提供することで、地域にいながら就労できる機会をつくっています。また、国交省が「関係人口」という、地域に関わる人の人口を増やすことをテーマにしたワーキンググループを開催しているのですが、私のようにいくつかの拠点を持って、その土地に月のうち何日間かは暮らしているという人たちを増やすことで関係性人口が増えるといいなと思います。それは別に、新しいシェアハウスをつくらなくても、例えば、かつては大家族で暮らしていて今は空き部屋の多い高齢者のお宅を活用するだとか、シェアによって共有できるインフラを生み出していくことからもできます。
参加者:
私は欅坂46というグループが好きなのですが新曲を出すたびにタイプの違うCDが複数出ます。稼ぐという視点が強いと結局大量生産・大量消費が変わらずものが溢れる社会になってしまうと感じています。どういう風にシェアリングエコノミーの本質を捉えて活用していけばいいのかは難しい視点だと思いました。
石山:
とてもいい視点だと思います。シェアリングエコノミーのプラットフォームもたくさんできていますが、参入障壁が低いことによって信頼性の低い危ないものも生まれています。政策の介入も必要ですし、消費者としてもリテラシーをあげていかなくては思います。
全体セッションが終わり、ゲスト講師の石山さんから感想のコメントがありました。
石山:
2つのセッションで、学生から上の世代の方まで一緒にお話をさせていただきましたが、「古いけれど新しいもの」という概念が皆さんの間にインプットされたのかなと感じました。何だったらシェアしていけるだろうかということを皆さんで考えていくことが、社会のためにつながっていくと思いますので、是非書き出してみてください。最近出した本(SHARE LIFE-新しい社会の新しい生き方)お読みいただけたら嬉しいなと思います。
緑のgoo 佐藤
佐藤:
「最初にシェアリングエコノミーについてよくわからないという方が多くいらっしゃいましたが、よくわかったという人が増えましたね。そして、行動に移したい人もたくさん増えたようですね。私自身もシェアサービス利用しているのですが自分の資産も使えるというところまでは考えていなかったので、これを機会に是非やってみたいと思います」
藤木:
「僕自身もいろんなスキルやものがシェアできるんだなと認識したところです。今年度は石山さんのように社会で活躍する若手の方をお招きしてSDGsという新しい世界を考えていきます。是非今後のエコ×エネ・カフェにもご参加ください」
夏にエコ×エネ体験ツアー水力編に参加した大学生の榎本広平さんは「今までの経済モデルでは、いいものを多く買ってお金を使うことがいいという価値観でやってきましたが、いろいろなシステムもできて、そういう価値観は変わってくるのかなと思いました。シェアすることで働き方の選択肢を増やせば、我々はより幸せになるんじゃないか、いくつか居場所ができることで救われる気持ちになれるのではないかと思いました」と感想を聞かせてくれました。
同じく奥只見のツアーに参加した大学生中村明日香さんは「石山さんのお話を聴いて、『第三の信頼』という集合知による信頼がシェアリングエコノミーやC2Cのビジネスを支えているけれど、それに沿った制度や法律がないということに気づかされました。規制や法律ってC2Cのビジネスによって生じる弊害を想定してつくられると思うけれど、法律が規制する対象が弊害だとしたら、消費者サイドがリテラシーを向上させることによって働きかけることができるかなと思いました」という感想がありました。